番組公式HPはコチラ
◎あらすじ(ネタバレあり)
1156年7月10日、朝廷・平氏・源氏がそれぞれ身内を喰い合う「保元の乱」の火蓋が切って落とされた。
後白河帝(松田翔太)の元に集った清盛(松山ケンイチ)と義朝(玉木宏)たち武士。
集った場所は高松殿であった。
義朝が夜襲を提言し、その案が採用され、義朝はその場で昇進する。
また、後白河天皇は
「敵である崇徳上皇のいる白河北殿にいる。白河北殿は曽祖父・白河院(伊東四朗)の御殿であり、
今回の戦闘を含むすべての始まりは白河院の時代より始まった。これを止められるのは武士であり、新しい世の始まりである」
と武士を炊きつける。
一方、崇徳上皇側(井浦新)には藤原頼長(山本耕史)、源為義(小日向文世)、平忠正(豊原功補)らが集っていた。
集った場所は高松殿から賀茂川を挟んだ故・白河院(伊東四朗)の宮殿であった白河北殿。
義朝の弟・為朝(橋本さとし)が夜襲を提案するも、頼長によって「卑怯だ」その策は一蹴される。
夜襲によって敵の出鼻を挫いた後白河天皇側。
戦闘が開始され、白河北殿の各所にて平氏・源氏それぞれが身内と相見える骨肉の争いとなった。
源氏では義朝と弟・頼賢が合間見えていた。頼政(宇梶剛士)の助けを得て優勢となる義朝。
一方、白河北殿・北門では清盛と忠正が対面していた。
一門同士の戦いを避けたい清盛だったが、忠正は「平氏の血を持たない平氏の棟梁・清盛を、清盛の体に流れるもののけ(白河院)の血を最後の最後で信じられなかった」と言い、刀を交わし合う事となる。
しばし膠着状態であった戦局を打開したのは義朝の策である「火攻め」であった。
白河北殿の門を破った後白河天皇軍はそのまま御殿にも火をかけ、崇徳上皇と藤原頼長は宮殿を追われる。
保元の乱は後白河天皇側の勝利で幕を閉じたのだった。
焼け落ちる白河北殿の姿を見た清盛は「お前が生きているのは”もののけの血”が流れているからだ”」という白河院の過去の言葉を思い出す。
◯「保元の乱」ちょこっと解説
登場人物が多く、関係性も複雑なので、かる~くまとめてみた。
☆保元の乱とは
鳥羽法皇の死後、後継者をめぐって兄弟である後白河天皇と崇徳上皇が、新興貴族と藤原摂関家、武士を巻き込んで起こった争いのこと。
☆後白河天皇側
後白河天皇(松田翔太)・・・鳥羽法皇の在命中に即位を行った。鳥羽法皇と璋子(檀れい)の子。両親に愛されず、その代償に権力を渇望する。
美福門院・得子(松雪泰子)・・・亡き鳥羽法皇の寵妃であり、鳥羽法皇の死の際に国政を託された。
信西(阿部サダヲ)・・・後白河天皇の後見人であり新興貴族。藤原摂関家の持つ実権を掠め取ろうとする。
藤原忠道(堀部圭亮)・・・藤原摂関家・忠道(國村隼)の嫡男で、藤原摂関家内での権力を弟・頼長に取られたため、美福門院と手を組み頼長の失脚を図る。
平清盛(松山ケンイチ)・・・本ドラマの主人公。「武士の世」を目指し後白河天皇側につく。
源義朝(玉木宏)・・・源頼朝・義経の父であり、源氏の棟梁。
鎌田正清(趙泯和)・・・義朝の家臣であり、父・通清(金田明夫)は義朝の父・為義(小日向文世)の家臣である。
☆崇徳上皇側
崇徳上皇(井浦新)・・・鳥羽法皇の第一子であるが、実態は白河院(伊東四朗)と璋子の密通の子であり(本ドラマではそういう設定)、鳥羽法皇在命中から冷遇され続け権力を渇望する。
藤原頼長(山本耕史)・・・藤原摂関家の次男で資質があったが、奢り故に新興貴族等の恨みを買い、左遷される。権勢の巻き返しを図るため崇徳上皇を祭り上げる。
平忠正(豊原功補)・・・清盛の叔父ではあるが、平氏の血が流れていない清盛をよく思っていない。
源為朝(小日向文世)・・・源義朝の父であり、鳥羽法皇の在命中から頼長に忠誠を誓っていた。
鎌田通清(金田明夫)・・・源為義の家臣であり、実の子・正清は義朝の家臣。保元の乱で義朝親子同様、親子で敵対することになるが、最後は息子をかばって亡くなる。
◎みどころ
心で血を流す骨肉の争い
見所が多すぎて長くなった。すみません。
◯おもしろポイント
①松ケンは「もののけの血」との決別できたのか?
