人と防災未来センター長・河田惠昭さん
元旦に起きた能登半島地震の記憶も新しいところ。東日本大震災のメモリアルデー「3.11」を前に、改めて”災害への備え”について考えませんか。「人と防災未来センター」センター長の河田惠昭さんに話を聞きました。
――29年前に阪神・淡路大震災を経験した私たち。東日本大震災や能登半島地震から学びいかせることは何ですか?
河田氏
阪神・淡路大震災が起こるまでは、地震が起きても火災が発生しなければそれほど多くの犠牲者がでないという思い込みが世間にありました。しかし地震発生直後に、古い建造物の倒壊によって多くの人が亡くなりました。13年前の東日本大震災では、過去の経験から「地震が起きても大きな津波は来ない」という思い込みがあり、すぐに避難をしなかった人も。結果、直後に発生した津波で多くの犠牲者が出ました。そして今回の能登半島地震では、古い木造住宅が倒壊して亡くなった人が。能登半島では、震度6強の地震が2007年に、群発地震が2020年から起きてます。それらに耐えて「倒壊しない」と思い込んでいた住まいは、実は、揺れがあるごとにダメージを受けていて、今回の地震で耐えきれずに倒壊したと考えられます。
要するに思い込みを捨てて、「今、地震が来たら大丈夫なのか?」と考え直すことです。
――関西で暮らす私たちが今、やるべきことは?
南海トラフ巨大地震が発生したときに何が起きるかを、”自分事”として考えること。
大阪は府内全域で、立っていられないような揺れが1分以上続くと想定されてる。その揺れに家具の固定器具は持ちこたえれるか?子供が自分の部屋で勉強してるときに揺れたら、本棚はどう倒れるのか?棚の中の本は子どもに振りかかってこないのか? …など、わが家に潜む危険は、そこに暮らす人しかわかりません。
「わが身に災害が降りかかったらどうなる?」ということを改めて考えて暮らすことこそが、直近に起きた能登半島地震の最大の教訓です。
――住まいの耐震化を見直す必要はありますか?
阪神間で言えば、阪神・淡路大震災の後に新築された家でさえ築30年近くになります。2018年に大阪府北部地震がありました。例え倒壊しなくても、あの時の揺れは家にダメージを与えている。次に大きな地震が来たら…と想像して、必要な予防措置はとっておくべき。
特に古い住宅では耐震化が必要となりますが、そういった住まいには高齢者が住んでいることが多い。経済的なことだけでなく、工事のために家具を動かさなければいけない、場合によっては工事中は外泊しなければいけないと、何かと負担が大きい。家全体の耐震化が難しいなら、自分たちがよく過ごすスペースを補強するだけでもいい。
1階がガレージになっている構造なら、柱が少ない1階が押しつぶされるかもしれない。ならばそこを先に補強する。
”本当に必要なこと”を考え”出来ること”をやればいいのです。
――地震以外の災害についてはどう備えるべきですか?
最近は大雨による災害も多い。例えば大雨が降ったら、今までに氾濫したことがない川が決壊して洪水がが起きるかもしれない。そういう危険性がある地域で暮らしているなら、大切なものは日頃から1階ではなく2階に置いておく。近くを流れる川の堤防の高さが自宅の2階よりも低いのなら、仮に洪水が起きても水位は2階に達しません。洪水が起きてるときに、危険を冒して避難所へ逃げなくても、自宅で2階に避難するのです。
このように、どの災害が起きたときにその場所でどんな被害が出るかをイメージして、それに対してどう行動するべきかを日頃から考えておくことが”万一”への一番の備えです。そしてそれを家族みんなで共有しておくことが大切です。
河田惠昭
人と防災未来センター長
関西大学社会安全学部特別任命教授
📰リビング
3月8日