胸が痛くなるくらいに3人で
走って、もう大丈夫だろうという
ところまで来た時には
ずいぶん広場の近くまで来ていた。
広場は人でいっぱいだった。
その中心に何かが立てられているが
子供の身長では周りの大人たちに
遮られてよく見えない。
「近くまで行くしかないね。」
クリフの言葉に促されて
中央に向かう人の流れに
乗ることにした。
小さい3人は人が多い場所では
押しつぶされそうになったり
急に楽になったりを繰り返しながら
少しずつ進んでいった。
恰幅のいい小父さん達の後ろに
くっついていくことにして
どのくらい経っただろう。
前を行く小父さん達が小さく
呻いて足を止めた。
リートとクリフは前の様子を見ようと
小父さん達の脇から顔を出した。
「私にも見せて‼︎」
叫んで覗き込んできたエヴェーリが
息を飲んだ音が聞こえた。
皆が見上げるそこには
二つの化け物の死体が
吊り下げられていた。
大きな虫の化け物だ、
とリートは思った。
茶色い乾いた土のような全身ー。
大きな口と顎。
後ろに垂れ下がった翅。
六本の手足。
不気味な二体の化け物の
死体が風に揺れるさまは
周囲の大人たちも恐怖している
ようだった。
リートはそっとクリフの様子をみた。
クリフはその目に化け物の姿を
焼き付けるように眺めていた。
「もう、帰ろうか」
リートが小さく声をかけると
クリフも頷いて3人は
広場を後にした。
広場から出るのはずっと楽だった。
道では店先や角で大人たちが
興奮気味に化け物の
正体について論議していてけれど
3人はそれどころではなかった。
広場から家に帰る道が分からない。
広場は街の中心。行くのは簡単だが
途中、めちゃくちゃに走ったせいも
あって家の方向が分からない。
職人街の場所を聞きながら
やっと家の近くまで帰ってきた頃には
ずい分と時間が経っていて
リート達は探しまわっていた
父さん達に見つかって結局
叱られてしまった。
リートとエヴェーリの両親も
クリフのお父さんの事を聞くと顔を
見合わせて、黙ってしまった。
リートの母さんが3人に温かい
スープを出してくて、その後
クリフをお屋敷まで
父さんが送って行った。
ただしリートはいいつけを破った
こと、エヴェーリはさらに嘘をついた
ことで結局、長いお説教を
母さんと伯父さんから
聞かされた。
疲れきってリートがベッドに
入ったころ…
立派な軍人が彼よりもずい分
年下の男の部屋に呼ばれていた。
「入ってくれ。」
そう言われて男の傍まで進んだ
彼は机の端に置かれた
開いたままの銀の'それ'を見て
「そのまま持ってこられたのですか」
と思わず尋ねた。
「いや、ちょっとした事故があってね
途中で開いたのだよ。
あなたに来てもらったのは人探しを
お願いしたくてね。これを開いた
子供を見つけて欲しいんだ。」
そう言って男は大きな傷のある
手で銀のそれに触れた。
