「SHOUGEKI」
著:tk
1. はじまり
「だって彼氏つくりたいじゃん」
マキは最近買ったスマートフォンを手なれた指づかいで
アプリを操作しながら言った。
「そんなこといってあんたいっつも文句ばっかりいてるじゃん」
マキの友達のユウキはポテトをつまみながら言う。
「誕生日は、絶対一流のホテルでフレンチじゃなきゃやだとかさ。」
「いいの。私は妥協しないから。ってか姫みたいな?」
「ばかじゃないの?」
そんな会話で盛り上がっているファーストフード店。
エイジのとなりの女子大生だろうか。巻き髪に派手な厚化粧である。
むさくるしいくらいのシャネルの香水を店内で振りかける。
エイジは無言でチーズバーガーを口に流し込んで店を出ようとした。
その時ケータイの着信音が鳴った。
それはさっきの女子大生風の女のケータイの着信だった。
センスのない今時の軽い曲だった。
「えーまじ?えーいくいく。何時?何時?わかったぁー。」
あまりにでかい声だったのでむかついてエイジはトレイのごみを
大げさにバタバタと音をたてて捨てた。
「ばかいえよ。今日はエイジの誕生日だろ?」
「それがどうしても今日は彼女がゆるしてくれなくてさ」
ケータイ越しにカイは言った。
「な?頼むよ。この埋め合わせは絶対するからさ。」
「しょうがないな。でも絶対エイジ残念がるぞ。」
シンジは釘をさすようにいった。
「わりいな。じゃあ。」
エイジは28歳の証券マン。結構やり手で主にリスクヘッジと
企業向けの投資ファンドマネージャだ。
長時間労働に、常に揺れ動く株価に神経をとがらせ続け
いつのまにか擦り減ってしまったというところだろうか。
今日は29歳になる誕生日だ。ということをシンジからのメールで
初めてしった。完全に忘れていた。
29歳で、ある程度の出世街道を歩いてたが近頃、このままで
いいのかと思うこともあった。彼女とは3年目の同棲生活になる。
結婚話なんかもちらほらでてきているが現実になるのはいつのことやら。
マックで開いていたPCでみた株価がちらっと頭をよぎる。
最近は企業の世間を見る目を厳しくなっていて、少しでも不正などがあれば
がくっと株価は下がる。本当に注意して動向をみていないとこのマネーゲーム
も終わりだ。
彼女のユウコから電話が来ていた。マナーモードにしていたので気付かなかった
ようだ。
寒さが肌にささる。スーツの皺を仕切りなおしてケータイを取り出す。
ユウコは2回の着信音で出た。
「・・・・もしもし?」
「もしもし。わるい。電話くれてた?」
「うん。ってか。あんたまだ会社なの?」
「・・・いや。さっき終わってもう帰るとこ。」
「りょーかい。じゃ待ってるね」
「うん。」
ユウコは結構束縛が激しいコだった。普段はそうでもないが、自分の仕事がない日は
やたらと電話をしてきた。一度など重要な会議中に電話が来て、
大恥をかいたものだ。大口先との契約を進める商談だったので冷や汗がでたのを
今でもエイジは覚えている。
コンビニで適当に雑誌やビールを買ってマンションに戻った。
「ただいまぁー。」エイジはガチャリとドアを開けて生気のない声で言った。
部屋は電気がついていなくて薄暗かった。
「おーい。ゆうこ~。」
エイジはキッチンのほうへネクタイを緩めながら向かった。
一通り見回ったがどこにもいない。
電話がきてから20分程しかたっていない。
「どっか、買い物でも行ったかな。」
エイジはさほど気にせず、USBをバイオに差し込み電源を立ち上げた。
スタークエッジ社の株価を一刻も早くチェックしておきたかったからだ。
エイジが、率先してファンドに組み込んでいる会社だった。
販促・プロモーションを手掛ける部署の市川氏と昨日は名刺交換をしたばかりだ。
「妙だな。」エイジは変数解析用のソフトで4半期の株価を拡大してみた。
誰かがファイヤーウォールに侵入して、株価を操作している疑いがある
痕跡が見つかったのだ。
「もしかしてインサイダー取引?」
解析ソフトのプログラミング設計をしたヒロトに審議を確かめるために
ケータイをかけようとするエイジ。
続く