ハナウタノオト

ハナウタノオト

日々の音を紡ぐよに

「奇妙な星のおかしな街で」
吉田篤弘(春陽堂書店)P208

著者のエッセイは、現実に起きている事と脳内で感知し思考している事が混ざり合って、どこか少し重力の軽い涼やかな世界での話を垣間見るようでいて心地いい。

水についての話から広がり、生まれてすぐは人間の乳を飲むことが多いのに、なぜ牛の乳を飲むようになるのかと、宇宙人との会話にまで話が伸びゆく〈遠いところ〉が楽しくて大好き。箱を開いただけで、しんと静かな夜が訪れる、ポータブルサイズの〈夜の箱〉も想像するだけで心ときめく。

人生の時刻表の点と線、自分を楽しませるための幸福な時限爆弾、記憶から剥がれ落ちる前に蘇る感慨がもたらす懐かしさに思う時間距離。目に映る光景がどうやって物語へと形を成していくのか、ちょっとした種明かしを見せてもらっているような高揚感、日常が少し奇妙に愉しく転調していく浮遊感が堪らない極上のエッセイ。

「旅先で読む本は、なぜいつもの読書と違うのか」この最高のテーマから生まれる1冊、是非是非近く刊行されることを祈りたい。