ハーラン・エリスン。
ネタバレ落ちばれあり。
あっ…あんた別の短編集あったん?…うーん、今度本屋行ったときあったら買うわ…。
という、そんなに気乗りではないにもかかわらず買っといた方がいいんだろうな~と思わせるエリスンさん。
むか~~~し買った『世界の中心で愛を叫んだけもの』、まだ持ってるんですよ。
そして好み路線からは大きく外れているんだけど、なぜか未だにたま~に読み返すんだよね~。
『世界の縁にたつ都市をさまよう者』
切り裂きジャックが見た未来都市。凶行の果てに、そこで彼が味わう恐怖とは。
勢いのあるバイオレンス描写とドロッドロの人間の内面を描いていながら、明るい。ストーリーが、というわけではなくて景色が。
「冷たく硬く光をはねかえす、巨大な高圧消毒器にも似た無菌の金属壁。」というような都市の描写が続くのですが、コレ。
エリスンさんの作品て景色が明るい…。虹彩が淡い色の種属の見る景色だな~と。
この眩い感じが、何を言ってるのか意味わからん…ってガチSFでもなんとなく気を惹かれるポイント。
『死の鳥』
25万年の眠りの後、地球を救うために果てのない旅を続ける男。影のように男を導く蛇と、立ち向かうべき造物主とは…。
唯一神・創造主がアレ、というのは『天使禁猟区』や『千億の昼と百億の夜』などでお馴染みなので、エリスンさんの作品にしては私に優しいストーリーでした。
構成は凝りまくっていて、何がしたいか私にはわからないんですけどね…。
執拗で壮大な苦難の描写、スピード感あふれる文章が美しく爽やか。
『鞭打たれた犬たちのうめき』
ニューヨークで数多く繰り返される殺人事件。その一部を目撃した女は、自分が被害者となって初めて都市の真実に気づいた…。
とにかく文章が良い。
「古く、それでいて新しく、墓穴を思わせる空虚に満ち、深淵のように大きく深い、その燃える目は、…」というような、言語でなんとか脳内の映像を映写しようとする詳細な文章が、怒濤のように押し寄せてきます。
読んでいるこちらの脳が軋んでくるような迫力。
夜、暴力、狂気を描いていながら、あまりにも流れるような文章に飲み込まれて、なんか爽快感があるんだよな~。
とくに文章がかっこよかった3編を選びましたが、他も良かったです。
これさ、エリスンさんはもちろんだけど、訳者の方も相当私好みの文章をお書きになる方なのか?伊藤典夫さんか…前回の『世界の~』も同じ方かな?
猟奇耽美とは程遠く、抒情や郷愁も断片的。ハードSFらしいんで何言ってるかわからないですすいません…って話も多いんだけど…
人工的でどぎつい…が、年一くらい注文したくなる、クリームソーダのような印象です。
こちらの短編集も、積極的にではないが手元にあったら結構読み返す感が確実なので、まだ絶版になってなかったら購入しておこう…。