今日の授業がやっと終わった。面倒な科目が目白押しだった今日は、和泉さんとあまり一緒になる事が無かった。

菊は何か用事があるようで、俺の相手をする間もなく教室を出て行った。


なんとなくつまらない気分で廊下を歩いていくと、売店帰りなのかビニール袋を下げて歩く和泉さんを見かけた。和泉さん、何買ったんだろ…?

少しだけ話しかけようかな…と思った途端、和泉さんは廊下で立ち止まり、別の教師と立ち話を始めた。


なーんだ。菊だけじゃなくて和泉さんにまで相手にされない、そんな日なのか…。



和泉さんが手にしたビニール袋はうっすらと汗をかき、貼り付いた中身がなんとなく透けて見えた。

すれ違いざまに挨拶をするフリをして軽くお辞儀をする。その瞬間、俺はビニール袋の中身を特定した。



【イチゴ・オレ】



かーわい。

和泉さん、あんな顔してイチゴ・オレとか飲んじゃうんだ。


俺は何だか和泉さんの秘密を覗き見したみたいで、ドキドキしたし、自分しか知らない和泉さんを見つけたみたいで嬉しかった。





「おい秋斗、お前こんなの好きだったか?」


菊は俺の机の上にある、イチゴ・オレを目にして言った。


「最近ハマってんだよ」

「珍しいな。お前ずっとチョコ味ばっかりだったのに」

「ココア、いい加減飽きたんだよ。今は、イチゴブームが来てんの」


へぇ…といった顔で菊がこっちを見ている。

本当はチョコの方が気に入ってるけど、イチゴも…悪くない。

だって…和泉さんが好きな味なんだから。





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