「読書歓送文」-4



「白の消息:骨壷から北園克衛まで」


山口 信博 著


『白の消息』出版プロジェクト/ラトルズ




東京のセレクトショップで、たまたま偶然手に取って

買い求めた本です。


美術館で行われた個人コレクションをまとめた、

カタログ本。


「簡素な白いデルフトの皿」

「日に晒されたロマネスクの石」

「省略のきいた形の箱」 …

すべて、まっ白なものたちです。


何気ない、

素っ気ない、

でも、ものすごい存在感と味のある

白い色をしたモニュメントたちを眺めていると、

満たされた気持ちになってしまうのは

どういうわけなんだろう…?



『常用字解』によると、「白」という字は、


「象形。白骨化した頭蓋骨の形。

雨風にさらされて肉が落ち、

白骨になったされこうべの形であるから、

『しろ、しろい』の意味となる。」


なのだそうです。



著者が序章で書き出していた、


 “「白」の覚悟”


という言葉に納得する。



「白」は、 柔らかくて無垢な決意のような色です。


「読書歓送文」-2


「チリンの鈴」


やなせたかし 原作


サンリオ・アニメブックス





これは、こども向けの本だけど、

決して分かりやすい内容ではありません…


キュートなアニメ画ですが、

大人が読んでも、悲しく、重く、奥深~いお話しです。

多分、このストーリーをネタに、一晩飲めますお酒



幼少期に読んだ時は、衝撃でした。

子どもながらにも当時、

好き、だとか

慕う、だとか

そういう感情は単純なもんじゃないと、気付かされました。



子ヒツジの「チリン」にとって、

オオカミの「ウォー」は

師であり、

友であり、

敵(かたき)であり、

父でした。



「友」や「師」

はもちろんのこと、

「親」や「味方」

も、その関係は自分で作らないと

本当の意味で存在しないのかもしれません。


先日、TV番組の「情熱大陸」で、

立川談春さんが言われていました。


「師を選ぶのも、芸のうち。」


そのことばを聞いたとき、

潔く、ひたむきな生き様だと思いました。


そして何となく、

「チリン」を思い出しました。




自分にとってかけがえのないものは

成長の過程でいろいろと変化していくけれど、

DNAのように変化しようのない、

チリンにとっての「鈴」のようなものは、

私にも、あるんだと思います。




「読書歓送文」-3


「読書歓送文」-1


「センセイの鞄」


川上 弘美 著


文春文庫


第37回 谷崎潤一郎賞





ドヤドヤした恋愛小説が苦手な私が、

心からキュンときた恋物語です。


今年の冬5日間にわけて、

お風呂に浸かりながら読んでいて、

最終日、最後の数ページで大いに泣きました。

お風呂の湯に体ごと溶けてしまいたいような

気持ちになってしまいました。



ひとりものの37歳の「ツキコさん」と、

居酒屋で再会した高校時代の国語の「センセイ」、

ストイックな2人の間に流れる

淡々とした、恋の時間。


不器用で偏屈だけど、情緒あふれる2人に

共感しました。


2人はいつも馴染みの居酒屋のカウンターで隣合いながら、

各々が自分の手酌でお酒を飲むのですが、

その距離感によそよそしさはなく、

むしろ、信頼感が漂っています。

「好き」

という気持ちは、

そういう 相手の世界を尊重する気持ちと、

自分の世界に浸る気持ちの

融合なんじゃないかと思います。



最初から最後まで

物語をしっとりと包む

川上弘美さんの繊細で丁寧なことば選びを

何度も何度も目でなぞりました。


(彼女の文体が、私は好きです。)



小泉今日子さんと、柄本明さん主演で、

映画化されたようですね。

でも、なんとなく観たくないんだよな~…

いまだ、原作よりも気に入る映画を、

観たことがありません。