櫻の園2 感想 第ニ幕 | 元玉拾い(もと、たまひろい)のスポーツとか草花とか

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櫻の園2

ガソリーナ(じんのひろあきさん作・演出)

ザムザ阿佐ヶ谷

 

休憩後、緞帳が上がると、夏の「ゴーストバスターズ」から月日が流れて、清水部長の代が3年になった春、「櫻の園」上演当日の朝

 

 

2年の倉田さん(石黒丞子)が、去年は部長の澪先輩(國領浩子)が演じた、ラネフスカヤを演じることになったんだけど、当日、遅刻。

 

 

 

倉田さん、ホントはラネフスカヤをやりたくなかったんじゃないのか?と心配する志水部長(加藤るみ)。でも、「出ようとしてら、携帯の充電が切れてて」と、別にワザと志水部長からのメールや電話、LINEに返事しなかったわけじゃなかった。

 

美里先生(石川ひとみ)が部室で、部員に向かって「杉山さん(未浜杏梨)、きのう、警察に捕まっちゃって」

 

ひとまず、部員はホームルームへ。

美里先生は臨時の職員会議へ。

 

倉田さんはホームルームへは行かずに、台本持って、台詞の練習をしてるんだけど、もう、あと数時間で本番だってのに、おぼつかない。ただ、ここでは、あんま悲壮感はないように見えました。

 

杉山さんがハンカチで左ほほを押さえながらやってくると、

「櫻の園、やりたくないなぁ。藤原講堂、燃えちゃわないかな(パンフレットの上演台本では、「地震で藤原講堂だけ潰れないかな」って書いてある。ん?僕の記憶違い?)」

このあとの杉山さんの「こらこら」含めて、このやり取りも、けっこうライトな感じでした。

 

ただ、続けて「櫻の園、中止になるかもしれないよ。わたしのせいで」

 

職員会議では「櫻の園」の中止が決定し、理事会に掛けられることに。

その時、理事会にやってきたのが、杉山紀子の祖母(土田真理)。

「いまここで、土下座をして差し上げればいいんですか?!」

 

孫可愛さで、朝一番で美容室で髪をセットしてから、学校へ乗り込み、

おばあ様の一言で「櫻の園、やるからね・・」

 

そのことをまだ知らない、放送で進路指導室に呼び出された、志水部長と杉山さんの、テンションが低いやり取り。このシーン、好きです。

 

 

「櫻の園」が中止になったら、暴動を起こしたいと、静かに告げる、志水部長。「わたしも混ぜてくださいよ」「もちろん」「やった」

 

この「やった」が、静かな中にも、わくわく感が出ていて。志水部長も、「櫻の園」が中止になりそうだっていう、その原因である杉山さんに怒ってるそぶりは全くないのも印象的。むしろ、暴動、演劇部みんなでやろう、みたいな。

 

その後、志水部長が小学校の時、男(男子じゃなくて、男って言ってたと思います)に、生理の時、ハンカチで包んでいたナプキンを引っ張り出されて「今日、こいつ、これなんだぜ」って言われたことを、絶対に許さない、と強い口調で。このあたりのやり取りは、「櫻の園」の中止騒動とは離れて続きました。で、杉山さんが「志水さん、倉田のこと、好きなんでしょう?」って言い当てる。否定しない志水部長。志水部長は倉田さんが好き。桃(植野佑美)は志水部長が好き(志水部長は気付いてない)。杉山さんは桃が好き。「せつないな」

 

なんやろ、女子高って、こんななんかな。

 

そこに憔悴しきった美里先生がやってきて、「櫻の園、やるから。準備して」

 

みんなで暴動やるか、櫻をやるか

櫻になりましたね

行こうか、「櫻の園」へ

はい

 

志水部長とは対照的に、杉山さんに怒りをぶちまけたのが、桃。

「杉山、てめぇ!」

怒りで椅子を何度も何度も蹴とばし。

 

そんな桃に向かって、紀子は、なんで、タバコのこと、素直に謝らなかったのか(そもそも、紀子は、その場でも、自分はタバコ吸ってなかったようです。映画「櫻の園」では、つみきみほさん、吸ってましたけどね)、自分には、この学校に友達がいないから、他校の奴らと一緒にいて。ほんとはタバコ嫌いだし、やめなよって言いたかったけど、そしたら仲間はずれにされるのが怖くて、言えなかったんだ。でも、それってほんとに友達なのかな。友達なら、やめなよって言うんじゃないかって。結局、ただ一緒にいるだけ・・そして注意しなかったってことは、自分も同罪・・

 そう告白、桃に絶叫して問い掛ける、紀子


紀子と桃

 

 

そんな叫びを受け止めた桃は「一生かけてつぐなわなくていい。その代り、全員にポンデリング、おごれ!それで今回のことはチャラだ!」

 

パンフレットの表紙にもなってる、

ポンデリング。 

 

