「ったく、買い物ってやつはめんどくせーな」
「私はお兄様と一緒なら、なんでも楽しいわ」
「おい、お前はこの辺でぼけ~っとしてろ、
ちょっくら行ってくるわ」
「はい」
「にゃ~ん」
「わぁ、かわいい猫ちゃん」
「にゃ~ん」
「お名前、なんていうの?」
「にゃ~ん」
「にゃ~んちゃんって言うの。かわいい~」
「にゃっ」
♪タッタッタッタッ♪
「オイ・ワレ」
「お、お嬢さん?」
「ナニ・サラシ・トンジャ・ボケ」
「ベツニ・ナンモ」
「コワガッテ・シモタ・ヤンケ」
「ス・スマンノオ」
「ケツカラ・ユビ・ツッコン・デ・オクバ・ガタガタ・イワシタッ」
「ナン・デヤッ」
♪スッ♪
「!!」
「こんばんは。この前はありがとうございました」
「あっ、この前はどうも」
「お名前をお聞きしてよろしいでしょうか?」
「ソ、ソヤ」
「ソヤさんって言うんですか。私はオマ、よろしくお願いします」
「オ、オマさんって言うんですか。かわいらしい名前ですね」
「え~そうですか?私はなんか、
もっとしっかりした名前がいいです」
「そんな事気にする必要ありませんよ。
貴方がしっかりしてますから」
「まぁ。うふふ」
「ところで、今の技、誰に教わったんですか?」
「お兄様の真似してみたんです」
「それは真似ではありませんよ。
『パクリ』といいます」
「『パクリ』?」
「他人の技を見ただけで、同じ技を習得するんです。
普通は『アキラ』と呼ばれる技を経由するんですが」
「『アキラ』、知ってます♪
お兄様に教わりました♪」
「先日の私の『みる目がない』という発言は失言でした。
貴方のお兄さんは並みの人間ではありません。
この短期間で『アキラ』、
いや、ワンランク上の『アキタ』を習得させ、
さらに『パクリ』の原理を気づかせるとは」
「お兄様はすごいんです」
「あ、私はこれで失礼します。
また、近いうちに、では」
♪タッタッタッタッ♪
「んあ~、米って奴はクソ重めえな」
「お兄様!」
「帰るぞ」
「はい♪」
「そういえば、誰かと話してなかったか?」
「はい、ソヤさんといいます」
「ソヤねえ」
猫も哀愁を感じる夕暮れ時。
その静かな時間は、ソウの想いとは対象的であった。
ソウは思っていた。
見事な『フリ』だったと。
♪
帰ろ かな~
でも 寂しいな
一人で食べる
ご飯
作ろ かな~
でも 少ないな
一人分の
料理
お鍋で作りたい
おでんも作りたい
それより あなたに
食べて ほしい
♪
近づいてゆく二つの運命。
交わり、すれ違い、絡みつく、糸の様に。
宿命とは、その紡ぐ糸の事である。
次回、マダヤルン・カイナー「ダイ・バク・ショウ」。
「ホンマ・デッカー!」