「もんすたんじょうび」
もんすたんじょうび「瞳美さんのお母さんですか。」「はい、そうですが。」「娘さんが倒れて病院にいます。処置をしましたから迎えに来てあげてください。」「え。すぐに向います。」私は目をあけたら真っ白な世界の中にいた。お医者さんが目の前にいて「これから手術しますからね。」と言った。ときどき痛くて「いたたたた」と言っていた。処置は5分ほどで終わり、「もう家に帰っても大丈夫ですよ。これまでの通院は続けてくださいね。」と医者は言った。待合室は真っ白で自分では何が起こったのかわからずに、私はただそこに立ち尽くした。まるで魅惑の天国の中にいるようだった。でも母が来て、だんだん日常に引き戻され、どうやら私はこけて意識を失ったということを認識した。自分では思い出せないけど、思い当たることはある。私はその時、小さなプロダクションに所属しており、そこで先生がいつもレッスンを行っていた。あるオーディションがあって、先生は年はさばを読むようにとおっしゃっていた。それを真に受けた私は10歳くらい若く年を偽り、活動していた。名前も「十市瞳(とおちひとみ)」とか、「七尾香砂(ななおこうさ)」とか、好きな芸名を名乗っていた。名前のことはさておき、年を偽るのは全くちがう環境に身をおくのも同じで、その世界のゆがみのせいで私はきっとこけたのだと思った。傷口をみながら、私はもうこれからは二度と年を偽るのはやめようと思った。違う星のもとに生まれたとするのも嫌だった。それからは、ハロウィーンが日本でも流行るようになり、自分の罪意識もだんだんと遠ざかっていった。あれだけ怖かった化け物の存在も今では可愛いと思えるようになった。ある日、輸入雑貨店でとってもかわいらしいモフモフのモンスターのポーチを見つけた。子供たちが「トリックオアトリート」(つまり、お菓子をくれなかったらいたずらするよ。)という文句にぴったりの愛らしいデザインだった。ポーチの中身はもちろんお菓子。私なら「リコラ」というハーブのとってもおいしいキャンディやキシリクリスタルやリンツやゴディバなどの高級ショコラをいれたくなる。そのポーチはモフモフのファーでおおわれて、大きな瞳が2つついており、大きな口はポーチを開ける大きなジッパーだった。しかし、一度見つかったからまたそのお店に行けば手に入ると思ったものの、瞳美はそのポーチが売り切れていたことを知りがっくりした。帰りの道ではとぼとぼと帰ったが、アトリックスのローズの香りのハンドクリームを買うことで気を紛らわせた。ポイントを使用して購入できたので幾分か気分が晴れた。私はどうにかしてあのようなモンスターのポーチが手に入らないかいろいろ考えてみた。例えばそう、たまごっちみたいに、毎日まだ見ぬモンスターに向って、朝昼夜とご飯をあげて、トイレに行かせてあげて、服をきせてあげて、童謡をきかせてあげて、一緒に踊ったり話をしたりして遊んで、夜はちゃんと寝かしつけてあげて、1週間すごしてみたりするのはどうか。モンスターだからといって全然怖くはない、愛らしいものができればすごく嬉しいのだけど。いつかそんなモンスターのポーチに出会いたいと切に願う瞳美だった。