遥か昔、「ワライ」と呼ばれる恐ろしい武術が存在した。
コロシアムで演舞を行えば、
窒息寸前の観衆が現れるほどの、恐ろしい武術であった。
これは、「ワライ」を受け継ぐ、男たちの物語である。
♪
その手で 掴みとれ
ダイ バク ショウ
ワイ ワナ 高く 飛びたい
オマ チョ ヤル ヤンケ
俺にも できるはずさ~
(チョ パクん なや)
その手で 掴み取れ
キャク の ハート
ワイ モヤ 光 浴びたい
チョ 俺 出来る ヤンケ
光る 拳 唸れ
(カン サイ ベン!)
同じ 想いが 呼んだ
この ギャグ で
お前と 共に 輝きたい
勇気 元気 愛 と
You joke
♪
「えへ。来ちゃいました」
「待っていましたよ」
「この服装で大丈夫ですか?」
「ええ、服装はなんでもいいんです。
言い伝えによると、正装が多かったそうですが、
場合によっては、奇抜な格好が有利とも書いてありました」
「へ~。難しいんですね」
「はい、でも、難しく考える必要はありません。
自分の持っている技、
つまり『ネタ』、『ギャグ』が良ければいいのです」
「『ネタ』とか『ギャグ』とかもよくわからないです」
「いつも通りでいいんです。
『ボケ』、『ツッコミ』のような技を組み合わせた技が
『ネタ』と呼ばれるだけです」
「名前が付いてるだけで、適当でいいんですね」
「はい、その通りです。貴方の感性を大事にしてください」
「ヨッシャー・ヤッタルデー」
「アンサン・キィ・ミジカイ・デンナー」
「アニ・ユズリ・ジャケエ」
「あ、そうでした」
「どうしました?」
「一つ教えようと思っていた事があったんです」
「是非、教えてください」
「もし、この前みたいに私の『ツッコミ』を『アキラ』したら、
なにか適当に技をかけてみてください」
「まあ、そのつもりですけど」
「その時に、一つ重要な事があります。
出来るだけ大技をかけてください」
「え、なんでですか?」
「『ボケ』に『ツッコミ』を入れた時のように、
『アキラ』の後は絶好のタイミングなんです」
「エエコト・キイタデー」
「ワイモ・モエテ・キタデ」
「オマ・ズイブン・ヨユウ・ヤノ」
「ネーチャン・ニ・マケラレル・カイナ」
「ソウ・イッテ・ラレルンモ」
「ふっ」
「イマノ・ウチジャー!」
♪スッ♪
「セナカガ・オスル・ヤデー!」
♪トンッ♪
「きゃっ」
「ふふっ」
「ニイサン・ヤル・ヤンケ」
「カアチャン・ダイジニ・シイヤ」
「カ・カアチャン」
「オヤコウコウ・シイヤ」
「イワレンデモ・スルワ!」
♪スッ♪
「デキル・ウチニナー!」
「くぅっ」
「苦しいですか?」
「こ、この程度。大丈夫です」
「そうですか」
「ワイモ・ホンキ・ダシタル・サカイ」
「ホンナラ・『オチ』・ツケマヒョカ!」
「ソノマエニ・トイレ」
「ナン・デヤネン」
♪スッ♪
「ヨロシク・デンガナ・マンガナ!」
「ぶっ、ぶっひゃ~。くくくく、くぅ~。
ひひひひ、はははは。
ファー!」
「だ、大丈夫ですか?」
「す、すいません。ちょっと『ショウ』してしまいました」
「『ショウ』?」
「あなたの技が決まったんですよ」
「そうなんですか!」
「はい、技が決まると、人は『ショウ』と呼ばれる状態に陥ります。
これは『ツッコミ』による物理的な衝撃とは違い、
精神に働きかけます。
症状は様々で、一時的思考停止から窒息まであり、
程度に応じて、『ショウ』、『バク・ショウ』、『ダイ・バク・ショウ』
などと呼ばれています」
「へー、私も『ショウ』を取れたんですね!」
「はい。おめでとうございます」
「やったー」
「今日はこれくらいにしますか」
「はい♪ではまた」
家路につくソウの心境は複雑であった。
あれは、「バク・ショウ」であったのは間違いない。
しかし、「ダイ・バク・ショウ」であったのかもしれないという思考は、
衝撃とプライドから遮られたのであった。
♪
「ショウ」すれば
「ショウ」もないこと
忘れ ちまう
「バク・ショウ」すれば
爆睡して嫌なこと
忘れ ちまう
「ダイ・バク・ショウ」
「ダイ・バク・ショウ」すれば
俺はどうなっちまうんだ?
♪
男たちの運命を嘲笑うかのように、女神は微笑む。
宿命を嘲笑うが如く、「ワライ」の神は「バク・ショウ」。
次回、マダヤルン・カイナー「チャー・シバク?」
「マイド!」