荷物が届くと、パジャマに着替えた。

こんなことなら、新しいパジャマ準備しておくんだったな…

今まで健康そのものの私には、無縁だった入院生活。まさかこんなことになるとも思わず、なんだかくたびれたパジャマ姿に、少し苦笑いしてしまった。


午前中から処置が始まるとなると、一気にどんな処置なのだろうかと不安がよぎる。

羊水検査を受けたときから、こういう事態になるかもしれないと、中絶の処置について私は調べていた。そこで出会ったのが、先輩天使ママさんたちのブログだった。その瞬間瞬間の詳しい処置とその時の痛みなどについて書いてあり、おぼろげながらイメージを持つことができた。そのお陰で、不安で自分のことしか考えられず、一番不安なはずの赤ちゃんのことに気持ちを巡らすことができないということにならずに済んだ。だからこそ、私にも経験したことを細かく記述することで、以前の私のように不安でいる誰かの道しるべとなればと思い、これからの処置について細かく記していくつもりだ。

中には、不快な方がいることも承知の上で、記述することをお許しください。

以前の私なら、無縁だったこの中絶の処置。できれば、一生無縁でありたいことではある。でも、赤ちゃんが無事産まれてくることそれ自体が奇跡の連続であるからこそ、その影で起きている悲しい出来事があることもきちんと記しておきたいと思う。




7月23日(火)午前11時頃

一回目の処置


この日と次の日は、子宮口を開く処置を行う。全部で四回の処置になる。

ご存知の方もいるかもしれないが、ラミナリアという海草でできた棒状のものを子宮口に入れていく。このラミナリアは、水を含むことで膨らみ、それにより子宮口を無理なく開かせていくというものだ。
私が読ませていただいた天使ママさんたちのブログでは、入れる際に痛みがあった方、そうでない方がいた。一体私はどっちなのだろう…。


病室から処置室に案内される。

処置室は、とても広くて、その中に内診する際と同じ椅子がカーテンで仕切られて置いてあった。

支度をして、先生が来るのを待つ。

いよいよ始まってしまうのかとお腹に手を当てて、赤ちゃんをさする。お腹の赤ちゃんは、何事もないかのように時々私のお腹を蹴って寄越した。

しばらくして、先生が入ってくる。
「では、始めますね。」
と言って、先生が処置のために席に座る。

今回の先生は、羊水検査から説明までをした先生。まだ若く、きっと同じくらいの年代だろうなと思う。

脚を開いた状態から、さらによく見えるように限界近くまで脚を開かせるため機械が動く。
こんなに開かなくてはいけないのかと、少し戸惑った。

「機械入りますね。」

という言葉で金属製の何かが入る。これは、内診でもよく使われるようなもののようで、私はこの機械が入るときが一番身構えてしまうので、大きく深呼吸を何度もして、力が入らないように気を付けた。

子宮口を確認した先生が、

「子宮口開いてきてる。」

と、言った。
どうやら切迫気味のようであることが告げられた。
お腹の子が、去り際を悟ったのだろうか。
遅かれ早かれ、この子は出てくるつもりだったのだろうか。


午前中の処置で三本のラミナリアを入れた。
ラミナリアにも、太さのサイズがあるようで、先生が看護師さんにサイズの指定をしているのが聞こえた。(今回私は小さいサイズを三本入れたようだ。)
私は痛みはほとんど感じなかった。入れたときも、入れたあとも違和感もあまりない。まだ最初ということもあるだろう。どちらかというと機械を入れられるときの方が痛いと思ってしまう。


赤ちゃんが、去り際を悟ったかもしれない。

そのことが切なくもあった。私が辛くないように、赤ちゃんの側から去ろうとしていたのかもしれないと言う、事実にまた涙が出た。