緑ヶ丘ビーズ荘 -38ページ目

緑ヶ丘ビーズ荘

読書とビーズ。

異形選出。森奈津子。おちばれネタバレありかも。




















★★★

青春コメディで選出の森奈津子さん。

正直あんまり期待してなかったです。選出した異形が若干インパクト弱かったんで…他の回に入ってたら選んでないかなーと。


が、結構図書館に揃ってて、あらっ人気者なの~と選択肢が広くて嬉しい誤算。

そして目に飛び込んでくるタイトル………


出オチつーかタイトルオチだろ!このタイトルに負けないくだらなさってどう出すんよ、と思ったんですが、なんと中身がタイトル以上にくだらなかったです。

何という予想を上回ってくれる誤算続きよ。






謎ウイルスで生き残った巨体少女とドラァグクイーン。


山も落ちも意味もないです。

正しい。なんと正しいやおいでしょう…好みなんだよそういうの!!

と膝を打ちながら読みました。いや~異形チャレンジしてなかったら巡り合ってなかったよね?一期一会…


少女小説から官能小説まで幅広く手掛けていらっしゃるらしくて、特に『ザ・官能小説風』のシーンを書くと、笑っちゃうくらいそれっぽくて笑う。

そうそう、官能小説ってちゃんと読んだことないけどそんなイメージ!!イメージ通りでやっぱあってるんだ~ちゃんと読んでみようかな~、と新たなジャンルへの興味を掻き立ててくれます。

背表紙に『愛と笑いとエロスの全8篇』て書いてあるんですが、愛もエロスも笑いのために提供されてますのでご安心を。


一番インパクトあるのはやはり表題作。

これは西城秀樹にまつわるイメージにもよると思うんで、作中人物と同じく、西城秀樹への敬愛の念が沸いてくるわ。


どれも本っ当~~~にくだらなくて、小難しいこと考えたくないんだよ~という時に読むと元気が出るような愛すべき作品でした。


が、難点を上げると、テーマが『愛と笑いとエロス』で編みなおされた短編集なので、さすがに一度に読み通すと若干飽きが来ます。

「官能小説ってやっぱそんなノリなんだ?!」という、伝統芸能(?)を味わう楽しみなので、さすがに8回目は食傷気味に。


しかし、そもそも異形で選んだのはエロステーマではなかったので、他の引き出しも面白そう~別作品読むぞ~!!という気にさせてくれます。

長編ホラーもあるっぽいんで楽しみですv

久世光彦。ベスト選出。オチばれネタばれあるかも。



















★★★

昭和9年、スランプに陥り失踪した乱歩は、麻布のホテルに身を隠していた。海外の長期滞在客がほとんどの〈張ホテル〉で、奇妙な出来事・人物にかかわりながら、乱歩は一つの作品を仕上げていた…。





具体的に作品名は思い浮かばないんですが、超~高名な脚本家さんですよね、久世さんって。

作中でオリジナルの乱歩の作品を発表って…すっ…げー度胸!!

作中作も、かな~り面白い完成度なのですが。

私、乱歩ってそんなにガッツリ読んでないので、乱歩っぽいかどうかは不明。


発表当時、乱歩ファンの反応はどうだったんでしょうか。

結構、ファンからしたら反感買いそうな企画じゃないですか?

私も、書かれなかった金田一の事件!とかはホクホクで読みますけど、コレ横溝先生が書いたものってことにしときますんで…って言われたら、若干イラッとしそうですもん。


しかし、そこまで乱歩読者でない身からすると、作品全体も素晴らしかったです。

耽美・ロマンの雰囲気と、微妙にみじめったらしく小心で、かつ憎めない乱歩がすごく魅力的です。

小せえな!と思いつつ、だんだん作品の完成を、乱歩とともに心待ちにし始めます。

完全オリジナルを乱歩作品として提示、ってすさまじいハードルだと思うんで、結局書けなかったんでした~ってオチだったら、この作中の乱歩が可哀想やん!


本家本元・乱歩の作品も、目につくものをざっと読んだだけなんですが、なんか憎めないですもんね。

びっくりさせるぞ~楽しませるぞ~!!って気合が。

作者も乱歩好きなんだろうな~…と、心温まる作風です。


あと、作中に出てくる実際の小説も読みたくなります。

あ、その作品聞いたことだけはあるね~・えーそんな人おったんや~、というエピソードを縦横無尽に網羅。

そーなんだ、読んでみたいな~・全然知らんかったけど面白そう!という気分にさせてくれます。

久世さんなんかすげえな。


賞を取っていたりして、かなり評価の高い作品なのだと思いますが、乱歩ファンからも温かく迎えられてたんだったらいいなあ。

小泉喜美子。ベスト選出。オチばれネタばれ有ります。




















★★★

昭和5X年、幼女殺人事件の犯人として一人の青年が逮捕された。精神科医に語られる青年の過去…戦時下の日本に漂う吸血鬼の影は、現実かそれとも幻影なのか。





大傑作、生涯忘れられない名作…とかではないんですが、「おっ、別の作品も読も。作者の名前忘れんようにせな」と思わせる佳作。

特に推理っつーかトリックがあるわけではないんですが。


回想・供述シーンは、吸血鬼ものらしくゴシックな雰囲気。

冒頭から、謎めいた洋館や金髪の少年少女で雰囲気を盛り上げるので、雰囲気勝負の話か~オチが難しくないですか?と不安になるところを、捜査のシーンで引き締めてくれます。


この捜査シーンの進み具合が上手い!

冒頭から犯人つかまってる上に、幼少期の忘れられない少女の話が出てくるので、誰が・なぜ・どうやってという謎はないにもかかわらず。


雰囲気勝負の回想シーンに対して、ぎりっと切迫感があります。

しかも章が進むにつれ、現実的な刑事がジワジワと幻想側に搦めとられていくような危うい進み具合。

青年の供述に足並みをそろえて、刑事も現実から脱落するのか…と思わせておいて、踏みとどまります。

現実の生活の中で忘れていくような、淡い疑問を感じたまま。

この辺のバランスがいい!


最後の最後に、合理的に説明を付けたものの、さて実際はどうだったのか…という幕切れも、あんまりもったいぶった感じでなくスマートに落としてました。

うーん、面白かったな!


作者はお若くして亡くなられたらしく、大変惜しいことです…。長編数は少ないみたいなので、せめて書き残されている分は読みたいな~。