道案内を買って出たものの、実は少し不安だったリートだったが
しばらく進むと広場に向かう人の波が出来ていて、ほっとしていた。
街は化け物の話題で持ち切りだ。大人たちの話に耳を澄ませるクリフ。
そんな様子には気づかず、はしゃぐエヴェーリは人ごみの中を先へ先へと
進んでいく。
「ねぇ!早く行きましょー」
エヴェーリが後ろ向きに歩きながら急かした。
「エヴィー、危ない!前!」
リートが声をかけたが間に合わずエヴェーリは歩いてきた男性にぶつかってしまった。
しかもぶつかった相手は若い男だったが、一目で高い身分だと分かる身なりだった。
その男の手元から銀色の球体が宙に放り出された。
毬ほどの大きさのそれは日の光を受けてキラリと輝いた。
身なりの良い人物の、見たこともないような代物が宙を舞っているのを
エヴェーリが心臓が止まる想いで見上げている。
その光景を時間が止まってるみたいだと感じながら
リートは球体を受け止めようと駆けだした。
間に合わない!、そう思った瞬間、同じように駈け込んで来た
クリフの手が球に当たってもう一度、球が宙を舞う。
そしてちょうど真下に滑り込んだリートの手に
ぽんっと球が落ちてきた。
ほっとして全員が息を大きくついたその時だった。
リートが抱えていたその球が、まるで花が咲く様に
急に外側に向かって音もなく開いたのだ。
びっくりしたリートは慌ててそのまま
持ち主の男の手に開いた球を押し付けるように返すと
「ごめんなさい!」
と謝った。
その時、男の手に大きな傷跡があるのが目にはいった。
繊細な刺繍のされた服の袖との対比でその傷が
余計に際立って感じられた。
見上げると、若い男は非常に神経質そうなその顔を
驚きのあまり白くしていた。
思わず、リートは後ろずさりした。
そのリートの腕を掴んでクリフが思いっきり引っ張った。
クリフは反対の手で立ちすくんでいたエヴェーリの腕を掴んで
思いっきり走り出した。
男が後ろから叫んでいたが、その姿が人混みに消えて
見えなくなるまで三人は止まらなかった。