26時04分
トイレの鏡で自分の顔を見た後、カオルは気を失ってしまっていた。
うつぶせに倒れている人間を見つけた警察官はとっさに近寄り、まず仰向けにしようと抱えて動かした。
その警察官は、顔面蒼白になった。
なぜなら先程まで話していた人物と同一には思えないほど衰弱し切っており、今にも死にそうな容体だったのである。
慌てて大声で助けを呼び、救急車の手配を迅速に行なった。
時刻不明
カオルは暗闇の中にいた。
あまりにも暗すぎてそこがどこなのか、ましてや自分が立っているのか寝ているのかさえ全く分からなかった。
動いてみようと思ったが、脳から発信した信号が届いていないかのように、手や足が自分の言う事を聞いてくれなかった。
仕方が無いので、記憶の糸をたどろうとしてみた。
すると、徐々に色んなことが思い浮かべることができた。
ある男女の話し声が聞こえてくる。
「この子は他の子と比べて明らかに違う。私にはそれが分かるわ。でもそのせいで私はこの子を育てることができないの。いいえ、育てることだけじゃない、一緒に暮らしていくことが無理なのよ」
「それはやってみなくては分からないんじゃないかな。仮に君の言うように現時点で無理だとしても、この子自身が変わってくる可能性はあるだろう。その希望を最初から捨ててしまうのは非常にもったいないことだと思うよ」
「私自身が壊れてしまっても?」
「壊れないように僕がずっと見守るよ。それに壊れたとしても僕は支え続けるし、君とこの子を好きな気持ちは変わらないよ」
「ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいわ。ごめんなさい、母親として無責任なことを言ってしまって」
ただ、それから1ヶ月しないうちにその母親は忽然と消えてしまった。