この一部始終を見ていた、桃ちゃん先輩を慕っている、2年生の悠ちゃん(二宮咲)が、桃と2人きりになった時、

「どうして、私たちがいるじゃないか!って言わなかったですか?照れですか?」

 

「それ、言っちゃう?友達じゃないか!私たちがいるじゃないか!・・言えないよ、ダサいじゃん」


あぁ、桃先輩、悠ちゃんのこと、可愛がってて、信頼してるんだなぁって感じさせる「友達感覚」な言い方。

 

「言うべきでしたよ。わたし、この1年、見てきましたよ。大変なときは支え合って。笑ったり、笑ったり、ちょっと泣いたり」

 

 

1学年下だし、妹キャラの悠ちゃんが、この時は、桃ちゃん先輩を諭すように物静かに語りかけて。このシーンは、泣いた。チタキヨ「わたいはミシン」でも、後輩が、やる気をなくした先輩ふたりに「わたし、見てきました。いいものを創るために、お二人がしてきたこと。こんなこと言うの、凄く恥ずかしいけど、言っちゃいますけど・・私、お二人のこと、尊敬してます!」と、こちらは絶叫して、ふたりに再びやる気を出させるシーンみたいで、ここ、よかった。

 

卒業したばかりの、澪先輩とミッシェル(佐瀬ののみ)

終わっちゃったんだね

澪先輩は、パリへ留学。エスカレーターで大学に進学したミッシェル、「大学、つまんない。おじいちゃんが来いって言ってるから、アメリカ行っちゃおうかなぁ」

「パリかぁ」「アメリカかぁ」

 

1年前には、自分たちが「櫻の園」をやり、その後もほんとは引退なのに、部室に顔を出し続け。でも、離れていくふたり。「当分、会えなくなるね」

 

あっという間に時は過ぎ、毎日一緒にいた友達と別れる。高校生のほんの一瞬。

儚さ。

 

終盤、志水部長は、倉田さんは胸が大きいことがコンプレックスで、ラネフスカヤの衣装だと、胸が目立つことも、倉田さんがやりたくない一因なんじゃないかと考えて、胸元に白い、大きなリボンを付けてあげます。そうすれば、目はリボンに行くから、胸、目立たないでしょ?

 

ここは、映画「櫻の園」と同じシーン。

 

倉田さんは、落ち込んだまま、自分はコンプレックスの塊で、こんな自分には、彼なんて出来ないだtって、ひたすら落ち込んでて。第ニ幕序盤、杉山さんとの絡みの時とは明らかに違うテンション。

 

そんな倉田さんに「倉田さんのこと、好きな人、いるわよ」「いませんよ」

 

部室の前にいた紀子は、部室へと入ろうと歩いてきた、桃ちゃんの腕をつかんで行かせません。でも、声は聞こえちゃう。

 

志水部長は、倉田さんに好きだと伝え、それに嬉しいと答える倉田さん。

志水部長のことが好きな桃は崩れるように。それを支える紀子。

切ない。切ない。

 

部室の外から、あえて大きな明るい声で「志水さん、倉田さん、時間よぉ」

 

行こう、櫻の園へ。

 

志水部長、倉田さん、桃ちゃん、杉山さん、悠ちゃんが、スローモーションで、前へと歩き出す。バックには、サイモンとガーファンクルの「サウンド・オブ・サイレンス」(歌ってるのは、別の人で、誰のかは、分かりませんでした)

 

これって、あれかな、内容は違うけど、「卒業」と掛けてるのかな。

 

ラストは、「櫻の園」の上演。倉田さんのラネフスカヤの台詞は、今の倉田さん自身のようでもあり。「わたしの過去を、雪解けの冷たい水が押し流してくれたとしたら」

 

もうひとつの見どころは、悠ちゃんが、第一幕の最初のシーンの桃と同じ、黒い、フードのといたウインドブレーカーを着込むと、桃と同じ、腰をかがめて、舞台を袖からのぞき込むような、舞台監督に。

 

1年前は後輩で、澪先輩の叱咤激励にも、ほわわんと、よく理解できていないような返事をしていた桃が、今、「櫻の園」で、メインの長台詞を吐き出している。それを見守る、2年生の悠ちゃん。後輩は先輩の背中を見て。後輩は先輩の立場になり。成長し。

先輩は1年経てば、この「監獄」から卒業。

 

あがき続けた

早く自由になりたかった

信じられぬ大人との争いの中で

 

この支配からの卒業

 

そして、今は春。また1年生が入ってくる。

個人から観たら、どんどん立場が変わり、この場を去っていく。

遠くからみたら、人は違えど、同じことの繰り返し

 

儚さと切なさが詰まった第ニ幕でした。

 

歴史ある女子高。紀子のおばあ様も、ここの卒業生。

そんな歴史ある女子高のような雰囲気のザムザ阿佐ヶ谷。

 

終演後、出演者の皆さんと、この舞台の感想をお話ししている空間も、客席の座布団に座りながらだったり、舞台上だったり。

 

この、雰囲気、すべてで「櫻の園2」だった、そんな風に感じています。