働き方改革法案~最大の焦点“高プロ制度”の行方~ | 渾沌から湧きあがるもの

 

 

議論白熱! 働き方改革法案~最大の焦点“高プロ制度”の行方~

http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4138/

 

 

国会で与野党による攻防が繰り広げられている「働き方改革関連法案」。

労基法や労働契約法など8本の法案で構成され、時間外労働に対する罰則付きの上限規制や、同一労働同一賃金の実現にむけた施策などが盛り込まれている。

その中で最大の焦点となっているのが、労働規制を緩和する新たな仕組み「高度プロフェッショ

ナル制度」だ。高収入の一部専門職を対象に働いた時間では管理せず、導入されれば残業や休日出勤をしても割増賃金は支払われなくなる。

厚生労働省は、高度な知識を持ち自分で働く時間を調整できる人は労働時間に縛られず柔軟に働くことができると説明。一方、野党側は、長時間労働が助長され、健康確保が十分できないと主張。激しい攻防が続いている。

 

労働時間を管理しない労働者を作るという日本で前例のないこの制度で、私たちの働き方はどう変わるのか、そして働き方改革はどうあるべきか、議論する。

 

 

  • 竹中平蔵さん (東洋大学教授)
  • 上西充子さん (法政大学教授)
  • 吉田浩一郎さん (クラウドワークス社長 新経済連盟 理事)
  • 棗一郎さん (日本労働弁護団 幹事長)
  • 武田真一・鎌倉千秋 (キャスター)

 

 

◆議論白熱!働き方法案 あなたの仕事に影響は?

 

社会の関心を集めるニュースが相次ぐ中、私たちの働き方を大きく変えうる議論が進んでいます。

与野党の攻防が続く「働き方改革関連法案」。その大きな柱は、長時間労働を是正するため残業

時間に上限を設ける規制。正規・非正規の格差を是正する同一労働同一賃金。中でも意見が大

きく対立しているのが、「高度プロフェッショナル制度」。これは、年収の高い人たちを労働時間の規制から外すというものです。

 

安倍首相
「仕事で成果を上げて収入を上げていきたいという人もいる。議論をして成立していただきたい。」

 

これに対し、野党は反発を強めています。

 

立憲民主党 枝野代表
「1日何時間働こうと関係ない、こんな制度を導入してしまったらどうなるか。」

 

法案は、明日(31日)にも衆議院本会議で採決が見込まれています。一体何が論点なのか?働

き方にどんな影響があるのか?意見の異なる立場の人たちが大激論。徹底的に掘り下げます!

 

 

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◆議論白熱!働き方法案 “高プロ制度”是か非か?

 

鎌倉:

働き方改革関連法案、最大の焦点は、「高度プロフェッショナル制度」の導入です。

対象として想定しているのは、年収1,075万円以上の証券アナリストや医薬品開発研究者など、高度な専門的知識を持つ人で、これらの人たちを労働時間の規制から外し、多様で柔軟な働き方を認めるとしています。これまでの管理職や、編集者やデザイナーなどに適用される裁量労働制と比較しますと、このようになっているんです。

 

 

時間外労働の割増賃金や、一定時間ごとに休憩を取るという規定もなく、さらに、管理職にも認められている深夜の割増賃金も出ません。

 

労働時間の規制を全面的に外すというところが、最も大きな方針転換だと思いますが、まずはこの制度、どう評価されているのか、基本的な立場からお伺いしていきます。

まず、賛成の立場の竹中さん。

 

 

竹中さん:

この背景には、世界の経済社会の非常に大きな流れがあると思います。そこから生まれていると

いう背景をちゃんと理解することが重要だと思うんですね。かつての伝統的な工場労働みたいに、1時間長く働けば、その分、生産が増えるというような仕事ではなくて、今、私たちが直面している仕事のいくつかは、やっぱりもっともっと柔軟に、時間ではなくて成果で、その労働の質で認められなければいけないものだと思うんですね。だからそういうものを認めていくということは、日本は私は避けられないと思います。

 

 

吉田さん:

私の仕事、経済を使って日本を活性化するということから考えますと、今、これから少子高齢化というテーマ、竹中さんが今、世界のお話をされましたけれども、日本も少子高齢化の中で、さらにイノベーションを起こして、経済を活性化していかないといけない。そういう意味では、この高度プロフェッショナル制度というのは、その1つのイノベーションの切り口になるんじゃないかなというふうに考えてます。

