以前患者さんからこんなことを聞かれました。「昔は葛根湯がよく効いたのに、最近は飲んでも全然効かなくなった」
このような話はよく聞きますが、実はこの悩みには東洋医学の考え方から漢方薬を選ぶ際にとても重要な要素があります。それが病位(びょうい)という考え方です。
病位というのは、まさに字のごとく病気の位置ということですが、東洋医学では体の持つエネルギーが弱くなると、病気が身体の深いところに影響していき、やがて亡くなってしまうという整体観があります。そしてその病気の位置によって発する症状がさまざまあり、頭痛、発熱、肩こり、食欲不振、めまい、便秘、下痢、腹痛などいろいろなことが起こってきます。
そういった整体観からみれば、葛根湯が効かなくなったというのは、昔と同じ症状で困っているけど、体の状態が変化して、病位が以前と違っているため、葛根湯が効かなくなっていると考えられます。
東洋医学ではこういったことがあるため、例えばお友達に「この漢方薬でめまいが良くなった」と聞いて、自分も飲んでみたけど全く効果がない、ということや、逆に効かないと聞いていたのに、自分にはよく効いたということが起こります。
東洋医学の古典を読んでもそのような事例は書かれており、昔から名医といわれる先生は、病気の位置や状態をとらえるのが上手なため、薬がよく効くんだということがよくわかりますし、同じ東洋医学の分野である鍼灸でも、見立てが上手な先生はやはり鍼もお灸もよく効くように感じます。
何事も、道具よりも見立てが大事ということなのでしょうね。