平氏との繋がりを重んじ、棟梁として判断をしてきた松ケン。
しかし、叔父の豊原功補の裏切りにより一門の繋がりを否定され、「お前の中のもののけの血を信じることができなかった」と言われてしまう。
自分自身の自己評価と他人の評価が異なることは往々にしてあるが、自己評価を信じようとしてきた松ケンにとって「もののけの血」という他者評価はどこまでもついて回る。
そして、番組の最後に「もののけの血」を象徴する伊東四朗の宮殿が焼失し、その焼け落ちる姿を自分の過去と重ねあわせて見る松ケン。
平家の絆を確信できても、象徴である宮殿が焼け落ちても、心のどこかに「もののけの血」という他者の評価は松ケンの心に残るのではないだろうか。
松ケンが「もののけの血」という他者評価から解放される時が来ることを願ってやまない。
②子同士の戦いなど見るものではない
金田明夫が小日向文世に言ったセリフ。
わが子の中でで玉木宏だけが松田翔太に味方し、
その他の子と小日向文世は井浦新に味方する。
金田明夫自身が、子である趙泯和と敵味方として相対することになる。
その身を切られる苦しみを知ってか、主人である小日向文世にはその苦しみを味わって欲しくないと切望する。
しかし、主人の子同士はやはり相対する事となり、金田明夫自身はわが子・趙泯和を守るために矢に撃たれて亡くなってしまう。
それでも、死の際に小日向文世に
「小日向文世の子はみんな立派な武士となった」と告げる。
その心はいかほどに苦しかったのだろうか。
また、その苦しみを知った小日向文世は金田明夫の心を汲んでわが子・玉木宏に
「金田明夫は死んだ!」と慟哭に近い叫びを上げて斬りかかる。
そして玉木宏もその叫びに戸惑いを感じつつも信念を貫くために父・小日向文世に刀を向ける。
金田明夫、小日向文世、趙泯和、玉木宏の演技に涙腺が緩んでしまった。
③兵法の解釈
「兵法」から引用したのであろう孫子の言葉。
「利に合えばすなわち動き、利に合わざればすなわち止まる」
「夜呼ぶものは恐るる」
山本耕史と阿部サダヲが同じ言葉を引用したが、その解釈は異なっていた。
山本耕史は「軍勢で劣る我軍は援軍を待っている最中であり、今は”利に合わざる”時」と判断し、「夜に動くのは弱者である」と言う。
阿部サダオは「機先を制する者が勝ち、夜に集まってギャーギャー騒ぐのが弱者であり、今すぐ動け」と解釈する。
同じ書物を引用しても解釈の異なる
「生粋の上流階級で、清廉潔白な戦いを好むボンボン山本耕史」と
「下級貴族で泥臭い事も厭わず、何が何でも勝ち上がろうとする意志を持った阿部サダオ」。
勝敗は火を見るよりも明らかだ。
「何が何でも目的を遂げようとする者こそが勝利を手にし得る」というメッセージを感じた。
④カゴから放たれた白いオウム
敗色が濃くなった井浦新&山本耕史陣営。
窮地に陥った時に山本耕史は白いオウムを持ってオロオロする。
この白いオウムは、山本耕史が「松ケンが宋との取引を無許可で行なっている」と知った時についでに飼ったもので、山本耕史はオウムを可愛がっていた。
憎い政敵の悪口を吹き込み、自画自賛の言葉を覚えさせる(図らずともオウムはその言葉を覚える)。
