
去る2月21日、あやわこのピアノの発表会だった。
季節も変わってしまうほど今更綴る気になったのは、
心の傷を完全に克服する迄に、3ヶ月余かかったからだ。

わこの曲の伴奏を、二度ほど丁重にお断りしたのだが、
わこと先生による三度目のダブル駄目推しに屈し、やることになった。
今回の曲目は、“ミッキーマウスマーチ”(伴奏)
と、出来る人にとっては朝飯前の屁レベルのものに違いないが、
私のスキルでは体で覚えないとムリと自己判断。
決まってからは、どんなに忙しくても毎朝弾くようにして、
ソラで弾けるようになって挑んだ本番だった。

リハーサルでは完璧だったのに、本番には魔物が棲んでいた。
開演前ギリッギリにうんこをしたきっちゃんを夫にパスされ、
オムツを替えてる時から胸がざわつき始めた。
頭の中が真っ白になったらどうしようとばかり思ううち、
間違えて頭の中を真っ白にするイメトレをしてしまったのかもしれません。
そうして迎えた本番。
わこが軽くミスった後、一瞬にして
脳内がパーリーな純白になり、両手がワナワナと震え出した。
顔面は神経痛になり、なんの曲でもない
あべこべの鍵盤をぶざまにオッ叩き、その後の記憶は
断片的にしか無い。
ミッキーは、行進途中で転倒して複雑骨折し、
私は舞台上で一回死にました。

冷たい顔面と四肢で、なんとかして客席に戻ったものの
わこに対する申し訳なさと、あんなに練習したのに本番で弾けない
自分のハートの弱さに絶望して、情けなさで消えて無くなりたかった。
ワタシ、このまま家に帰ったら、落ち込みすぎて明日が見えないと思った。
次の瞬間、迷う事なく先生のもとへ行き
全身全霊で「無理を承知の上でお願いします。もう一回だけやらせて下さい。」
と、ドスの利いた声で懇願したのだと思う。
すると、どこの世界でもピアノの発表会では
云うまでもなく御法度の願いを、先生は、聞き入れてくれたのだ。
あや太が弾き終わった後、
「すいません、ここで、先ほど弾いた後藤さんなんですけど、
どうしてももう一度弾きたいということで、本当の本当は絶対無しなのですが。
後藤さんは、なんと、四人お子さんがいらっしゃって、
レッスンに、自転車5人の曲芸乗りで来ることもあるんです!!
(蛇行運転のジェスチャー付き)
そんな中で、一生懸命練習していたので、
もう一度だけ、弾かせてあげてください!!」
そんなようなトークを交えてくださり、
会場の同情をかわせていただいた。
客席が温かい目で見守ってくれる中、
二回目はまあまあの出来で、演奏後、指笛なんか吹いてくれちゃったり
する粋なお父さんが居てくれたりして、
私の独りよがりリサイタルは幕を閉じました。

まるで、子供達ではなく
私の発表会の話のようになってしまったが、
練習では何度も挫折して泣いていたあや太の
“夢をかなえてドラえもん“は、ノーミスでとても良い出来だった。
子供達の中で、一番、私の性質を譲り受けてる気がするあや太が、
本番には強く、堂々として冷静だったことが今思い起こしても救いだ。
彼は、三月のマラソン大会でも
負けず嫌い根性で一位を勝ち取ったし、
三年生になって、ここぞという時にハートの強さを発揮してる。
わこは初だった、今年のピアノの発表会。
私が、まさかの、ルールを犯してでも諦めない執念の生き様を
子供達に見せたことは、良いことなのか悪いことなのか紙一重ではあるが、
最終的には笑い話となって昇華された。
帰宅後、
あや太 「お母さん、最後まであきらめなかったね(笑)
お母さんには、今日みたいな真面目な発表会よりも、あの、
プレーパークでやってる踊りのほうが合ってるよ。」

うん。そうだね。

私もそう思う!
