話題(!?)の天体ショー -書評- ベテルギウスの超新星爆発 | 知磨き倶楽部 ~ビジネス書で「知」のトレーニングを!~

話題(!?)の天体ショー -書評- ベテルギウスの超新星爆発

ベテルギウスという星の名前をご存じでしょうか。
冬の夜空の代表的な星座であるオリオン座を構成する、全天で9番目に明るい星(大きさは太陽に次いで2番目)です。
そんな夜空でも認知されやすいこの星が、もういつ爆発してもおかしくない状態にあるそうです。
まあ、天文学で「近い将来」というのは、明日から100万年くらいの時間軸を指すようなので(笑)、
僕らが生きている間に本当に爆発するのかどうかは定かではありませんけれど、
今年(2012年)に起こるのではないかという噂があり、一部の天文ファンの間では話題になっているようです。

本書は、このベテルギウスの超新星爆発をタイトルに冠した何とも惹かれる一冊です。
もし本当に今年爆発が起こるとしたら、
天文ファンならずとも、金環食やら、ハレーすい星、しし座流星群などの天文ショーと同じように、心躍る天文ショーになりますね。


ただ、本書のテーマは、タイトルの「ベテルギウスの超新星爆発」から期待される内容からはやや外れていて、
副題となっている「加速膨張する宇宙の発見」という方が主軸になっています。

我々が存在している「宇宙」というものに関しては、
随分と分からないことが多いわけですけれど、
20世紀の終わりごろから「どうやら加速膨張しているらしい」と考えられるようになっています。
昨年(2011年)には、この事実を発見した功績によって
サウル・パールムッター教授、ブライアン・シュミット教授、アダム・リース教授の3氏がノーベル物理学賞も受賞していますので、
既に定説になっているといってよいでしょう。
何というか、一般人である僕にとっては想像の範疇を超えるような話ではありますけど(汗)

本書は、そんな宇宙の最新の研究成果をまとめてくれていますが、
個人的には、個々の内容がコマ切れになってしまい、全体として捉えにくいような印象を受けました。
ちょうど、著者の野本さんがこのように書かれています。

マクロの世界である宇宙のことを知るには肉眼で見るだけでは不十分で、見るための道具と見たものを記録する道具、自分がなにを見ているのかを理解する能力が必要とされます。(p.109)

僕には、これらの道具や能力を持つ人たちが解明してきたことを理解するだけの知識と能力が欠けているのでしょうね…orz

眠れなくなる宇宙のはなしそれでも「宇宙」について少しずつでも自分の中に知識が蓄積されていくことは楽しいことです。
宇宙物理学者の佐藤勝彦さんは『眠れなくなる宇宙のはなし』の中で、次のように書かれていました。

今もやはり、宇宙は私たちと密接に結びついています。なぜなら宇宙を知ることは、宇宙の中に生きる人間を知り、「私」自身を知ることだからです。
(中略)
そして、宇宙の謎はまだすべて解き明かされたわけではありません。宇宙について知れば知るほど、新たな謎も生まれてくるのです。(同書p.13)

この「知れば知るほど、新たな謎も生まれてくる」ということは、松原隆彦さんも『宇宙に外側はあるか』の中で、「知識の球」という考え方を紹介されていましたが、まさに同感です。
自分自身の「知識の球」を膨らませ続け、未知のフロンティアとの接点を増やしていくことで、知識欲が刺激され続けることになるというのは、何とも楽しい経験です。
是非、本書でそうした楽しい経験を味わってみてください。

※ 本書は本が好き!様から恵贈いただきました。


■ 基礎データ

著者: 野本陽代
出版社: 幻冬舎(新書) 2011年11月
ページ数: 221頁
紹介文: 2012年、人類史上最大の天体ショーが始まる!? 最新ノーベル物理学賞受賞にいたる発見のドラマ!
オリオン座の中で明るく輝く赤い星ベテルギウスは晩年を迎えている。星が一生の最後に自らを吹き飛ばす現象「超新星爆発」。ベテルギウスは今、いつ爆発してもおかしくない状態にある。地球からこんなに近くで起きる超新星爆発は史上初のこと。過去、超新星は数々の宇宙の謎解きに役立ってきた。ベテルギウスが爆発したら何が起こるのか? 2011年にノーベル物理学賞を受賞した「宇宙の加速膨張」という衝撃的な事実は、どのようにして明らかになったのか? 超新星の最新研究をやさしく解説する。



■ 併せて読みたい

最近は宇宙論に関する分かりやすい本が毎月のように刊行されています。
その中から、僕が読んで面白かったものをご紹介しておきます。

宇宙に外側はあるか (光文社新書)
松原 隆彦
光文社 (2012-02-17)
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ざっくりわかる宇宙論 (ちくま新書)
竹内 薫
筑摩書房
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