泡姫物語2*ソープ嬢の恋* -4ページ目

第2話 /第二章「コイビト」②

そんな、誤魔化しあいの日々の中で。


突然・・・・


ソレは起こった。




夏のボーナス時期を過ぎると、


お店も少し落ち着いてくる。


もちろん、客足も遠のくのだが、


まだギリギリ「新人」でいられたアタシには、


さほどのダメージはなかった。




毎月、生理が近くなると、


精神バランスが崩れたり。


体調が悪くなる。




その日も、


今日を、どうにかやり過ごせばお休みだ。


と、自分を奮い立たせて、


お腹に鈍い痛みを抱えながら出勤した。




午前0時に、お客様を送り出し、


今日は終わりかな?とフロントの様子を伺うと、




「ごめん。モモカちゃん。もう1人いい?」




と店長がすまなそうに言う。



今から、お客さんについたら、


1時を過ぎる。


明日お休みのカズが、今日は泊まりに来ているはずだ。



断ろうかと、思ったが・・・




「はい。大丈夫です。」




口から出たのは違う言葉だった・・・





こんな時間に客につきたくないだの。



もう帰りたいだの・・・・




そんな文句は、言える立場じゃない。



お客様をつけてくれるだけ、


ありがたいと思わなくちゃ・・・・



アタシは、そう自分に言い聞かせた。




この時間の客は、たいてい性質が悪い。


酔っている人が大半だ。


それなりに覚悟して、お客様をお迎えする。




「こんばんわぁ。」




階段の上から、お客様を見下ろすと。



どうやら、酔ってはいなそうだったが、



小太りの、秋葉系で・・・



こんな時間には、珍しいタイプのお客様だった。




「お部屋こちらになります~」




と、手をつなぐと、



突然その人が、



アタシのスカートの中に手を入れてきた。





「もう。我慢できないよ~」





やっぱり・・・めんどくさい客だ・・・・






「ここじゃ恥ずかしいから、お部屋入ろう♪」






つとめて明るく・・・




明るく・・・






「ちぇ~っ。わかりましたぁ。」






嫌な予感がする・・・・






部屋に入り、




「お風呂溜めてきますね~」




と浴室のほうへ行こうとするアタシを、



その人が引き止める。




「お風呂いいよ~すぐしようよ~」




そして、そのまま押し倒された。





吉原では、


『即即』と呼ばれるサービスがあるということは、


なんとなく知っていた。




お風呂に入らず、そのままプレイするのだ。




でも、ここではそういうサービスはない。





少なくとも・・・



アタシはやれない・・・






ベルトを外し、



ズボンのチャックを下げ、



トランクスから大きくなったアレを出す。



アタシの太ももにソレを、こすりつけ、



片手でパンティーをずらした。





「あの・・・お風呂・・・」





と言いかけたアタシの口を、



ソイツの唇が塞ぐ。




全体重をかけられているせいで、



身動きがとれない。





マズイ・・・ヤられる・・・





接客には、もうだいぶ慣れたと思っていた。




どんな客でも、こなせるようになったと思ってた。






マズイ・・・どうしよう・・・・






ヤメテクダサイ・・・





塞がれた口では。




それは声にはならなかった・・・・





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第2話 /第二章「コイビト」①

カズと付き合い始めて、1年が経過しようとしていた。


シゴトのことについては、何も話すことはできないし。


「ヘルスで働いている」と、彼を騙し続けていたけれど。



休日。


モモカでいなくていいときに、カズが側にいてくれるだけで、


心は安らいだ。




それだけで十分だと思っていたのに、



今回、あみちゃんとのことで、動揺していたアタシは。



この事件の一部始終を、カズに話してしまった。




TVを見ながら、アタシの話を聞いていたカズ。




「結局、風俗でできた友達って、


ちゃんとした友達にはなれないのかな・・・・」




というアタシに・・・




「あー無理なんじゃない?」




と適当に、答える。




「何でだろうね・・・」




ともう一度問いかける。





そして、カズはこう言い放った・・・




「風俗嬢なんて、そんなもんなんじゃないの?」




と・・・・






風俗嬢なんて・・・・



か・・・・





TVに夢中で、アタシの変化に気づかない彼・・・・




「お風呂入ってくる。」




と言って、アタシは、その場を離れた・・・・





風俗嬢なんだよ。



アタシも・・・



風俗嬢なの・・・・





彼から、発せられた言葉が妙に切ない・・・





気持ちが通わない。




気持ちが通いあっていない。





