数分すると、今まで同じようなレンガ造りの建物ばかりだった道が急に開けた。
「うわあ、、」
「うわお」
一面花だった。
かろうじて道はあるが両わきには赤、黄、オレンジと、色とりどりの花が咲いている。
その花畑のおくにぽつん、と小さな家が建っていた。
「あそこ?」
エルメスが聞くと、
「そうです。私が担当になったお客様を必ずお連れすることにしています。、、、といっても、近頃旅人さんがあまりいらっしゃらないので、キノさんで二人目ですが」
運転手が微笑んだのが少し見えた。
「そうですか」
キノも少し顔を緩めた。
「そういえば、キノ。『カノン』は?」
「ん?ああ。『カノン』は宿においてきた」
「ええ?!なんで?」
「大丈夫だよ、エルメス。『森の人』は持ってるから」
「、、どこに?」
「、、この格好にガンベルトは、、さすがに自重した。ちょっと違和感があるけど、映画みたく脚につけるのを貸してもらった。旅人用にあるらしい。パンツスタイルだと邪魔になるけど、こんなスカートだとそこまででもない」
「ふーん」
キノとエルメスの会話が一段落したのを見計らってか、運転手が言う。
「大丈夫です。キノさんの脚は私がししゅ、、」
かちゃ、という死を連想させる音と共に運転手の頭に硬く冷たいものがあたった。
「、、案外早く抜けるものですね。気に入りました」
キノは表情を変えずに運転手の頭から『森の人』を離した。
「じょ、冗談ですよ、キノさん」
運転手の背中には密かに一筋の雫がつたっていた。
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