先日、あや太が逃亡した。
このところ、もともとの甘ったれからくる気難しさに輪がかかってた。
一旦ヘソを曲げると厄介だな、と感じてた。
「はやく行こうよ!」
率先してお絵かき教室に向かう途中、だんだんヘンな顔になってきた。
おしっこをしたいが、アトリエではしたくないと半べそを掻き始めたのだ。
後からわかったことだが、狭くて和式なのが、嫌だったらしい。
駅のトイレへ誘ったが、どうしても立ちションしたいと、
自ら工事現場の隅にて、強行。
すると、急いでズボンを下ろしたせいか、
ズボンのゴムの部分と袖にひっかかった、その瞬間。
「もうやだーーー!!!もう、行かない!!!」
号泣しながら、住宅街へ全力疾走した。
「もう行かなくてもいいよ。そっちに行くと迷子だよ!!」
私の忠告に、首をぶんぶん振りながら駆けて行った。
アトリエの前に停めてあった自転車をとって追いかけたが、既に見当たらず。
周辺のどの路地にも、何処にも居ない。
まさかあや太に限って、そんなに遠くまでは行かないだろうという、普段の考えが覆された。
住宅街をぐるぐる回り、アトリエに2回戻り、家に戻っても居ない。
とりあえずわっさんだけアトリエへ預けた。
PM5時。
このまま暗くなったらマズイ。
見失った場所に何度も戻り、2~3m置きに、
「あやたー!」と呼びながら、探した。
通行人たちが、みんなびっくりした顔で振り返る。
車やトラックもよく通る住宅街では、こんな時に限って
ひっきりなしに続く救急車の音が耳についた。
小雨の中、30分が経過しようとしていた。
焦ってきた。
家を出た直後、あや太と喧嘩になった時、
「こいつ、このまま居なくなってしまえ!」と、
ほんの一瞬思ったことを思い出し、ひどく後悔した。
何であんなこと思ったんだろう?
最低だ。撤回したい。
あんなことを思ったせいかも知れない。どうしよう。
ケンに、何て説明しよう。
不安でいっぱいになり、似たような角が続く路地を曲がった時、
駐車場の塀に張りついてる、坊主頭のチェックのパンツを発見した。
良かった。見つかって。事故に遭ってなくて。
怒りもあったが、何より安堵感で力が抜けた。
「来るな!お母さんなんて嫌いだ!」
始めは悪態をついていたが、お互い暫くしゃがんで話してるうち、徐々に緩んでいった。
親身になって心配してくれていた、
デイリーヤマザキのおばあさんとおじさんに、発見したことを報告に行くと、
お客さんと一緒に店の外まで出てきてくれて、目を細めて喜んでくれ、緊張がほどけて泣いた。
「着替える?」と聞くと、「もう乾いたからいい。お絵かき行かないの?わこは?」
まるで何事も無かったかのようにアトリエに戻ると、
キャベツとレンコン、八つ頭、タケノコの絵を真剣に描いていた。
その晩の私は、子供達が寝たあとの自由時間を有意義に過ごしたく、
ここぞのレッドブルを飲んだ、5分後に寝た。
日常では、我慢が出来るようになったお年頃。
溜めてることや秘めごともあるかも。
いつも思ってて、やっぱり出来てないこと。
諦めないでちゃんと話さねば。
なかなか難しい。
