私たちの決断を先生に話した。

私の様子を見て、夫がすべて話してくれた。
いつも物静かな夫。
5つ上の夫が、本当に頼もしく思えた。
話している間にも涙が止めどなく流れ、夫がいてくれて、本当によかったと思いました。

先生に決断を話し、羊水検査を受けるまでしばらく待合室で、待つことに。

大学病院だからなのだろうか…私たち夫婦のように診察室から出てくる夫婦の様子が暗かったり、泣いていたりする…みんな何かを抱えて来ているかのよう…。


待っている間、夫が、

「20~30%だろ?大丈夫、大丈夫。」

と、言った。


先生はかなり高い確率であると話していたが、夫はそう言った。

夫と結婚して、もうすぐ五年になるが、夫が「大丈夫」と言ったことで、本当に大丈夫だったことばかりであった。だから、この人が大丈夫と言ったら、なんだか大丈夫なような気がしてきて、少し気持ちが楽になった。


いよいよ、羊水検査のために処置室に呼ばれた。

先ほどの診察室と同じような部屋だが、先生が手術着のようなものを着たり、私のお腹の周りに布やビニールのようなものを置いたりして、なんだか物々しくなってきた。
先生からはあらかじめ、羊水検査を受けた場合の説明を受けていた。この検査をすることで、流産することもあると、ただ、確率として非常に低いことを聞いていた。

検査は、今まで診てくれた男の先生がするのかと思ったら、そこはやはり大学病院ならではなのだろう。若い女の先生が担当する。モニターを見ながらの処置で、先生から、「目隠ししますか?」と聞かれた。おそらく針を刺したり、モニターが見えたりするからなのだろう。私は、きちんとこの目で自分がこれからすることを見ておこうときめていたので、目隠しは遠慮することにした。けど、涙が止まらない。看護師さんが優しく体をさすってくれた。私が落ち着くのを待って処置が再開する。

男の先生が細かく指示を送りながら、女の先生が針を刺した。まるで風船にぷすりと穴をあける感覚がお腹に行き渡る。こんな感覚があっても、決して割れることのない赤ちゃんのいるこのお腹。本当に人の体とは、不思議なものだなと思ってしまう。針を刺すまでは気持ちが乱れ、涙が止まらなかったのに、なぜか冷静にそんなことを考えている自分がいた。


30分ほど寝たままの体勢で様子を見る。
処置と後片付けが終わり、寝ている私のところには夫が通された。
処置室は二人だけになり、静かな時間が過ぎる。私は夫の「大丈夫」の言葉を反芻していた。まるで、自分に言い聞かせるように…。そうしなければ、心のバランスがすぐに崩れて、涙が堰を切って流れてしまうような気がしたから…。

30分後、先生がもう一度エコーで赤ちゃんの様子を確認する。問題なく元気にしていることが分かり、安心したのもつかの間、私たちに追い討ちをかける一言が出た。


「検査をする前のエコーでは分からなかったのですが、脳に嚢胞が見られますね。これも18トリソミーの特徴の一つです。」


私の大丈夫という暗示はがらがらと崩れ落ちていく。それではまるで、検査結果が出る前に18トリソミーだと言われたかのようである。確かに先生は、私たちが決断をするまでは、心臓の異常は今のところまだ小さいので断言できないと濁していた。しかし、決断をしたあとには、こんな事実を突きつけてしまう…事実を伝えることが仕事の一つでもあるのだから仕方のないことかもしれない。

でも、私にとって、どん底に突き落とされた…そんな瞬間になった。


一体、検査が出るまで、どう希望を持ったらいいの?


検査結果がでるまで、あと四日。。。