ゲーム界の名作中の名作
ファイナルファンタジーX。



その繊細に作り込まれたストーリーは
20年以上経った今観ても涙腺が緩みます。

まさかゲームで感情を揺さぶられて
涙することになろうとは
当時思いも寄りませんでした。



今ではゲームをやらない人でも実況などで
ストーリーを気軽に楽しめます。

ストーリー概要を簡潔にまとめられた
動画を出してくださってる方々もいますし、
興味を持つきっかけになれば嬉しく思います。



『いつか終わる夢』

これは主題歌『素敵だね』をアレンジした
BGMとして使用されている曲名ですが、
物語の伏線にもなっていて、
FF10ではこの夢という存在そのものが
儚くも残酷に描かれています。


舞台となるスピラの世界
遡ること1000年前



ザナルカンドという栄えた都市は
ベベルという機械仕掛けの大都市により
侵攻され、大きな戦争へと発展しました。

ベベルの強力な機械兵器に対して
ザナルカンドの召喚士たちは召喚獣で
必死に応戦し太刀打ちするものの、
力及ばずに次々命を落としていきます。

召喚士は死者の魂を成仏させたり、
聖獣を召喚して魔物の退治をするなど
現実世界の歴史でいう陰陽師に近い存在。

滅びゆくザナルカンドを前に
エボンという召喚士が夢という形でも
ザナルカンドを残したいと考えます。

それに賛同したザナルカンドの住民たちは
『祈り子』となり、ザナルカンドの街の
記憶の集合体を夢として吸い上げ、
エボンはそれを『夢のザナルカンド』として
1000年に渡り召喚し続けることになるのでした。

※祈り子とは召喚に必要な夢を提供する存在。
祈り子となった人間は魂を引き抜かれ
その魂は祈り子像へと封印されます

さらに…

エボンは『夢のザナルカンド』と
それを召喚する自分自身を守る鎧
『シン』を生み出しますが、




その『シン』はのち1000年に渡り、
『夢のザナルカンド』を守る防衛本能により
スピラ中の街も罪なき人々も無差別に
破壊しつくす魔物と化してしまいます。



エボンは夢のザナルカンドと『シン』を
永遠に召喚し続ける呪われた存在、
エボン=ジュ(呪)となり

この世に留まり続けることに。


この歴史は物語終盤まで
語られることなかったのですが…

最終的に『シン』を消滅させるには
『シン』の中にいるエボン=ジュを倒し、
消滅させなければいけない結論に至ります。

エボン=ジュは『シン』の生み親であり、
『夢のザナルカンド』も召喚し続けている
張本人。

それは『シン』の消滅と同時に
『夢のザナルカンド』の消滅も意味します。

主人公であるティーダは
この夢のザナルカンドの住人。

つまり、
彼もまた夢で創られた存在であり、
『シン』の中のエボン=ジュを倒せば
彼も消える運命に。


『シン』による死の螺旋の世界を続けるか?
自分自身が消滅してでもスピラを救うか?

究極の二択を迫られることになります。


祈り子の1人が願いを込めて
彼にこう言います。

「ずっと夢を見続けてなんだか疲れちゃった。
君は夢を終わらせる夢に
なれるのかもしれない」


最後、
ティーダたちによりエボン=ジュは倒され、
1000年に渡る死の螺旋の呪縛から
スピラは解放されることになります。

全てが終わり祈り子たちが消えゆく中、
夢のザナルカンドも消滅していき、
ティーダも実体を失い始めます。








「オレ 帰らなくちゃ…
ザナルカンド案内できなくてごめんな。
…じゃあな!」

オレは消えるんじゃなく故郷に帰るんだ。
皆を心配させないため優しい嘘をつき
背を向けて笑顔で皆の元を去ろうとします。

去ろうとするティーダをユウナは
咄嗟に抱き止めようとしますが、







体には最早触れることも叶わずに
すり抜けて飛空艇の甲板に倒れ込みます。



消えていく自分に啜り泣くティーダを背に
涙を堪えながらユウナは精一杯
「ありがとう」の感謝を伝えます。



ティーダは涙しながらも
もう触れることの叶わない腕で
ユウナを背後からそっと抱き締め、




幻光虫の光が舞い散る空へ飛び込み
姿を消していくのでした。

祈り子との会話の中には
こんなセリフもあります。

「走り続けるひたむきな夢(ティーダ)よ…。
夢の終わりを超えて真実となれ…。」


夢はいつか必ず終わりを迎える。

ならば

今思い描いている夢さえも
超えてゆけ。


そんなメッセージがこの作品には
込められているのかもしれません。