かつて親しい友人が不妊治療に通っていた。

本人曰く、2年限定という期間で始めた治療だった。
理由はスタート時、既に彼女が34だったこと、旦那さんが一回り年上だった
ことで、二人ともそう長く治療に費やす時間はないと話し合って決めたのだと。



お互いにバリバリ仕事をしていて、共通の趣味もあって、ホントに仲のいい夫婦。


結婚したのは彼女が25前だったので、もっと早く子供を作るのかなと思っていたら
共通の趣味というやつがお金も時間もそれなりに必要とするものだった為、しばらくは
二人で楽しみたい気持ちもあったようで。
(それはちなみに海外でのスポーツ)

それに結婚してすぐ彼女が一度流産を経験した事で、子供はその内またできる
だろうと思って、特に気にしていなかったと言っていた。





ところが、そろそろと思った頃にはなかなか妊娠しない。

食事や飲みに出かけると、彼女が決まってその話をする時
「うちは旦那が結構年上だから、精子に元気がないのかしら~」

ってよく冗談めかして言っていたものだった。



一応、年齢も年齢だからと検査を受けに行こうという思いを固めて
不妊外来へ。

検査の結果、彼女には何の問題もない事が分かった。
その後、嫌がる旦那さんを説得して、旦那さんも検査を受けて貰う事に。




結論として、旦那さんの方に問題があるという事が発覚。
今のままで自然妊娠を望むのは難しいかも知れないという診断だったらしいのだが
その事を伝えたドクターが、彼女と旦那さん二人を目の前に


“奥さんには原因らしい原因がないから、パートナーが変わった途端に妊娠って
パターンもよくあることなんだよね。
おそらく相手が変われば妊娠は可能でしょう”


と、笑いながらカルテか何かを書きつつ、そう言ったのだと。




私は彼女が不妊外来に通う前の段階から、どうしたものかと話を聞いていた。
おそらく、私が何度も何度も流産を繰り返した経験があったから、ある意味
話しやすかったのかも知れない。

昔は私も彼女と同じ仕事をしてたこともあって、お互いに病棟の意地悪な先輩ナース
の話とか、スケベドクターの話で盛り上がったりもしてたし(笑)
とにかく今に至るまで、彼女との付き合いは長い。




だから不妊外来でそんな事を言われた時も、すぐに報告があった。



あーーーーーあ、って感じ。
ドクターとして可能性のある話として思う事はあるかも知れないけれど、
よりにもよって自分に問題があるとされた旦那さんの目の前でそんな事を
言ってしまうなんて。


デリカシーなさすぎ汗


不妊治療で通院した事がないので、私にはそのドクターの言葉が
信じられないと思ったけれど、こういう事って言われるような現実が
意外とあるものなのだろうか・・・?




案の定、その後の旦那さんの落ち込み方はハンパなく、
彼女はまるで腫れものにでも触るかのように、日々旦那さんへの接し方で
悩んでいた。


そして、旦那さんの方から度々

「相手が変わったら君は子供を持てる人生なのかも知れない。離婚した方が
いいのならそれも仕方ない事だと思う」

とかなんとか、毎晩言うようになったらしく、医者の一言で彼女自身が
妊娠しないストレスよりも更に大きなストレスを抱える羽目になった。




結婚後にすぐ妊娠出来たのは、おそらく旦那さんの若さが多少なりとも機能していた
のだろうという事で、それも確率としては稀だったのだろうという見解。

妊娠発覚直後に流産してしまったのだけど、彼女としては旦那さんに能力がないとは
思ってもいなくて、正直とても驚いていた。
と、言っても彼女が34なら旦那さんは46なわけで、確かに年齢的な衰えは否定出来ない。


人工授精や体外受精なら、という選択肢しか与えられない状況の中で
その一言はキツイ。





旦那さんも苦しんだだろうけど、彼女も苦しんだ。


なにげなく口をついて出た言葉だったのかも知れないけど、ありえない!!と
私まで憤慨してしまった出来事だった。




ちなみにこの夫婦は結果的に子供を持つ人生は諦めたけれど
結婚して20年近くにもなって、今も羨ましいくらいラブラブラブラブ