著:松尾 スズキ
去年、奥田英朗の原作で映画化された「イン・ザ・プール」では初主演、そして演出家、映画監督としてもマルチな活躍を精力的に展開中。今作品は第134回芥川龍之介賞候補になるなど作家としても一流の人物である。
物語は精神病の閉鎖病棟を舞台にして繰り広げられます。入院当初の精神錯誤した状態から徐々に正常な思考を取り戻していく様を見せる表現力はすばらしいです。異常な世界を的確に表現して描き、かつ品の良い作風に仕上げている点はお見事。これは作家一筋ではきっと書けない作風でしょうね。マルチな才能=多様な視点を持つ著者だからかこそ書けるんでしょうね。読者に伝えたい言葉とどの表現なら相手の心に響くのかを、僅か138ページで完璧にやってのけています。
満足度
★★★★★★★★★★