その2日前に交わしたやり取りを、何度も思い出す。
ハラさん 「焼けてるよ。ヘンな形のイモだな。」
実家から送ってもらった野菜の中にあった
鹿児島の“小金干甘”という品種で、色が白く奇妙な形をしている、が
母に聞くところサツマイモの一種らしい。
わたし 「私も初めてなんですけど味はサツマイモらしいんですよ。」
ハラさん 「じゃがいもみてえだな。」
そう言って、包んでたホイルと新聞紙を
4つとも火バサミでキレイにはがし、石段に置いてくれた。
ハラさん 「ほらよ。」
わたし 「ありがとうございます。ホイルだけビニール袋に入れるからください。」
今思えば。
横着して顔も見ないでやり取りしてたけど、
ちゃんと目を見て話せばよかった。
その後、サイ蔵がフウトを泣かせていた。
私が「コラ!」と言ったあとで、
ハラさんも、ふざけて「コラ!」と言ったら、驚いて大泣きしたサイ蔵。
その様子に慌てたハラさん、苦笑いしながら
「シーッ!静かに!」と何度も言ってたのを、
昨日のことのように覚えている。
それがハラさんと交わした最後のやり取りだった。
かまどの番人だったハラさん。
ぶっきらぼうだけど、密かに子供たちに優しいハラさん。
よく見ると、瞳がキレイでかわいいハラさん。
表沙汰にはされてないけど、尾崎紀世彦かエルビス・プレスリーか、
ハラさんか、というモミアゲをしてたハラさん。
今日は反応薄いな・・・と思いきや、不意打ちで
「ビシ!!!」 と、中学生男子のような攻撃をしかけてきたハラさん。
羽根木でしか会わないと思いきや、梅が丘通りを自転車で走ってたハラさん。
危険をおかしてまで、わっさんに挨拶してくれたがために、
派手にクラクションを鳴らされてしまってたハラさん。
ハラさん。
『ハラさんがいるからだいじょうぶ』
勝手な暗黙の了解で、かまどに焼き芋をほっぽっていました。
いつも、焦げる前に石の上に出してくれていました。
私たちは、ハラさんの身の上、これまでの人生、何も知りません。
羽根木にいる、かまどの番人のハラさん、ただのこれしか知りません。
実は何も知らない。
けれど、少なくとも私たちの知ってるハラさんは、
愛想はないけど本当は優しいおじさんで、何気ない思い出が沢山あります。
ハラさんがはにかんで笑う顔を見ると、私も嬉しかったです。
今でも、ひょっこり 「ヨッ!」 と現れそうな気がして、なりません。
何も知らないくせに、勝手なことを書き綴って申し訳ありませんが、
この場を借りて感謝の気持ちと思い出を残させてください。
今まで、子供たちに、私たちにも、優しくしてくれてありがとうございました。
ハラさんがいる天国が、暖かくて、
ハラさんにとって居心地のいい所であることを、願っています。