確信に触れる会話を避けているのだから、


当然のこと・・・




それでもいいから、



そばにいて欲しい・・・・




また1人になるのは





怖い・・・・・





怖すぎる・・・・・・







「好きなんだもん。どうしようもないじゃない。」






あみちゃんの言葉が、



心に突き刺さっていた。





アタシが、カズに対して抱いている感情は。



卓巳へのそれとは、程遠い。





カズが好きじゃないのか?





いや・・・そうじゃない。





でも分からない。





ただ・・・




1人になるのが怖いから・・・・




カズを利用しているだけなんじゃ・・・・・






ガチャ





浴室のドアが開き、




「何してんの?」




と、カズが顔を出す。




シャワーも出さず、


裸のまま突っ立っているアタシを、


不思議そうに見つめていた。




「あ・・うん。なんでもない。TV終わったの?」





色んなことがあったから。



疲れてるんだ。



妙なことを考えちゃいけない。




アタシはカズのことが好き。



アタシは、カズと付き合ってるんだ。




シャワーを出して、



頭からかぶる。




あとから入ってきたカズに、



後ろから、抱きしめられる。





休みの日まで、


SEXしたくないのにな・・・・





そんな気持ちになるのも・・・



疲れているからだと・・・・



そう思うことにした。








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第2話 /第一章「トモダチ」

しばらく、そのまま動けなかった。


電話しようかとも思った。



だけど・・・



彼女を説得できる自信は無い・・・・



時間だけが過ぎていく。



「お水、いかがですか?」



店員に話しかけられ、我に返る。



「あ・・・結構です。」






例えば、友達を1人なくそうとも。


借金は減らない。



例えば、ここで感傷に浸っていても。



現実は決して無くならない。




他人に構っている暇はないんだ。





そう・・・思うしかなかった。





そう思わないと、壊れてしまいそうだった・・・・






仕事の時間まで、あと15分。




アタシはお店に電話を入れる。




「モモカです。少し遅れます。」





「ご予約のお客さん入ってるよ~早く来てね。」





アタシは、1人でやっていくんだ・・・



「一生風俗嬢でいるつもり」



なんてないのだから。





出勤時間より、30分遅れて店に着くと、



そこにはもう、指名のお客様が待っていて。



一息つく間もなく、オシゴトが始まった。





何もなかったように振舞うことは。



もう・・・慣れた。




お客様のつまらない冗談に、



大袈裟に反応し、



気を抜くと、折れてしまいそうな心を、



奮い立たせる。






それから、ラストまで4人連続。






最後のお客様を、



「ありがとうございましたぁ。」



と、見送ると、




一気に、全身の力が抜けた・・・





フラフラになりながら、部屋に戻る。





「お疲れ様。疲れたかい?」





そこへ、店長がやってきた。





「お疲れ様です。」





アタシは、思わず元気なふりをする。





「ほい。これ。」





と、紙袋を差し出す店長。





「え・・・?何ですか?」





「あみが、お前に渡してくれってさ。」





「え?」





「さっき来たんだよ。まあ・・・色んなもの返しにね・・・」





「え・・・?」





「ま。そういうことだから。」





と彼は部屋から出て行った。





アタシは、その紙袋を恐る恐る、開ける。







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


モモカちゃんへ



ごめんね。


同じサンダルが、どうしても見つからなくて・・・・


ピンク色、好きって言ってたから・・・


これで許してください。


色々迷惑かけてごめんね。



あみ


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






ピンク色のサンダルに添えられた




手紙・・・・








涙が・・・・






あふれた・・・・・







アタシはすぐに、



彼女に電話をかける。






おかけになった電話番号は電波の届かないところに・・・・






何度かけても、




つながらなかった。







数日後・・・・・






おかけになった電話番号は現在使われておりません。





にアナウンスが切り替わる・・・・








そして、アタシは彼女の本名も。




彼女が住んでいる場所も。




何も知らなかったことに気がついた・・・