「梅ちゃん先生」最終回を終えて/〜半年間お疲れ様でした! | どら☆ぶろ〜テレビドラマ感想ブログの決定版

どら☆ぶろ〜テレビドラマ感想ブログの決定版

連続ドラマの感想やあらすじ(放送回までのネタバレ含む)などについてを主に書いてます。
目標とコンセプトは「面白いドラマをより多くの人に見てもらいたい」です。
朝ドラ「ごちそうさん」「あまちゃん」のあらすじ・感想が日課です。
旅行記も稀に書いています。

2012年4月2日から開始された「梅ちゃん先生」。
当時、朝ドラを見る習慣の無かった私はタイトルもおぼろげに、放送時間は出勤中だった。

それがどこからか「朝ドラの”梅ちゃん先生”が面白いらしいよ」と耳にして、「へえ~、そんなに面白いなら1度見てみよう!」と、DVDレコーダーに予約録画して、週末に一気見をしたのが事の発端。
見始めたのは3週目のヒロイン「梅子」が「私、医者になる!」と決めて、家族にその話を打ち明けた頃。「堀北真希がドラム缶風呂に入ってるぞ!」とか思っていたが、見ているうちにどんどん引きこまれてしまった。
最終回を迎えて改めて「面白い」と思ったので、その総括を。


番組公式HPはコチラ

ありがとう、「梅ちゃん先生」
おなじみオープニングの最後の堀北真希の笑顔。
$どら☆ぶろ~テレビドラマ感想ブログの決定版
朝の定番でした

◎あらすじ(大雑把に)
終戦直後の昭和20年。16歳の主人公・梅子(堀北真希)はおっちょこちょいで、優秀な姉の松子(ミムラ)、兄の竹夫(小出恵介)と比べられ、叱られてばかりいた。
そんな中、終戦を迎え、戦後の混乱と変遷の中で自分の将来について悩む時が訪れる。
そんな梅子だが、戦災孤児の少年ヒロシと出会い、それをきっかけに医師を目指すことになる。
医学部(医専)に何とか合格し、無事に医師国家試験を合格し、医師として歩き始めた梅子。
仕事にプライベートに、次々と難題が振りかかるが、それでも周囲の協力や梅子の奮闘でとりあえず前に進む。
そんな梅子の成長と、梅子の周囲の人々の姿を捉えたヒューマンストーリー。


◎どうして「面白い」のか
①「朝ドラ」の王道の設定
ご存知「朝ドラ」こと「朝の連続テレビ小説」はヒロインは若い女性。
「明るくて、前向きで、一生懸命」なヒロインである。
今回のヒロイン「梅ちゃん」はまさしくその典型例。
おっちょこちょいだけど、「松竹梅の梅よ!」と思っていたりするが、(後にそれが異なると判明するが)決してクサラない。

そもそもNHKが「朝ドラ」と銘打ってわざわざ視聴者の忙しい朝に15分のドラマを放映しているのは、
「(視聴者に)今日も一日頑張ろう!」と思わせるため。
いかに面白くても「平清盛」みたいな重い話を「朝ドラ」で放映してはならない。
朝から重い話は大体の人が敬遠するから。
コンセントに引っかかって転んだり、朝が苦手で寝坊している「梅ちゃん」が明るく前向きに進んでいく姿が視聴者に安定感と安心感を与える。


②適度に軽い「見せ方」
①の延長線上にあるのだけど、様々なキャラが登場して、それぞれの過去やエピソードを持っていた「梅ちゃん先生」。
中にはかなり重い設定のキャラや重いエピソードがあった。
でも、放映される「梅ちゃん先生」は適度に軽い。いや、重いテーマを軽く魅せるのが上手い。
例えば、10年位上ぶりに再会した「ヒロシ」とのエピソード。
「ヒロシ」(池松壮亮)は笑わないし、仕事のためならなんでもやる。それは「戦災孤児でその後血のにじむような苦労をした」という部分がベース。
なんだけど、その「ヒロシの苦悩と葛藤と苦難」をいちいちセリフやシーンで言わせたりしない。
ちょっとした表情や一言で「この人はもしかして・・・」位に匂わせておく程度に留める。

あんまり言わせても視聴者が暗い気分になるだけだし、自ら言わせるのも何だか胡散臭い。
この、「あんまり多くを語らせないけど、核心だけはきっちり連想させる」塩梅が秀逸。


③メッセージが明確
各週ごとに副題がつけられていた「梅ちゃん先生」。
この「副題」に絡めて、その週のストーリーは進んでいく。(しかも脚本も1つの副題に2つ以上のニュアンスやエピソードを与えるからそこは尾崎将也の底力!)
例えば最終週のテーマは「上を向いて歩こう」だった。(この副題は半年間の副題でもあったけど)
前週に再会した「ヒロシ」へのメッセージだったり、高橋克実(建造)が「自分を変えよう」と選んだ曲のタイトル(勿論「建造」自身が曲の中身も勘案して選曲しているという設定)だったり、視聴者への「生き方」の投げかけだったり。

