【書評】明日、会社がなくなっても、自分の名前で勝負できますか? | 知磨き倶楽部 ~ビジネス書で「知」のトレーニングを!~

【書評】明日、会社がなくなっても、自分の名前で勝負できますか?

誰もが知っているような会社ですら経営が苦しくなってリストラしたり、経済環境の激変に耐えられずに倒産してしまったり…

特に、勤め先が倒産という事態に会社が陥ってしまうような場合には、多くの方は青天の霹靂のようなタイミングで自分の勤め先の倒産の事実を知ることになる。

もう記憶の中でセピア色に変わってしまっているかもしれないけれど、山一證券が倒産した日の朝の映像は、当時学生だった僕にすら印象的だった。


そんな時代環境の中で、転職、独立はもはや珍しくも何ともない選択肢となり、多くのビジネス書が「個人ブランド」で勝負できるようにならなければならないと説いている。

ややもすれば、がっついたビジネスパーソンにとっては、「個人のブランド化」が至上命題であるかのような風潮さえ感じられる。



本書も、そんな時代背景の中で登場した「パーソナル・ブランディング」に関する本なのであるが、次のような考え方の上に立脚している点が、類書と一線を画する本だ。


「個人のブランド化」はカッコ悪い

あなたが自分の原石を探し出し、磨きあげ、ブランド化しようとする姿は、本当にデキる人や、大勢の何もしない人間からすると滑稽だ。

……中略……

あなたは笑われたり、馬鹿にされたりする覚悟はあるか?
ピエロになる覚悟はあるか?
その覚悟がないなら、セルフブランディングなんてやめておいたほうがいい。
自分をブランドにしようなんて考えなければ、楽な人生を送ることができる。(p.152)


著者の川上さんは、その他にも本書における類書との違いを2点ほど挙げているのだけれど、僕は、この点が本書の中でもっとも光っていると思ったし、多くの人が今一度考えるべき点だとも思った。


このことが腹に落ち、それでも個人をブランド化する生き方を目指す覚悟が固まったら、本気で取り組んでいけばいい。

ちなみに、僕個人でいえば、今すぐ「ブランド化」されている必要はないのだけれど、自分が将来目指している姿を考えると、いずれ「ブランド化」された個人になっていないといけないと思っているので、であれば今から取り組まない理由などないという感じである。


そんな僕のようなビジネスパーソンには、本書の考え方はぴったりである。


「スローブランディング」

この本は今すぐ会社を辞めて起業せよとか、とにかく今よりいい会社に転職しろ、とあおる本ではない。むしろ自分をじっくり見つめ直すための本だ。

近い将来、自分を光り輝かせるために、今やっておいたほうがよいことを一緒に考えようという本だ。

人に語るべき「志」を発見し、自分のストーリーの伝え方を共に考えようという本だ。(p.36)



本書では、「今やっておいたほうがよいこと」を一緒に考えるためのワークも数多く用意されており、覚悟を決めた人間が、実際に取り組みやすいように配慮されている。

川上さんも、「はじめに」の中で「書き出すというワークが多いので、専用のノートを買うのもいいアイデアだ。そのアクションによって自分がどれだけ変わったかを、ぜひ報告してもらいたい。(p.3)」と書いている。


例によって、付箋を貼りながら読了することを優先させた僕としては、もう一度立ち返ってワークを始めることになるわけだが、そんな中でも既に気に留まった点を何点か紹介しておきたい。



まず、「今やるべきこと」として挙げられていた中に「働き方を変えること、日常を変えること。今まで深く考えずにやってきたことを自分の頭で考えるようにすること(p.39)」というものがある。


