『なくなるやあ。それだけはやめてほしい。のう。』

 

これは今月20日(土)にテレビ朝日系列で放映された、テレメンタリー2024「きょうも0人~芸備線 無人駅の守りびと~」の中でJR芸備線小奴可駅近くに住む老婆が発した魂の叫びです。

 

awakinの住む広島県内ではすでに宇品線、可部線の一部区間、そして三江線が廃止されておりますが、次の鉄路消滅区間として芸備線の庄原備中神代間にJRが白羽の矢を立てたことから、その存廃を協議する再構築協議会が1か月前に開かれたのです。

 

鉄路が廃止になると沿線の地域は衰退していきやがては消滅してしまう。これは50年前の国鉄時代に4000㎞あった営業距離が、今では2500㎞を切っている北海道の現状を見れば明らかです。

 

今の北海道には草ぼうぼうの荒地と茂るに任せた密林の中に消えていく錆びついたレールの周囲に人家はなく、コンクリートの塊があることから、かつてその場所にホームがあったと辛うじてわかるに過ぎない光景があちこちに広がっているのです。

 

奇しくも同じ土曜日の夕刻に、NHKが新プロジェクトXで「約束の春 ~三陸鉄道 復旧への苦闘~」を放映したのは、廃止検討がされるローカル線と巨額の税金を投じて国が復旧させた第三セクター路線を対比した大いなる皮肉であったでしょうか。

 

『線路でありますとか、その他関係する設備を維持・修繕に関する固定的な経費というものが多く必要となってくる(のを維持するのは)収入の少ない区間では厳しい状況』(JR西日本中国統括本部広島支社長の言)と、儲からない事業はやっとられんとハッキリいう民間企業。

 

かたや運営が地公体主体の第三セクターとは言え、鉄路の90%が東日本大震災による地震と津波とで壊れてしまったのを『3年後の子どもたちの入学式に間に合わせるため』との美談に仕立てて92億円の税金を支出し復旧させた国。

 

これは国家の面子をかけたプロジェクトと言うよりも、むしろ原発で大きな事故を引き起こした責任と批判を回避するために弄した策略だったのでは?と思ってしまうのは、やはり疑い深いawakinの根性が曲がっているせいでしょうか。

 

いずれにしても広島県を第二の北海道にするべく、まずは芸備線、その次は残りの芸備線と木次線というように廃止対象が広がり、その度に沿線地域が衰微していくのが目に見えるようで、こんな負の流れに抗う術はないものかと思うところです。

 


芸備線と木次線が交わる備後落合駅の転車台(2018.10.27 撮影)

 

放置され、錆びついているように見えますが、三次駅にあったものは2016年に東武鉄道に譲渡されているので、現在では広島県内に唯一残っている転車台になります。

 

この転車台、かつて当地に広島から旅して来た松本清張さんや宮本常一さんを乗せた蒸気機関車が向きを変えるのに使用された転車台であり、駅のすぐ近くには彼ら文化人が宿泊した旧大原旅館も当時のままの姿を留めているので、もう少しきれいにして鉄道公園として整備すれば人を呼べるようになるかも?と思ったりしますが、備後落合駅は列車が行き来する現役の駅ですから、現状法律などいろいろな制約があるのかもしれません。

 

備後落合駅に停車する「おろち号」(2023.10.30 撮影)

 

昨年11月23日に運行終了となったおろち号、今月初めに訪ねたJR米子駅で職員の方に伺うと、見えている客車はすでに解体されたそうで、壊すくらいなら今は無人駅でもかつては百人を超える職員たちが働き、広くてスペースが十分にあるように見える当駅で保存、留置すればよかったのにと思ってしまうのは素人の戯言でしょうか。

 


米子駅構内に留置されているDE10 1161・元おろち号(2024.4.6 撮影)

 

このままこの場所で朽ち果てていきいずれは解体されてしまうのか、気になるところですが、この車両、芸備線に人を呼び込む手段のひとつにならないかと思うところです。