繁殖のために渡って来る夏鳥はとても繊細なため、撮影しようとする時には十分に気を遣い、自然に圧を掛けないようにしなければなりません。

 

自分の行為のせいで巣が放棄されたり、巣の存在を捕食者に知らしめて雛が食べられたりしても、責任のとりようがないからです。

 

これが撮り鉄だと、つい先ごろラストランを行った伯備線の381系やくもがよい例ですが、線路内に立ち入ったり、周辺に生えている木を無断で伐ったりすると、それは犯罪になるのでニュースに取り上げられ衆人から非難を浴びたりします。

 

けれども相手が物の言えない鳥の場合、自称バーダーが巣のすぐ下までやって来て、ハイドもなしに三脚を立てた挙句、長時間粘っても『恥を知れ!』とは言わないし、夕方のニュースで報じられて赤っ恥をかくことこともないので、無法地帯のようになっているフィールドはあちこちにあるのです。

 

目は口ほどにものを言うと言いますが、繁殖行動中の夏鳥を撮った写真のほとんどが、被写体となった鳥の目を見ると、皆『恥を知れ!』と怒っているか、もしくは何となく諦観しているような物悲しい光を帯びているように見えます。

 

これまでそんなパパラッチ的な写真をいっぱい撮ってきました。

 


6年前に撮影した「寂しい目をしたアカショウビン」。

 

このとき、この子は手前側にある巣で待っている雛 or 雌に、捕まえたカエルを届けようとしていたのですが、巣の先に彼の飛び出しを撮ろうと待ち構えてるawakinを含む10台超の大砲レンズの反射光に怯えて、5分以上同じ枝に留まり、飛び立つのを躊躇していたのです。(場所は山科鳥類研究所の研究者がその実態を生で見て、日本一マナーの悪い探鳥地だと失笑したという臥龍山)

 

このときにビデオ撮影を任せていた家内殿が『アカショウビンがかわいそう。』とぽつり、この言葉を聞いて以来アカショウビンを撮影するため大砲レンズの放列に加わることがなくなり、鳴き声を聴くだけで満足できるようになりました。

 


少し前に撮影したサンコウチョウ

 

鳥の撮影時に立入禁止の札が掛かっているロープを跨いだり、私有地に立ち入る、あるいは開園前の公園やキャンプ場に忍び込むといったルール違反は一切やらないawakinですが、自分ごととしての決め事を定めていて、それは鳥見、鳥撮影は公道、公園内などの遊歩道、広場から、山中であれば登山道から見える範囲でのみ行い周囲の藪や林の中には入りこまないようにしています。

 

写真のサンコウチョウは、ヤイロチョウ(かもしれない鳥さん)が盛んに鳴いている林道に停めた車内で鳴き声を録音していたときに、たまたま目の前の枝先に停まってくれた子で、運よく蛾を捕まえたのをそのままパクッと食べてくれました。

 

このような幸運は滅多にありませんが、むこうの方から目の前に現れ出てくれたときには、迷わずにレンズを向けるようにしています。

 

効率とかいう人たちからすると非効率かもしれませんが、自然になるたけ圧を加えたくないと思うようになったawakinは、こんな感じで末永く彼らとつき合っていきたいと思うところです。