スピリチュアルケアワーカー援助論23 「神谷美恵子の世界」 | 終わらない歌ばらまいて

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お気楽極楽備忘録

 講師の嵩倉美帆先生は大学で臨床教育学を研究されていらっしゃいます。

 「神谷美恵子の世界」ということで、彼女が活動されたハンセン病の方についても学びました。

 

 ハンセン病の人たちと言うと、どうしても「砂の器」や「もののけ姫」のタタラ場の包帯を巻いた病人たちのイメージしかなかったのですが、現実は更に重く苦しいもので、もし自分だったら、その中で希望を見出して生きていけるのだろうかと、何度も自問自答してしまいました。

 

授業で多摩全生園の映像を見て、まるで強制収容所のような生活を知り、日本にもこんな歴史があったのだと衝撃を受けました。

 

特に男女交際は厳しく監視され、結婚の際には子供が生まれないように断種・不妊手術をほぼ強制的に受けさせられたり、「尊厳回復の碑」と言う強制堕胎の慰霊碑があるのも衝撃的でした。

 

100体以上の胎児や新生児の遺体が標本として保存されていた問題に、「人間扱いされていない」と差別の激しさにショックを受けました。

重監房に9年間で93名が入り、その内の23名が亡くなるという、死亡率の高さにも驚きました。

閉鎖された世界での看守の暴力など、本当に基本的人権の外に置かれている存在だと哀しくなりました。

 

もし私がその時代に生きていたらと考えると、やはり農村社会では周りの空気に流されてしまって同調圧力に屈してしまい、村八分などハンセン病の方々に対して、差別的な行動をしてしまっていたかもしれないと心が寒くなりました。

 
 また、「なぜ私たちではなくあなたが? あなたは代わって下さったのだ 代わって人としてあらゆるものを奪われ 地獄の責苦を悩み抜いて下さったのだ」という神谷美恵子の「癩者に」の一文が胸に突き刺さっています。
 
 身代わりの子羊という言葉が頭に浮かびました。
 神や仏を呪っても仕方ないと思うのですが、長島愛生園には教会もお寺もあったと知り、祈ることで彼らの心に平安が訪れ、光が射したのならばよかったと思いました。
 

 神谷美恵子の著書「生きがいについて」を読んだ時に、あぁもっと10代の時にこの本に出会いたかったと思いました。

 何故なら中高生の時、私はとても「何のために自分は生まれてきたのか」「自分の生きる意味は何なのか」「自分の使命はなんなんだろうか」「なんのために勉強しなくてはいけないのだろうか」と悶々と悩んでいて鬱っぽくなってしまい、虚無感に苛まれながら日々を送っていたからです。

 この本を中学高校の図書室にぜひ必ず置いて欲しいと思いました。

 

 現代は、数年単位で価値基準や常識がどんどん変わっていってしまう世界です。

 そんな時代でも普遍の価値観を提示し、悩める思春期の少年少女に手を差し伸べる一冊だと思いました。

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