耳にタコでしょうが、国内の切り花生産が減りつづけています。
輸入業者は、減った国内生産を補うために、輸入切り花が増えたと言ってきましたが、いまでは輸入も頭打ち(図1)。
輸入切り花は、2010年までは順調に増えていましたが、その後は年間13億本ほど(中国産サカキ・ヒサカキを含む)で張りついたままです。
国産:農林水産統計 輸入:植物検疫統計
輸入切り花の伸び悩みは、輸出国の事情に加えて、円安、運賃の上昇などの国際経済が影響しています。
しかし、直接的な要因は、日本の需要減、すなわち花のマーケットの縮小です。
輸入業者は無理をしてまで数量を増やしません。
数量を増やしても、需要がないので、市場にあふれ、暴落することが目に見えているからです。
トータルの輸入切り花は頭打ちですが、国別にみると、違う景色が見えてきます。
毎年、繰り返し紹介しているように、中国一強・中国依存が一層鮮明になっています。
2024年11月10日「切り花輸入は中国一強に(?)」
https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12874413282.html
2024年11月17日「切り花輸入中国依存のデリスキング(リスク低減)」
https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12874897825.html
今回のお題は、2025年の輸入切り花を、中国を軸に深掘りします。
切り花輸入国は、コロナ前までは、中国、コロンビア、マレーシアが3強でした(図2)。
コロナ前の2018年の切り花輸入量は、中国とコロンビアが各2.8億本、マレーシアが2.6億本で、3国が拮抗。
コロナ禍後に明暗がわかれました。
中国は急増、コロンビアは現状維持、マレーシアは急減。
2025年には、中国が4.1億本、コロンビアが2.5億本、マレーシアが1.7億本。
3強の差が開きました。
さらに、3強を猛追するベトナム。
ついに、マレーシアを追い抜き1.8億本。
植物検疫統計
その4国の2025年の輸入量を前年と比べると、図3のようになります。
急増の中国は5.5%増、ベトナムは8.4%増。
マレーシアは1.8%減。
コロナ禍の2020年に23%減と急減しましたが、2022年以降はなんとか踏みとどまっています。
コロンビアも0.4%増で現状維持を続けています。
日本は生産量の推定値
棒グラフの上の数字は、実際の輸入数量の増減(単位は百万本)。
中国は2,200万本増、ベトナムは1,400万本増。
この2国だけで3,600万本増えています。
2025年の輸入切り花全体では、前年より2.4%増で3,100万本増。
したがって、2025年の輸入がすこし増えたのは、中国とベトナムが増えたからです。
参考のために、日本の切り花生産量の増減を示しました。
前年比4.6%減で、数量では1億3,100万本減(いずれも推定値)。
輸入データは植物防疫所から、ほぼリアルタイムで公表されますが、国内生産データは半年遅れて公表ですから現時点では愚ブログの推定値。
国内生産は1.31億本減っているのに、輸入が補えたのは3,100万本だけ。
差し引き、2025年は前年より切り花マーケットが1億本縮小したことになります。
国内流通量が1億本減っても、需給は均衡せず、平均単価は下がっています(図4)。

図4 切り花(葉もの・枝ものは含まない)の入荷量と平均単価の推移
東京都中央卸売市場花き部年報
東京都中央卸売市場6卸の切り花(葉もの・枝ものは含まない)平均単価は2024年の84円が2025年には82円。
2.5%減。
入荷量は2.7%減。
入荷減の単価安。
巨大なマーケットをもつ東京6卸ですから平均単価2.5%減で納まりました。
マーケットが小さい地方市場はもっと厳しいことはご承知の通り。
生産者にとっては、どこまで続くぬかるみぞ。
市場にとっても、入荷減の単価安。
しかも、地方ほど厳しい入荷減と単価安。
かといって、花屋が暴利をむさぼっているわけでもありません。
花屋の廃業が相次いでいます。
その結果、花のマーケットの真空地帯が地方各地に出現しています。
花屋の廃業は、「花がなくても困らない」消費者のますますの増加をもたらしています。
中国1強・中国依存が鮮明になってきた背景には、花束加工の増加があります。
何度も取り上げたように、中国産完成仏花・パック花の加工品の急増です(図5)。
植物検疫統計
中国で、中国産の切り花を花束に組み、コンテナで海上輸送されてきます。
このパック花が2025年は1億1,700万本。
もちろん、このパック花は中国からの切り花輸入数量4.1億本に含まれています。
したがって、中国からの品目別輸入数量は、カーネーションが1.2億本、キクが1.0億本、パック花が1.2億本。
この上位3品目だけで3.4億本あり、中国からの輸入の8割を超えます。
さらに、サカキ・ヒサカキがあります。
植物検疫統計では、サカキは3.6億本、ヒサカキは2.8億本、あわせて6.4億本。
農林水産省花き振興室では、サカキ・ヒサカキについては植物検疫統計の生の数字ではなく、20で割った数字を使っています。
そうすると、サカキ・ヒサカキは3,200万束(本)。
先の3品目と合わせると3.7億本。
中国からの輸入は、カーネーション、キク、パック花、サカキ・ヒサカキで9割になります。
パック花には、カーネーション、キクが含まれていますので、中国産カーネーション、キクは植物検疫統計の数字よりさらに多くが流通していることになります。
中国産切り花単体の増加は、花屋や加工業者には歓迎されても、国内生産者には経営圧迫の元凶です。
一方、
中国産加工品、すなわち完成仏花・パック花等の増加は、前回紹介したスーパー20,000店、ホームセンター4,000店の巨大な花売場に仏花・パック花を供給している国内花束加工業者の存在基盤を失わせます。
2026年6月14日「花屋は減っているが、それ以外に巨大な販売網が維持されている」
https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12969486545.html
それは、中国から下草やキク、カーネーションを輸入し、国内で花束加工するよりも、中国で加工したパック花を輸入するほうが、コストが安いからです。
当面、大手スーパーは、輸入業者から中国産パック花を仕入れるでしょうが、そのうちに直接輸入するようになるでしょう。
そうすると、国内の加工業者は顧客を失うことになります。
このような中国依存はますます高まることが予想されます。
その根拠は、昨年述べました。
2025年6月15日「切り花の中国依存が高まる根拠」
https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12909802790.html
2025年6月8日「切り花の国内生産がこのまま減りつづけると、ますます中国依存が高まる」
https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12908854874.html
中国依存は、もはや切り花だけの話ではありません。
生産、加工、販売まで含めた日本の花産業全体が、静かに中国依存を深めています。
コストだけを追い続けた先にあるのは、国内産地の消滅と加工機能の喪失です。
一度失った産地や加工業者は簡単には戻りません。
中国依存のリスクを減らす最も確実な方法は、国内生産と国内加工の基盤を守ることです。
国内生産の維持・回復は、行政と地元市場との協働が必須。
AIの時代に逆行するようですが、
国の縛りが緩い自己責任の花産業は、行政、花屋、市場、農協、生産者などの「個人の熱意プラスα」で動かすことが可能です。
宇田明の『もう少しだけ言います』(No.537. 2026.6.21)
2015年以前のブログは(http://ameblo.jp/udaakira)でご覧頂けでます。
農業協同組合新聞のweb版(JAcom)に、
コラム「花づくりの現場から」を連載しています。
https://www.jacom.or.jp/column/






