宇田 明の『まだまだ言います』

宇田 明の『まだまだ言います』

宇田 明が『ウダウダ言います』に引き続き、花産業のお役に立つ情報を『まだまだ』発信します。

今回のお題は、

もうすこし花屋さんの生産性を深ぼりします。
これまで述べてきた「芋ずる式消費拡大法」は、
「花の消費拡大→家庭消費拡大→シニアをリピーター→接客+よい品をお手頃価格」でした。
この図式では、「お手頃価格」がネックです。
お手頃価格で家庭用の花を提供し、シニアにリピーターになってもらうためには、花屋さんの経営改善が不可欠。


図1 どうすれば花の消費が拡大するのか?を考える「芋づる式チャート」

 

花屋さんの経営は

ブラックボックス的ですが、公的データにロス率があります。
専門店は11.7%、

スーパーは6.2%、

ホームセンターは15.4%。
(調査数が少ないのであくまで参考値)


図1 切り花販売小売店の業態別ロス率

   平成21年度花き産業の流通コストに関する調査(農水省委託事業)

 

ロス率と店頭での滞留日数は表裏一体。
ロス率を下げようとすると、滞留日数が長くなり、お客さまの元での日持ちが短くなる。
その結果、
「花が売れない→滞留日数の増加→鮮度・日持ちの低下→顧客満足度低下→リピーターが減る→花が売れない」という負の連鎖。


図2 花店の負の連鎖

 

負の連鎖を断ち切るには?

 

ひとつは、

花屋さんの技術力向上。
これについては、次回、私論、暴論を展開します。

もうひとつは、

花屋さんの生産性向上。
具体的には従業者一人当たりの販売額を伸ばす。

 


図3 農林水産物小売業の従業者数(右目盛り)および従業者一人当たり年間販売額(左目盛り)

   (商業統計2014年)

 

花屋さんの従業者一人当たり年間販売額は567万円。
年間商品販売額は4,200億円、従業者数は7.4万人。

(従業者とは、個人業主、無給家族従業者、有給役員、常用雇用者の計で、臨時雇用者は含まない)

(年間販売額、従業者数、事業所数は、公的統計データにより違っている。今回は経済産業省商業統計2014年のデータである)


肉屋(食肉)は1,327万円、

八百屋(野菜)は1,321万円、

果物屋(果実)は996万円、

魚屋(鮮魚)は983万円。
花屋は、農業関係小売業では最低。
農業関係小売業そのものが低い。

トップの肉屋でさえ、小売業平均の1,590万円に及ばない。
参考までに、「自動販売機による小売業(飲料、たばこ、雑誌などの自動販売機)」は3,013万円。
小売業平均の2倍。
昭和末に、通産省(当時)のお役人は第三次産業の生産性の低さに業を煮やし、小売業の無言化・無人化を目指した。
まさに無言(おしゃべりする販売機もあるが)・無人・無店舗の自動販売機は、小売業としての生産性が高いことを証明している。


花屋さんの従業者一人当たり販売額567万円で、

粗利率が60%だから、粗利は340万円。
ここから仕入原価以外の販売経費を引いていくと、従業者の賃金はいくらも残らない。

参考までに、花いちばの従業者一人当たりの販売額は1億円ほどで、粗利率は9%。


なぜ、

花屋さんの生産性(従業者一人当たり販売額)は、農林水産物小売業(肉屋、八百屋、果物屋、魚屋)で最低なのか?


それは、

八百屋さんなどは小売専業ですが、

花屋さんは製造小売業だからです。


花屋さんは、

年間商品販売額4,200億円を得るために、7.4万人も従業者がいます。
製造を伴わない小売専業の八百屋さんは5.6万人で、7,400億円を販売しています。
八百屋さんは

花屋さんより25%少ない従業者で、1.8倍の販売額があります。


肉屋さんは4.0万人で4,000億円、

魚屋さんは5.9万人で5,800億円、

果物屋さんは1.2万人で1,200億円です。

いずれも花屋さんより少ない従業者で、多くを販売しています。


販売する商品を自ら製造すると仕入コストを抑えられそうです。
しかし、

生産性が低い手作業が多いと、

製造に人手をとられるので、一人当たりの販売額は低くなります。

このことは、

菓子(和菓子、ケーキ、せんべいなど)、パン、惣菜等の小売専業と製造小売との従業者一人当たりの販売額を比較することで、よくわかります(図4)。

図4 小売業(製造なし)と製造小売業(製造あり)との従業者一人当たり販売額比較

   商業統計2014年

 

自ら製造して小売りする製造小売業では、

小売専業より、

菓子では約50%、

パンでは約30%、

一人当たり販売額が少なくなります。
惣菜等
(惣菜等の小売専業は、便宜的に肉、野菜、鮮魚の平均販売額とした)でもおなじで、約50%減です。
現在、

製造小売の和菓子、ケーキ、パンなどがブームですが、従業者一人当たりの販売額は、小売専業よりすくないことを商業統計は示しています)

花屋さんでは、

仕入れた切り花は素材であり、完成品ではありません。
店主、店員が、

くくり、花束にし、アレンジして商品になります。
いずれも生産性が低い手作業です。
これを省力化、合理化しないと花屋さんの経営は向上しません。
量販店の、

買い取りの置き花は小売専業で、商業統計のデータはありませんが、一人当たり販売額は専門店よりかなり大きいはず。
オーダーメードをメインとする専門店であっても、量販店の高い生産性を参考にすべきです。
量販店との差別化は、

すこしの高級感と対面販売による接客技術で、じゅうぶんできます。

もっと生産性が低いのが、店主による仕入れ。
月水金の週3日、仕入のための時間が生産性を大きく下げています。
Web販売、注文、予約相対、在宅ゼリ、仲卸などを活用して、セリにかける時間を節約することで生産性が向上します。

 

宇田明の『まだまだ言います』」(No.184 2019.7.21)


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