よく、「視聴率は悪いんだけど、凄く深くて良いドラマ」と言われるものがある。
(放送時間や、裏番組との兼ね合いで「録画して視聴のため数字に反映されない」というものがあるが)
作品の善し悪しが必ずしも視聴率で決まるわけではない。でも、一定のバロメーターに変わりはない。
極論を言えば、「100人いて、99人が駄作と言っても、1人が”非常に秀逸”と言えばそれでいい」ではダメ。
テレビという「公共の場」で99%に理解されないモノは、作品として失敗になる。
「内容が難しくて分からない」と言われてるようだと失敗作になってしまう。

その点で、「梅ちゃん先生」は「何が言いたいか」が凄く伝わりやすい。
批判をする人が言う「どうせこの後の展開はこうなって、梅子が解決するんでしょ」という予定調和が上手く活かされている。
「次の展開がある程度読める」(でも、それ以上のモノもキッチリ魅せてくる)という事は「何が言いたいのか」が視聴者に伝わっているという事なのだから。


④キャラクターが生きている
ドラマに限らず、小説、漫画、などの「ストーリーもの」ではキャラが大切なのは周知の事実。
キャラが確立されているのか、それぞれのキャラに特徴がきっちり表現されているのか、などで「キャラが生きている」かどうかの分かれ道となる。
「梅ちゃん」がおっちょこちょいで、おせっかい焼きで、明るくて前向き、で
「建造」が堅物で、不器用で、無愛想なインテリ、といった具合に。
特に「幸吉」なんかは仕草やちょっとした表情で「本当にこんな人がいたのかなあ」と錯覚しまった。(地かもしれないけど・笑)感想を書きながら「片岡鶴太郎」と表記するのにためらいを感じたほどに。

で、キャラがはっきりしていると、ストーリーの展開が何となく読める。「ああ、この後この件で建造と幸吉は揉めそうだな」とか考えてしまう。視聴者の予想も含めて、作り手の予定調和の通りに。


⑤定番ズッコケシーン!
尾崎将也が番組HPで(たしか)語っていた「15分に1回笑いのシーンを入れる」というもの。
確かに基本的に15分に1回笑える(ツッコめる)シーンがあった。
最終回にいきなり「梅ちゃん」が「空飛ぶ円盤が!」とかなりズッコケな嘘をついたり、など。
あからさまなギャグシーンで、「ええー?そりゃあないでしょ!」とツッコませる。
でも、このツッコミは勝ち。ツッコませた時点で視聴者を世界観に引きずり込んで入るのだから。
あと、この無理矢理なズッコケシーンが「箸休め」になっている。
軍歌のような若干笑えるBGMにズッコケシーンをかますあたりが、適度な「箸休め」。



◎「梅ちゃん先生」でやって欲しかったこと
「明日への希望」を魅せてくれた「梅ちゃん先生」。
私には半年間を通したメッセージが「(とにかく)生きろ」に聞こえた。
生きることから全ては始まり、哀しみも喜びも楽しみも「生きる」ことから始まるのだと。

ドラマの中で描かれる「梅ちゃん」は明るくて、前向きで、頑張る。
朝ドラのヒロインなんだから当然なんだけど、でも「明るくて前向きで頑張る」だけでは残念ながら現代社会では通用しない。
階層の再生産が固定して、(昔からだけど・・・)閉塞しきった現代社会では「頑張る」という精神論だけでは解決しないことが多いから。
本当に難しいことだけど、「梅ちゃん先生」でこの閉塞感を打破する精神論以外の提案を投げかけて欲しかった。
既存の「真面目に生きてればいいことがある」といった化石のような価値観を。(だからといって犯罪や迷惑行為に走っていいわけではない)


◎「梅ちゃん先生」ベストシーン!
何だかんだ言っても、私には面白かった「梅ちゃん先生」!
と、ここで勝手に「個人的”梅ちゃん先生ベストシーン3”」を銘打ってみた・笑

第3位「梅子、新たなる旅立ち」84話 
あらすじはコチラ
「梅ちゃん」が診療所を開設するシーン。勤務医を卒業し、父から「勝手にしろ!」ではなく「やってみろ」と後押しをもらって、自分の望んだ道を手にしていく「希望のある」シーン。
$どら☆ぶろ~テレビドラマ感想ブログの決定版
カメラ目線で、ナレーションに頷く「梅ちゃん」が印象的です


2位「ここにいること」99話
あらすじはコチラ
「梅ちゃん」の今後の指針を示した坂田(世良公則)が亡くなった日。
直接の死のシーンは無いけど、それでも衝撃は強かった。坂田と関わった者がみな「そこにいる」人の存在に気づき、後々の「自分がここにいる」ことにつながっていくものだから。
$どら☆ぶろ~テレビドラマ感想ブログの決定版
絶望の淵だけれども、「そこにいる」人に後々に気づく重要なシーン


1位「上を向いて歩こう」156話・最終回
あらすじはコチラ
定番だけど、やっぱ〆の最終回。
これまでを振り返り、「これからも頑張ろう」と、明日への希望を魅せる最終回だったから。
$どら☆ぶろ~テレビドラマ感想ブログの決定版
最後はやっぱり梅の花!

あと、梅子と松岡の別れの日(96話)やら、お見合いを断った日(105話)やら、信郎のプロポーズ(107話)やら、太郎の命名(134話)やら、数えたらキリがないのだけど、それでもベストはこの3つ!


くどいが、半年間(インからアウトは10ヶ月だけど)ありがとう、「梅ちゃん先生」!