24時49分
久しぶりの再会とはいえ、カオル自身は相手の顔を見てすぐ元妻の友人だと分かった。
しかし、彼女はカオルのことを知らない人間だと言っている。
頼むから、悪い冗談はよしてくれと言おうと思ったが、その顔は真剣だった。
では、なぜさっきの電話では迎えに来ようとしたのだろう。
久しぶりと言ってくれた彼女の発言は誰と勘違いしていたのだというのだ。
謎かけのようだが、いくら考えても答えは出ない。
側に付き添っていた警察官もその不自然さに気付き、彼女に質問をした。
当然、友人を迎えに来たと答える彼女だったが、その視線の先はカオル本人には向けられていなかった。
まるで早く本人と会わせて欲しいと懇願するかのような面持ちであった。
「ちょっと待ってくれ!俺だよ!カオルだよ!」
ずっと抑えてきた胸苦しさを一気に爆発させるかのように叫んだ。
だが、その声は誰の耳にも届いていないようだった。
その時、胸の奥底から込み上げてくる酸っぱい胃液のようなものを感じ、トイレに駆け込んだ。
何も出なくなるまで思い切り吐き出し、水道でうがいをした後、目の前の鏡を見た。
「これが自分?」
25時08分
警察官と元妻の友人が話している。
「・・・私は学生時代からの親友です。だからしばらく会ってなくても相手のこと忘れたりしないし、見間違えるなんてことはありません。」
「それに、悪いけど迎えに行って欲しいって連絡があったからここに来たんです。」
警察官は彼女の顔をじっと見ながら聞いていた。
職業柄なのか、嘘をついていないか見抜こうとしているようだった。
それから警察官は誰からその連絡があったのかと尋ねた。
「彼女の夫からですよ。」