 

 

上西さん:

これは労働基準法の改正なので、労働者が労働法の保護の外に放り出されるという制度だと考え

てます。ですので、反対です。これは「使用者にこうさせてはならない」という規定を外してしまうので、使用者の規制が外れる、使用者に対する縛りが外れるという基本的なところを理解していただきたいなと思ってます。

 

 

棗さん:

この高度プロフェッショナル制度の法律的な意味での本質というのは、専門業務型の「ホワイトカラーエグゼンプション」なんですね。つまり、労働基準法の時間規制をすべて外すという制度でありまして、どういうことになるかというと、法定労働時間制を適用しない、週休もない、休憩もない、それから残業代の割り増しもない。ということになると、使用者は24時間年中無休のコンビニエンスストアと同じように、労働者に対して「長く働け」と言うことができるという、そういう極めて危険な制度なので、断固反対ですね、私は。

 

 

鎌倉:

では、具体的なテーマに沿って、議論を進めていきたいと思います。高度プロフェッショナル制度、その論点は?

まずは「多様で柔軟な働き方」か、それとも「長時間労働の助長」かです。高度プロフェッショナル制度が適用されるとどう変わるのか、こちらのイラストで見てみましょう。

 

 

まず、国や経済界が期待する働き方のモデルケースです。

例えば、証券アナリストのAさんです。働き方を時間で制限されていましたが、高プロが始まると、仕事をやりたいときにやって、休みたいときに休めるようになります。その結果、意欲が上がって、生産性もアップするとしています。


一方、野党や労働界などが懸念しているのが、研究員のBさんのモデルケースです。

時間で仕事を管理されていましたが、高プロ制度が入ると、仕事が際限なく増えて、残業代も出ずに、休みもなし。その結果、健康を害してしまうとしているんです。

 

視聴者からはこんな声が寄せられています。

 

40代 男性
“高い才能や、能力のある人材が自由に時間を自己管理しながら効率的に仕事を進められる。

何が問題なのか。”

 

50代 女性
“結果が出るまで働くのもよいが、行きすぎはだめ。やはり規制は必要。人間はロボットではあ

りません。”

 

 

多様で柔軟な働き方につながるのか、あるいは長時間労働の助長になるのか、いかがでしょうか?

 

 

上西さん:

「多様で柔軟な働き方」というのは、間違ったうたい文句だと思うんですね。先ほどのように労働時間の規制というのは、使用者を縛るものなので、それを外してしまうということは、柔軟な「働かせ方」ができる。働く人からすると、労働時間の自由になるわけではなくて、「この時間働け」というような命令については残ります。ですので、柔軟な働き方ができるものではない。むしろ裁量労働制よりも、厳しい働き方になると考えています。

 

 

竹中さん:

今までの議論の中で、ものすごく大事なことが全く抜けてるんですね。「全ての規制を外す」という議論が横行していますけれども、そうではなくて、すごく厳しい規制が課されるんです。

これは「最低これだけ休みを取りなさい」と、休みを規制するんです。休みを強制するんです。

だから、休みを強制して、その休み以外の時間については自由にしなさいということですから、全く何も規制のないところに放り出されるとか、それはやっぱり非常に誤解を招くと思います。

これは使用者にとっても、例えば年間104日、休日を取れと、これはほとんど完全週休2日制ですよ。それで4週間で、必ず4日取れというのも、ものすごく厳しい、要するに休日を取れという規制もしているわけで、そこのやはりバランスを見ないと、議論は誤ると思います。

 

 

鎌倉:

健康確保対策についても書かれていまして、法案では働かせすぎを防止するために、保護する規定も明記されています。4週間で4日以上、かつ年間104日の休日確保を義務化。加えて、こちらの4つの項目のうち、労使がいずれか1つを選んで実施するとしています。また制度の適用には本人の同意が必要で、その後、離脱することも可能です。

 

 

という制度になっているんですけれども、いかがでしょうか?

 

 

棗さん:

この健康確保措置ですけれども、極めて不十分ですね。これで労働者の健康が守れるかというの

は、保証はないと思います。つまり、4週4日休ませなければいけないということなんですけども、4週28日ですね、4日間固めて休ませれば、あとは24時間24日働けという業務命令も合法になりますので、ブラック企業なんかがそれを利用しないとも限らないですし、この健康確保措置の4つのいずれかを選べということなんですが、企業にとってはどれが一番簡単かというと「健康診断」ですよ。ほぼこれを選ぶと思いますので、健康診断を選んで、じゃあ医者の診断に従うのかと、従わなきゃいけないというふうなことも、どこにも書いてありませんので、極めて不十分ですね。

 

 

企業側の対応が鍵となるともいえると思うんですが、いかがですか?

