今でこそ、車がないと生活できないような田舎に住んでいるが、20年ほど東京で生活していたことがある。
田舎と違い東京は、何をするにもすべてのハードルが低い。
旅をするのも、たいていの場所は東京から直行便が出ている。
テレビでやっているお店に行くにも、習い事も、美術館や博物館も、すぐ近くにある。
しかし、田舎に住んでいるとそうはいかない。
東京に住んだことのある私は、田舎の人が経験していないようなことも、経験していることがある。
行ったことのないお店にも、行ったことがある。
食べたことのない料理も、食べたことがある。
会話の中でそういった話が出た時に、経験したことがあると話をしたら、
『うわ、マウント?』
と言われた。
東京の友人には一度もそんなことを言われたことがないので、本当にびっくりしてしまった。
相手が知らないことを知ってると言うと『マウント』と捉えられることがあるらしいというのは聞いたことがあったが、まさか自分が言われるとは。
相手が知らないことを私が知っていても、私が知らないことを相手が知っていることもあるだろう。
それさえ分かっていれば、『マウントを取られた』と考えることはあまりないと思うのだが、どうしてそういう考えに行きつくのか。
東京の人の『ここ行ってみたい』は、近いうちに行くつもりの『行ってみたい』なのだろう。
だから、『行ったことあるよ』と言われると、『どうだったの?』と会話が続く。
田舎の人の『ここ行ってみたい』は、『行きたいけど行けないな、行ける人はいいなぁ』の『行ってみたい』なのだろう。
だから、『行ったことあるよ』と言われると、『自慢?マウント取って来てる!』
となるような気がする。
でも、そういう場合どう返事をすればいいのだろう?
嘘をつけばいいのか?
そうだね、私も行ってみたいなぁと返事をするべきなのか?
正直、嘘をついてご機嫌をとらなければならない人と、お付き合いをしたくない。
田舎で生活するのは、本当に難しい。