いつか、子供だった君と | てざわりの記憶

てざわりの記憶

目で、手で、耳で、時には舌で触れる日々の手触り。

その記憶。

おや、どうしたんだね。

今夜はクリスマスイブだというのに、まったく君の顔ときたらこの世の終わりでも見てきたようだ。

ずいぶんと疲れておるようにも見える。

私は通りすがりの男だが、無論きみのことが大好きだ。

なになに、辛いことがたくさんあったと。

それでふさぎこんでおるわけじゃな。

なんと、こんな自分は嫌いだと言うのかね!?

それはいかん、なにせ私は君のことが大好きなのだから。

ふむ、みじめな自分の事を聞いたら、きっと私も君のことが嫌いになるというのだね?

よし、物は試しだ、話してごらん。

ふむふむ、ほうほう。

なるほど、君は自分のことを不完全な人間だと思っておるわけじゃな。

なに、まだあると?

かまわん、全部出しなさい、こんなもんじゃ、まだまだ。まだまだ私は君のことが大好きじゃぞ。

ほほう、すると君は、君自身の臆病なところや惨めなところをとても嫌っていおるわけだ。

さてさて、なんとも腹立たしいことよ。

いったいだれが、君に君自身を憎むように教え込んだというのか。

どれ、名前を教えなさい、よければ、今からソイツを一緒にブン殴りに行こう。

なに、暴力はいかんと。ふむ、そうか。

君はそうやってソイツを許すのに、自分は許せないというのだね。

さて、どうだね気分は。

君は、君自身の過去を恥ずかしく思って表に出せないわけだったが、たまにはこうやって風に当てるのもいいものではないかな。

無論、どんなものを出してきても大丈夫だ。

私にとって君ははずれた部品もなければ締め忘れたネジもない完璧な人間だ。

ただ少し、間違った教えを学んでしまったようだ。

まるでスポンジのように全てを吸収していた子供の君は、何か悪いものまで吸収させられてしまったようだね。

なに、大丈夫だとも。無論なんの問題もない。

いつだってやり直せるし、そんなささいなことは、君の価値に何の影響ももたらさないだろう。

どうかね、今晩一晩子供になって、私と一緒に空を飛んで見ないか。

新しく学べることがきっとある。

君にとっても私にとっても素敵な体験になると思うのだが、いかがかな?