宇田 明の『もう少しだけ言います』

宇田 明の『もう少しだけ言います』

宇田 明が『ウダウダ言います』、『まだまだ言います』に引き続き、花産業のお役に立つ情報を『もう少しだけ』発信します。

母の日、お疲れ様でした。
盛り上がりましたでしょうか。
売行きは、さまざまな方から、おいおい報告されるでしょう。
楽しみにしています。

愚ブログは、かわり映えしません。
5年ごとの総務省全国家計構造調査から、花の岩盤購買層の人物像を探ってきました。
すべてのデータが示しているのは、花は高齢者に支えられているという現実です。
それは、これまでの経験知でわかっていたこと。

もうひとつ、毎年調査の総務省家計調査と合わせたデータが指し示しているのは、現在の50歳代(団塊ジュニア世代)は、これまでの50歳代と異なり、「花を飾り、供え、贈る」という伝統文化・習慣を継承していない、ということです。


2026年4月5日「切り花の購入額に影響するのは「年齢」か「世代」か?」
https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12962011317.html


その現在の50歳代が、60歳代、70歳代になる10年後、20年後の花産業は一体どうなっているのでしょうか。

今回のお題は、花の消費のキーパーソンである50歳代の「人物像」を深掘りします。


2000年の50歳代は花の岩盤購買層だった
図1は、2000年(緑)と2025年(ピンク)の年代別切り花購入額の比較。
2000年の切り花購入額のピークは60歳代。
その両サイドを50歳代と70歳代が固めていました。
50歳代は、70歳代とほぼおなじ購入額。
このことから、2000年には、50歳代は60歳代、70歳代と肩を並べて、岩盤購買層であったことがわかります。

 


図1 2000年と2025年の年代別切り花購入額の比較(
 総務省家計調査 二人以上世帯)

 

2025年には50歳代が岩盤購買層から脱落
それが2025年になると、70歳代がピークになり、年齢が若いほど購入額が少なくなっています。
50歳代は見る影もありません。
60歳代、70歳代とは大きな差がついてしまいました。
50歳代はもはや岩盤購買層ではなくなったのです。

また、おなじ高齢者で、2000年には最大の購入額だった60歳代は、70歳代に逆転され、トップの座を奪われてしまいました。
それは、60歳代にも花を飾る伝統文化・習慣を継承していない層が増えはじめていることを示唆しています。


加齢効果が崩壊
2025年切り花購入額を2000年対比減少率で示したのが図2。
50歳代と60歳代の間に大きな崖があることがわかります。
50歳以下の2025年切り花購入額は、2000年対比で、いずれも60%以上の減。
それに対して、

60歳代は39%減、70歳代は21%減で踏みとどまっています。

 


図2 2025年年代別切り花購入額の2000年対比(総務省家計調査 二人以上世帯)

 

これは、50歳代以下と60歳代以上では、切り花の購買行動が明らかに異なっていることを示しています。


50歳代以下は、高齢者になると自然に花を買うようになる「加齢効果」を継承していない「新人類」ということができます。
50歳代以下の「加齢効果」の崩壊です。
現在の50歳代が、最初の「花を買わない高齢者」です。


切り花購入額減少の要因は50歳代が花を買わなくなったこと
図2は年代別の減少率でしたが、図3は実際に減った購入額。
減少率はおなじ60%でも、もとの購入額がちがうので、実際の減少した購入額は、50歳代がきわめて大きいことがわかります。

 

50歳代の2000年の購入額14,422円が2025年には5,679円に、8,743円も減りました。
この50歳代の減少額は、2000年の20歳代と30歳代をあわせた金額に相当します。
50歳代の減少額だけで、20歳代、30歳代の購入額を食いつぶしたのです。



図3 2025年年代別切り花購入額の2000年対比減少額(総務省家計調査 二人以上世帯)

 

このように、切り花購入額が減った最大の要因は、50歳代が花を買わなくなったことです。

団塊の世代と団塊ジュニア世代はなにがちがうのか?
親世代の団塊の世代(現在の70歳以上)は、「花が普通に家にあった」最後の世代。
・仏壇に花を供える
・神棚に榊を供える
・台所の厄神さんに松を供える
・床の間に花を飾る
・来客時に花を活ける
・季節ごとに花を替える


一方、

団塊ジュニア世代(現在の50歳代)は、「花がなくても困らない」最初の世代
・核家族化
・洋風化
・共働き化
・多忙化
家庭に花が入る余地が少ない。

花がなくても困らない団塊ジュニア世代は、60歳、70歳になっても花を買うようにはならないでしょう。

「加齢効果」の崩壊です。

団塊ジュニア世代に花を買ってもらうには?
花産業にとって、きわめて深刻な課題。
それでも、50歳代に花をもっと買ってもらい、60歳代、70歳代になったときには岩盤購買層でなければ、日本の花産業は消滅してしまうでしょう。

これは、花屋だけではなく、生産・流通・小売が一体となって緊急に取り組むべき活動。
まずは、現状の「物日依存」を花産業はどうするのか?


物日依存か脱却か?
①物日の伝統文化の意義・必要性を啓もう
仏壇がない家庭環境。
彼岸・お盆、法事とは無縁の生活。
そんな世代に、従来通りの伝統文化の必要性を訴えても、団塊ジュニア世代の心には響かないでしょう。
また、花産業にはそのパワーが不足。


それなら、ちょっとずらした墓参り、供養のスタイルの提案。
母の日参り、GWに墓参り、月命日の花飾り・・。

②物日・仏花依存からの脱却
50歳代は、子供が独立し、「空の巣(からのす)症候群」がはじまる年代。

空の巣症候群:子どもの自立(進学、就職、結婚)に伴い、親が強い喪失感、孤独感、虚無感を感じ、心身の不調(抑うつ、不眠、疲労感など)をきたす状態

今までは眼中になかった「花の癒し効果」が心に刺さるようになる年代。
自分のため、夫婦二人のために飾る花の需要拡大に大きなチャンス。

どちらにしても花産業にとっては困難な課題。
しかし、手をこまねいていては、「上り50年・下り30年・残された時間は20年」が現実化し、20年後には花産業が消滅してしまいます。

 

宇田明の『もう少しだけ言います』(No.531. 2026.5.10)

2015年以前のブログはhttp://ameblo.jp/udaakiraでご覧頂けでます。

農業協同組合新聞のweb版(JAcom)に、

コラム「花づくりの現場から」を連載しています。
https://www.jacom.or.jp/column/