ブランディングということを考えるときに、多くの人が陥ってしまう罠に、「自分だけのオリジナルを作らないとブランドにならない」という勘違いがある。

川上さんは、ストーリーブランディングにおける一番大切なポイントとして、「志やストーリーはつくり上げるものではなく発見するもの(p.37)」という点を挙げている。

そうした自分の中にある「原石」を見つけ、磨き上げ、大きくしていくために、働き方を変え、日常を変え、自分の頭で考えるようにしようと。

これは覚悟を決めて取り組むなら、最初に変えていくべき姿勢であり、心持ちであろう。


ちなみに、「日常を変える」中での具体的な事例として、「テレビを見よう!」という考え方がある。


僕は、テレビはほとんど見ない。

ここ最近の自己啓発ブームの中で、テレビを見るという行為は受動的になりがちであり、時間対効果としては非常に低いので、テレビを見ることはやめましょう、と説く本が多く、実際にテレビを見ないビジネスパーソンは多くなっているように思う。


しかし、であればこそ、逆に、たとえばNHKの『プロフェッショナル~仕事の流儀~』やTBS系の『情熱大陸』のようなドキュメンタリーを観ることは、それだけで差別化要因になり得るという。

また、こうした番組は自分の「志」を発見するに当たっても、いい刺激を与えてくれることが多いとも。

ただし、受動的な姿勢でなく、録画して能動的に観るという点は、世の自己啓発書の言うとおりなので、その点はお間違いなく。



そのほか、早速取り組んでみなければと思ったことを2点挙げておく。


1点は、「自分自身の人生の棚卸し」であり、もう1点は「自分自身の欲望とエゴの洗い出し」だ。

実は、このワーク自体は本書特有のものではなく、たとえば勝間和代さんの『やればできる』や、本田直之さんの『パーソナル・マーケティング』でも同じようなワークがある。

「にもかかわらずまだやってないのか!」と自分に喝をいれ、取り組むためにも敢えてここで挙げておく次第。

なお、勝間さんが言うように、「仲間」がいたほうがよさげな気はしているが。



本書が第一の対象としている読者層は「今まで目の前の仕事をこなすことに精一杯だった若手ビジネスパーソン(p.39)」だそうだが、これまでに「パーソナル・ブランディング」に関する本を読んだにもかかわらず、具体的なアクションを起こせていないビジネスパーソンが、自分自身に最後の覚悟を問うための一冊としてもお薦め。


「そんなカッコ悪い思いまでしてブランド化なんてしなくていいや」と気づければ、それはそれで価値があることだと思うし、「カッコ悪くたってやるんだ!」と覚悟を決めたら、アクションを起こすための障害なんて何もなくなるのだから。



追伸:

本書では、「有名無名を問わずできるだけ多くの人の実例」が紹介されているのだが、その中に、僕も参加している本魂! という書評家集団を主宰する村林さんのお名前が!

僕は、代表的な活動として取り上げられている「書評ブロガーたちが勝手にインパク本レビュー(通称:一斉レビュー)」には、第1回からすべて参加しているので、村林さんが紹介されていることには感慨深い思いがある。

(ちょっとだけ自慢(?)させていただくと、第1回の一斉レビューからすべて参加している書評ブロガーは、主宰の村林さんを除けば僕だけだったりする。)

目の前で、「志」をもって活動している人が世に知られていくところを見ている感じだ。



【関連リンク】

著者ブログ: カワテツの「出版プロモーションの裏側、全部見せます」


【基礎データ】

著者: 川上徹也

出版社: クロスメディア・パブリッシング 2009年12月

ページ数: 208頁

紹介文:

2010年からの自分を変える計画書

①仕事のやり方を劇的に変える

②自分をマーケティングし原石を発見する

③「志」のあるストーリーでブランディングする


明日、会社がなくなっても、自分の名前で勝負できますか?
川上 徹也
クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
売り上げランキング: 35316



【他の方の書評記事】


本魂!~1冊の本から始まる想いの連鎖~: ブランディングの本質:【ヨミアト】『明日、会社がなくなっても、自分の名前で勝負できますか?』


【営業のコトバ屋】本の抜粋書評使えるコトバをあなたに!: 明日、会社がなくなっても、自分の名前で勝負できますか?