 

吉田さん:

そういう意味では、これはここに書いてあるとおり、「本人同意が必要です」と、別に強制されるわけじゃなくて、こういった優秀層の人が主体的に自分の意思で同意をしたときに適用される。しかも適用したあとに、自分の意思でやめることも可能、ほかの働き方を選ぶことも可能なわけなので、あくまで選択肢を増やす活動にしかすぎない。

そういった人たちが、どんどん自分の成果を出したいというときには、これを選べると。だから非常に機動的な制度なんじゃないかなというふうに考えています。

 

 

鎌倉:

この高度プロフェッショナル制度について、家族を過労で亡くした遺族らは、国に対して強い懸念を示しています。

 

全国過労死を考える家族の会 寺西笑子代表
「(高度プロフェッショナル制度は)『定額働かせ放題』。過労死になってしまえば、責任も

取れないひどい状態になってしまう。これ以上、過労死を増やさないでください。死人を

増やさないでください。悲しい遺族をつくらないでください。」

 

 

鎌倉:

一方、政府は次のように説明しています。

 

 

加藤厚生労働相
「私どもとしては、高度プロフェッショナル制度の必要性、どういう要件があって健康確保措

として考えてやっているのか、しっかりとご説明してご理解いただけるよう努力したい。」

 

 

企業に休日の確保を規制するものだと、あるいは本人の同意が必要なので、これは必ずしも強制

されるものじゃないというご意見でしたが、いかがですか?

 

 

上西さん:

選択肢というふうにいわれるんですけれども、やはり企業がこれを入れたいと、同意をしてくれというふうに求められたときには、なかなか断るということは難しいと思いますので、自発的に選べる、あるいは自発的に外れることができるという制度ではないと考えてます。

 

 

竹中さん:

それは基本的には、この高プロだけではなくて、いろいろなものについて、当然のことながら、雇う人間と雇われる人間というのは立場がやっぱり違いますから、それは雇う立場のほうが強いわけですよ。

だから労働者の権利を守らなければいけなくて、だからこそ団結権なども認められているわけです。でもそれがちゃんとやられてるかどうかというのは、これは執行の問題で、執行はちゃんとしなければいけない、労働基準監督をちゃんとしなければいけないわけで、棗さんもさっき「不十分だ」とおっしゃった。

これについて、さらに議論することは私は必要だと思うんですけれども、高プロ制度そのものを否定してはいけないと思うんですね。こういうプロフェッショナル制度を認めましょう、これはちゃんと実行していって、労働者に不利にならないような形の労働基準監督をしていきましょうと。おっしゃっているのは、私は執行の問題だと思うんですね。

 

 

上西さん:

いえ、制度の問題ですね。これは労働者にとって利点は何もないので、使用者にとって使いやすくなる制度です。

 

 

竹中さん:

もし利点がなければ、選ばなければいいわけですから。チョイスはあるわけですよね。

 

 

棗さん:

断れないでしょう、それは。

 

 

吉田さん:

年収の1,075万円というのは、全体の年収分布からすると、上位の3~6%といわれている層なんですよね。

 

 

上西さん:

実績ではないですから。

 

 

吉田さん:

それはそうなんですけれども、過去のデータから見ると、そういった上位層の年収の人たちが、じゃあ主体性がないのかというと、恐らく上西先生は自分の意思でいろいろ働いていると思うんですけど、そういった方が選べる制度でもあると。

 

 

竹中さん:

プロフェッショナルですから、会社に対してそれなりの交渉力がある人だけを対象にしている、極めて限定的な制度だと私は思いますけどね。

 

 

上西さん:

「交渉力」とよくいわれるんですけど、中身がないんですね。結局、仕事の量についても交渉力はないし、時間配分についても使用者の指揮命令を受けるし、じゃあ、やめればいいかというと、同じようなこういうところが、すべて高度プロフェッショナル制度になると、ほかに行ったって同じですから、そういう意味で交渉力という言葉は、言葉だけだと思います。

 

 

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