舞台版「惡の華」感想④ 秋月成美 「不幸にするのは私だけにしたら?」 | 元玉拾い(もと、たまひろい)のスポーツとか草花とか

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劇団た組。第10回目公演  舞台版「惡の華」

浅草ゆめまち劇場


佐伯奈々子さん役の秋月成美さんは、全く知らない女優さんでした。

優等生で、男子からはアイドル的な人気があり、
女子からも好かれている、「良い子」。

朗らかで、おっとりとした話し方。

そんな、佐伯さんを1年前から密かに好きで、女神と崇めていたのに、つい、魔がさして(顔をうずめて、深呼吸してたけどな)、佐伯さんの体操着を盗んでしまった春日高男くん役の清水尚弥さん


春日くんが佐伯さんの体操着を盗むところを目撃し、それをネタに、春日くんと「春日くんの大切なこのを奪う契約」を結ぶ、仲村佐和役の花奈澪ちゃん

この、メインキャラクター3人の、魂が籠った演技が、この作品を素晴らしいものにしたことは、間違い無い。

今日は、佐伯さん役の秋月成美さんについて。


パンフ



最初に3人がそろったシーンは、仲村さんが「春日くんが用あるんだって」と、佐伯さんを呼び出し、いきなりの振りに、あわあわしてる春日くんを佐伯さんに向けて仲村さんが突き飛ばし、ビーナスに抱き着いてしまう、春日くん。突然のことに逃げ出す、佐伯さん。

まっとうな反応の佐伯さんでした。


ロッカーに給食費を置き忘れてた女子がいて、その給食費がなくなった際、クラス全員が「仲村じゃね?」「だよな、あいつならやりかねない」

みたいになって。春日くんが「そ、そりゃ、仲村は何考えてるか分かんないとこあるけど、これは違うだろう」

変人で、友達もいない仲村さんをかばってしまい、皆からからかわれて、かばったことを悔やんでいたら、

突然、佐伯さんから声を掛けられて「カッコよかったよ。私も仲村さんはやってないと思うよ。それだけ言いたかったの」

女神降臨に舞い上がる春日くんから、ふだん何してるの?と聞かれ

「勉強かなぁ。週に4日、家庭教師の先生が来てくれるから。ピアノ弾いたり、あとは犬の散歩かな」

話の流れで、「一緒に、その古本屋に行く?!」と舞い上がりながらも、誘っちゃったら

「いいよ♪」

この序盤は、ホント、ミューズでファム・ファタールでマリアでヴィーナスでした。

初デートで、春日くんから交際を申し込まれたときも、即答でOK


翌日、教室ではふたりが一緒に歩いてるとこを目撃した小島(春日くんの友達)が、そのことを話して、クラスが騒然となる中(アイドルと、根暗な読書少年の組み合わせに)、

佐伯さんが「私たち、きのうから、付き合ってるの」と宣言。

昼休み、一緒にご飯を食べる春日くんと佐伯さん。そこで佐伯さんが「春日くん、仲村さんと友達なんだね。私も、仲村さんと友達になったよ。」

ひとりでご飯食べてる仲村さんを誘って、3人で一緒にご飯。

仲村さんが「春日くんが変態でも、好き?」
佐伯さん「春日くん、変態じゃないよ」

なんだ、この返しは。

このあたりまでは、高くて線が細めで可愛らしい声で、おっとりとした話し方の佐伯さん。
これがあったから、その後の変貌ぶりが、より際立ちました。
秋月成美さん、気持ちの入れ方、声の出し方、とにかくお芝居が上手くてビックリしました。


春日くんは、否定してるだけで、最初から変態だし、
仲村さんは、「私もたぶん変態なの」って自覚してるし、

それに対して、佐伯さんは親や先生が喜ぶ生き方をしてきた、優等生でちょっと天然さん、
だったのが、

春日くんと仲村さんが仲良さそうに(実際は、耳を両手でふさいで聞かないようにしてる春日くんに後ろから抱き着くようにして「佐伯さんがねぇ、春日くんとせっくすしたいって!」と言ってたんですが)してるとこを見てしまい、不安な気持ちになったあたりから、歯車が狂っていきました。

「春日くん、仲村さんと、セッ・・」

そして、佐伯さんの体操着を盗み、それを着て、佐伯さんとデートしたことを佐伯さんに隠す罪に耐え切れなくなった春日くんは、仲村さんの罵倒により覚醒?して、教室に体操着を盗んだのは自分だとペンキででデカデカと落書きすることで、佐伯さんに自白するはずが、仲村さんが墨汁で名前のとこを塗りつぶして、誰が犯人かバレず。

