年末某日の出来事。
たった5分の探し物ですら、うっかりすると命取りになる危うげな8時半出勤の朝。
8時ジャストに携帯の着信音が鳴り、表示を見ると「中澤女史」......!!
一瞬身構えたけど、乙さんのことがあったのでとにかく出なければならない使命を感じて思い切って出た。
中澤 「あなた、今日仕事?夕方来れる?!」
私 「ちょうど今仕事に行くところで三時半までなので終わったら行きます!」
中澤 「え?何時?来れるの?夕方くらい?」
私 「四時までに行きます!」
中澤 「え?何時?ま、いいか、今日か明日どっちかは来れるわよね?何時に来れる?夕方?」
私 「四時です」
中澤 「え?!」
私 「四時!よじ!よん!し!!!」
中澤 「え?!自分からは話せるし会って話せば何となくわかるんだけど、電話だとぜんぜんわからないの。今日の夕方来れるの?何時に?」
私 「よじ!よ、じ!!よん!!しー!!!」
一生続きそうなやり取りに、だいたい朝不機嫌で私が長電話することを忌み嫌う夫がコーヒーを吹き出しそうになり苦しんでいた。
私 「終わったら、行きます!!」
中澤 「まあ、いいや!今日ダメでも明日来れるかもしれないし。あなた来てくれるの、ガラクタ用意して待ってるから!!」
この先いつまで続けようが電話口で噛み合うことは一生不可能な二人の電話は、奇跡的に終了した。出勤前に一日の半分くらいの労力を使い果たした気がした。
あやた 「お母さん四時って50回くらい言ってたけど銭湯のおばあちゃん?」
ザッツライト。
そして、大掛かりな断捨離中の現在、本当にガラクタになってしまいそうないらないものは、面と向かって丁重にお断りしようと胸に誓いながら、パート終了後まっすぐ女史の住む信〇コーポへ向かった。
嬉しい嬉しいと連呼して喜んでくれる女史の姿に、朝電話に出てすぐ行動を起こせて良かったと心から思った。
手土産を渡し、コーヒーを淹れてもらって小一時間交流し、また来ると約束をした。
そしてついに、見えていた大きな紙袋を前にして「中澤さん実は今私、断捨離中で...」という私の全く通らない篭った声は、女史の耳に届く前に空気中を儚く漂い拡散されて、まるで何事も無かったかのように消え入った。





















