遥か昔、「ワライ」と呼ばれる恐ろしい武術が存在した。

コロシアムで演舞を行えば、

窒息寸前の観衆が現れるほどの、恐ろしい武術であった。

これは、「ワライ」を受け継ぐ、男たちの物語である。

 

 その手で 掴みとれ

 ダイ バク ショウ

 

 ワイ ワナ 高く 飛びたい

 オマ チョ ヤル ヤンケ

 

 俺にも できるはずさ~

 (チョ パクん なや)

 

 その手で 掴み取れ

 キャク の ハート

 

 ワイ モヤ 光 浴びたい

 チョ 俺 出来る ヤンケ

 

 光る 拳 唸れ

 (カン サイ ベン!)

 

 同じ 想いが 呼んだ

 この ギャグ で

 お前と 共に 輝きたい

 

 勇気 元気 愛 と

 You joke

 

「えへ。来ちゃいました」

 

「待っていましたよ」

 

「この服装で大丈夫ですか?」

 

「ええ、服装はなんでもいいんです。

 言い伝えによると、正装が多かったそうですが、

 場合によっては、奇抜な格好が有利とも書いてありました」

 

「へ~。難しいんですね」

 

「はい、でも、難しく考える必要はありません。

 自分の持っている技、

 つまり『ネタ』、『ギャグ』が良ければいいのです」

 

「『ネタ』とか『ギャグ』とかもよくわからないです」

 

「いつも通りでいいんです。

 『ボケ』、『ツッコミ』のような技を組み合わせた技が

 『ネタ』と呼ばれるだけです」

 

「名前が付いてるだけで、適当でいいんですね」

 

「はい、その通りです。貴方の感性を大事にしてください」

 

「ヨッシャー・ヤッタルデー」

 

「アンサン・キィ・ミジカイ・デンナー」

 

「アニ・ユズリ・ジャケエ」

 

「あ、そうでした」

 

「どうしました?」

 

「一つ教えようと思っていた事があったんです」

 

「是非、教えてください」

 

「もし、この前みたいに私の『ツッコミ』を『アキラ』したら、

 なにか適当に技をかけてみてください」

 

「まあ、そのつもりですけど」

 

「その時に、一つ重要な事があります。

 出来るだけ大技をかけてください」

 

「え、なんでですか?」

 

「『ボケ』に『ツッコミ』を入れた時のように、

 『アキラ』の後は絶好のタイミングなんです」

 

「エエコト・キイタデー」

 

「ワイモ・モエテ・キタデ」

 

「オマ・ズイブン・ヨユウ・ヤノ」

 

「ネーチャン・ニ・マケラレル・カイナ」

 

「ソウ・イッテ・ラレルンモ」

 

「ふっ」

 

「イマノ・ウチジャー!」

 

♪スッ♪

 

「セナカガ・オスル・ヤデー!」

 

♪トンッ♪

 

「きゃっ」

 

「ふふっ」

 

「ニイサン・ヤル・ヤンケ」

 

「カアチャン・ダイジニ・シイヤ」

 

「カ・カアチャン」

 

「オヤコウコウ・シイヤ」

 

「イワレンデモ・スルワ!」

 

♪スッ♪

 

「デキル・ウチニナー!」

 

「くぅっ」

 

「苦しいですか?」

 

「こ、この程度。大丈夫です」

 

「そうですか」

 

「ワイモ・ホンキ・ダシタル・サカイ」

 

「ホンナラ・『オチ』・ツケマヒョカ!」

 

「ソノマエニ・トイレ」

 

「ナン・デヤネン」

 

♪スッ♪

 

「ヨロシク・デンガナ・マンガナ!」

 

「ぶっ、ぶっひゃ~。くくくく、くぅ~。

 ひひひひ、はははは。

 ファー!」

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「す、すいません。ちょっと『ショウ』してしまいました」

 

「『ショウ』?」

 

「あなたの技が決まったんですよ」

 

「そうなんですか!」

 

「はい、技が決まると、人は『ショウ』と呼ばれる状態に陥ります。

 これは『ツッコミ』による物理的な衝撃とは違い、

 精神に働きかけます。

 症状は様々で、一時的思考停止から窒息まであり、

 程度に応じて、『ショウ』、『バク・ショウ』、『ダイ・バク・ショウ』

 などと呼ばれています」

 

「へー、私も『ショウ』を取れたんですね!」

 

「はい。おめでとうございます」

 

「やったー」

 

「今日はこれくらいにしますか」

 

「はい♪ではまた」

 

家路につくソウの心境は複雑であった。

あれは、「バク・ショウ」であったのは間違いない。

しかし、「ダイ・バク・ショウ」であったのかもしれないという思考は、

衝撃とプライドから遮られたのであった。

 

 「ショウ」すれば

 「ショウ」もないこと

 忘れ ちまう

 

 「バク・ショウ」すれば

 爆睡して嫌なこと

 忘れ ちまう

 

 「ダイ・バク・ショウ」

 「ダイ・バク・ショウ」すれば

 俺はどうなっちまうんだ?

 

男たちの運命を嘲笑うかのように、女神は微笑む。

宿命を嘲笑うが如く、「ワライ」の神は「バク・ショウ」。

次回、マダヤルン・カイナー「チャー・シバク?」

「マイド!」

 

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