しかし、「惡の華」の表紙に描いてある華の絵を床に描いてたことから、
佐伯さんに、バレてしまいます。

「全部、春日くんなんだね・・どうして仲村さんに言うの?!どうして私に言ってくれないの?
私のこと想って、体操着を盗ったんでしょ?私、嬉しいよ(←体操着を盗まれたことが「嬉しい」ってのは、完全に変態です)。それより、私に話してくれなかったことが悲しいの」

春日くんは、別れようって言うんだけど、佐伯さん「わたし、別れないから!」

親にも学校にもバレて、行き場を無くした春日くんが「仲村さん、向こう側へ一緒に来てくれない?」「おめぇが私についてくるんだよ!」

自転車で山の向こう側を目指してたんだけど、雨が降ってきたんで、雨宿りしてたら、
そこにふたりを探しに、佐伯さんが来た。春日くんを仲村さんから取り返そうとする佐伯さん、すでに相当メンタルやられてるのが、ヒシヒシと伝わってきました。

その後、どんどん仲村さんへの依存度を深めていく春日くんを、もう一度、自分の方を向かせようとする中、ふたりの秘密基地を発見。クラスの女子、佐伯さん以外全員のパンツを盗んだ春日くんが、それを中に吊している、川辺の秘密基地。

椅子に座ると「まだ温かい。許せない」
このセリフも、静かな言い方に、怨念のような怒りがにじんでました。




3


最初は、友人の亜衣ちゃんと一緒に春日くんと仲村さんの悪行を観察してたんだけど、
あまりの酷さに、亜衣ちゃんは「もう、私、無理! なんで春日なの?!あいつ、ただの変態だよ、犯罪者だよ!」

「亜衣ちゃんに何が分かる?!」

この絶叫、胸に刺さって、涙が。「何が分かるの?」「何が分かるのよ?!」じゃなくて、
「何が分かる?!」。短い言葉で相手を否定する疑問形。これも、上手いなぁと感じました。
このセリフ回し。

どうして?!どうして、仲村さんなの?どうして、私のパンツだけ盗らなかったの?

(春日くんは、「それが一番ひどいことだから」、あえて佐伯さんのパンツだけ盗らなかった。その狙いが当たり、精神崩壊の佐伯さん)

ついに佐伯さんは、春日くんを電話で秘密基地に呼び出し、

「春日くん、私とセックスしよ!」と服を脱ぎながら迫りました。
このときの服装が、白いブラウスのボタンを一番上まで留めた「清楚ルック」なのが、ね。


しかし、春日くんに拒否され、感情がヒートアップ。
そこに佐伯さんも来て、女子ふたりのバトルになります。

仲村さんは、あくまでもクールに、佐伯さんを見下す言葉を浴びせると、
仲村さんに殴りかかり(叩く、という感じかな)

「からっぽな人間に殴られた気分はどう?!」

仲村さんは反論せず、逆に佐伯さんを抱きしめました「やぁ~~~」

魂をぶつけるような芝居に、何度も涙が出た。
読んだことない漫画が原作で、その世界観に入り込めるか、観劇前、少し不安だったのが、全くの杞憂になったのは、間違いなく、秋月成美さんの演技力が大きいです。


親に外出禁止を言い渡され、家を出られない春日くんに会いに佐伯さんがやってきます。
黒のちょーミニのワンピ。

ここでも、春日くんは仲村さんを肯定し(遠くを見てる)、佐伯さんを否定(近くしか見てない)。

春日くんにとって、佐伯さんはマリアでなくなり、仲村さんが神になってる。
その春日くんの目を覚まさせようと「仲村さん、私に抱き着いたとき、震えてたよ。だって、仲村さんも。ただのお(んなの子)・・」

この言葉を言わせまいと、佐伯さんの口を押さえて、ベットに押し倒す春日くん。


そこで、佐伯さんが言った一言が


「不幸にするのは、私だけにしたら?」


凄みがある、ドスの効いた声。後から、秋月成美さんが、まだ19歳と知って、
またしても、ビックリ。次は、2度目の舞台になるのか、テレビドラマになるのか、
あっ、映画が秋に公開されるんだ。もっと演技を観てみたいと思わせてくれました。

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秋月成美さん、今後が楽しみな女優さんです。

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