宇田 明の『もう少しだけ言います』

宇田 明の『もう少しだけ言います』

宇田 明が『ウダウダ言います』、『まだまだ言います』に引き続き、花産業のお役に立つ情報を『もう少しだけ』発信します。

愚ブログでは、これまで花が売れなくなったことを、政府の統計データから論じてきました。

わざわざ政府統計を見なくても、生産者・市場・小売の売上から花が売れていないことは明々白々ですが・・。


読者のみなさまには、暗いはなしは、もうウンザリとお察しします。
暗いはなしのその先には、ほんのりと希望が見えてきます。

日本では、20世紀末以降、花の消費が減りつづけています。


これは日本だけの現象か、それとも世界の国々でもおなじように花の消費が減っているのでしょうか?

国際的な統計の問題点は、国により調査方法、対象などが異なることです。
そうであるにしても、毎年発行される「国際花き統計年鑑」(以下、AIPH統計)はもっとも信頼性が高い第一級の統計データです。

 


 

国際花き統計年鑑:「International Statistics Flowers and Plants」(略称「AIPH統計」)
国際園芸生産者協会(International Association of Horticultural Producers 略称AIPH)と、国際花き貿易協会(Union Fleurs)が、毎年共同発行。
AIPHは、世界の園芸博覧会を認定・監督する機関でもあります。

1990年の大阪花博、来年の横浜花博はAIPHの承認を得た博覧会。
本部は英国にあり、国際花き統計年鑑(AIPH統計)の編集は、ドイツ ホーヘンハイム大学が担当。

もともと戦略物質でも食料品でもない「花」の生産・消費などを継続的に、科学的に統計をとっている国は多くありません。
日本は、統計法という法律に基づき、政府が花の消費額などを調査している数少ない国です。

AIPH統計では、国により人口が大きく異なりますので、国民一人当たりの花の消費額を毎年公表しています(金額の単位はユーロ)。

図1は、AIPH統計における2023年の先進国の花の消費額。
花の消費額:日本の総務省家計調査と同様に、切り花(葉もの・枝ものなどを含む)、園芸植物(鉢もの・苗ものなど)、園芸用品(プランター、園芸肥料、農薬、培養土、スコップなど)を包含した消費額。



図1 切り花・鉢もの・園芸関連商品等の一人当たり消費額(ユーロ)

  International Statistics Flowers and Plants2024

 

ダントツ1位は米国で、202ユーロ。
2位はスイスで、143ユーロ。
3位はデンマークで、116ユーロ。
2023年のデータには登場していませんが、北欧のスウェーデン、フィンランドなどの国々もこのあたりに入ります。

 

以下、英国が110ユーロ、
ドイツが103ユーロ、
フランスが69ユーロ、
イタリアが43ユーロ。
そして、やっと日本で34ユーロです。
日本は先進国の最低クラス。

日本の34ユーロは、調査時の為替、1ユーロ=152円で換算されています。
そうすると、AIPH統計では、34ユーロ×152円=5,168円、すなわち日本の国民一人当たり5,162円を消費したことになります。
日本全体では、約6,500億円。


AIPH統計の正確性・妥当性はともかくとして、日本の花の消費額は、先進国最低クラスであることにはまちがいがないでしょう。

では、AIPH統計では、過去の日本の消費額はどうだったのでしょうか?


図1に2010年の消費額(濃ピンク)を加えました(図2)。

 


図2 2010年と2023年の切り花・鉢もの・園芸関連商品等の一人当たり消費額(ユーロ)

  International Statistics Flowers and Plants2011・2024

 

米国の2010年の消費額は74ユーロでしたから、2023年には202ユーロに大きく増えたことになります。

日本は、2010年には61ユーロもありました。
2010年には、フランスの51ユーロ、イタリアの46ユーロより多く、
英国の72ユーロに匹敵するほどの消費があったのです。

2023年の消費額を2010年と対比したのが図3。

 


図3 2023年の切り花・鉢もの・園芸関連商品等の一人当たり消費額(ユーロ)を2010年と比較

  International Statistics Flowers and Plants2011・2024

 

米国の伸びが著しく173%増。
英国は53%増。
フランスは35%増。
ドイツは1%増。


イタリアは7%減。
日本は最大の減少で44%減。

日本の44%減には、円安も大きく影響しています。
2010年は1ユーロ=116円。
2023年は1ユーロ=152円

2026年の現在は、1ユーロ=185円ぐらい。


もとの円で比較すると27%減と、すこし減少幅が小さくなります。
しかし、円安を考慮しても、日本の一人負けといっても過言ではありません。

2010年から2023年にかけて、日本とほかの先進国でなにが違ったのでしょうか?

代表的な指標が「一人当たりGDP」。
2010年、日本の名目GDP(一人当たり)は44,968ドルで、英国、ドイツ、フランス、イタリアを上回っていました(表)。
それが、2023年には33,834ドル。
先進国最下位。
2023年の名目GDP(一人当たり)の2010年対比は、日本だけがマイナスで25%減。



 

一人当たりGDP(表)の増減と花の消費額の増減(図3)が相似であることが明白。


日本は先進国で唯一、名目GDP(一人当たり)が減少。
つまり、日本国民は相対的に貧しくなった。

 

その原因については、識者、学者、コメンテイターなどにより言い尽くされています。
・賃金の停滞
・可処分所得の伸び悩み
・中間層の縮小・・

花産業から見ると、まさに「花より団子」に逆戻りした日本。

とはいえ、

日本の経済力・文化の高さからすると、花の消費額34ユーロという低額は定位置とは言えません。
英国の110ユーロ、ドイツの103ユーロと肩を並べるほどの消費額があって当然。

そうなっていないのは、花産業の怠慢。
過去の「稽古花」、「葬儀の花」、「春秋の彼岸・お盆・新春」などの物日にあぐらをかき、新しい需要創出を怠ってきた。

まず、

日本には、英国、ドイツ、フランス並みの大きな花の潜在需要があることを、再認識しましょう。
それを取りもどす活動をしないと、日本の花の消費は発展途上国なみになってしまいます。

活動の先頭に立つのは花屋さんです。
花屋さんの活動を支えるのが、市場と生産者の役割です。

 

宇田明の『もう少しだけ言います』(No.535. 2026.6.7)

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