自分の意志を吹き込んだこのオウムは、山本耕史にとっての自信やプライドの象徴だったのだ。
だから、窮地に陥ってもギリギリのところまでプライドを誇示するためにオウムをカゴごと手に持っている。
しかし、井浦新から「お前を信じたのが間違いだった」と言われ、いよいよ宮殿を逃げざるを得なくなった時に彼のプライドは崩壊する。
地面に膝をつき、カゴを叩く。
ちなみに、カゴから出たオウムが飛び立たたず、カゴの近くの地面をうろついていた事もまた秀逸。
飛び立ってしまうと「プライドからの解放」となる。
プライドを打ち砕かれ為す術がない様をカゴの周辺でうろつく姿がよく演出されている。
⑤「そなたを信じた朕が愚かであった」
火が放たれ、宮殿を追われた井浦新が、同じく宮殿を追われた山本耕史に言ったセリフ。
確かに自分には責任のないところで、冷遇を受けてきた井浦新。
しかし、井浦新には山本耕史に対して恨み言を言う資格があるのだろうか。
自分の政治ができず嘆き悲しみ、歌ばっか歌って、即位前の松田翔太のように割り切ることもできない。
だからといって「何が何でも勝ちに行ってみせる」という意志も見られない(演出か演技かしらんが)。襲ってくる人生を甘んじて受けるだけ。(そういう時代の人だししょうがないが)
芥川龍之介の「六の宮の姫君」に出てくる六の宮の姫君じゃないが、
「生を生きない者には”死”という完結は来ない」という芥川の隠喩が引用されたのだろうか。
「崇徳上皇の恨みは死後400年続いた」との言葉があるが、その言葉は「生を生きなかった者」としての「ふがいない」人生を表しているのではないか。
◯ツッコミポイント
引き続き突っ込みどころがなかった今回。
戦闘シーンなので当然といえば当然。
兎丸が門を破るときに使った丸太が日本史の教科書に出てきそうな「米騒動による打ち壊しの図」みたいでちょっと笑えた。
◯つまらなポイント
なし。
毎回毎回思うが、登場人物が多く、魅せ所も多いのでちょっと詰め込み感はある。
「早い段階から毎回真剣に見てる人」じゃないと話がわからないのは、集客という点で非常に弱い。
「途中から見た人でもすぐわかる」内容にしないと、限定された人しか見に来ない。
個人的には非常に魅力的なドラマなので、その集客方法を工夫して欲しい。
HPにわかりやすい解説を載せても、HPからドラマ鑑賞に入る視聴者はほとんどいないし、
毎週やってる「5分で分る今週の清盛」も今週の内容だけわかってもしょうがない。
「ドラマを作る」という作業を、他局とタイアップを組みまくって、他種メディアを使いまくって「テレビ業界全体を立て直す」事を考えて制作欲しい。
著名人に解説ブログ(テレビじゃなくてネットであることが肝要)書かせまくるとか・笑
(10年以上前からずっと考えてるのだろうが、スポンサー絡みやプロダクションの制約で本当に苦しいのだろう)
◯清盛奇行(きよもりきこう)
何かと奇行の目立つ平清盛(とその周囲のキャラたち)。そこで、ドラマ本編終了後の「清盛紀行(きよもりきこう)」をパロって清盛たちの奇行を紹介することにした。
今回も特になし。引き続き動乱で奇行はお休みらしい。