ロシアは、トランプに何を見て応援したか?(2021 07 30)

 

ロシアによる、トランプ評価が適切である。 

 

  読売新聞がネット上で、「英紙ガーディアン」の記事を紹介している(2021 07 24)。「ガーディアン」はロシア政府の機密文書を入手して、2016年の米大統領選へのロシアの介入理由について明らかにしている。(この場合の介入とは、共和党の指名候補争いへの介入である。)

 

そのなかで

 

ロシアの安全保障会議は、トランプ政権が発足すれば米大統領の立場が弱まり、米国に『社会的混乱』を生じさせられるとの認識で一致した。また、同会議では、トランプを精神的に不安定と分析し、それ故にロシアにとって最も有望な候補と結論づけた。(太字は(07 24)読売新聞ネット配信より引用)

 

  以上により、プーチン大統領は、トランプを勝たせるための指示を国防省や対米情報局に与えていた。所謂(いわゆる)ロシア疑惑の真相の一部である。

 

  トランプは米国だけでなく、世界も混乱させ、それまでの平和への地道な努力を壊していった。そのため、たくさんの人達が、なくさなくてもよい命を落とした。

 

  ロシアの評価が実に当を得ている。ロシアの利益となるのはアメリカの混乱である。トランプ大統領誕生は喜ばしいことだった。そういえば、安倍サンが退陣するとき、プーチンは(トランプも)安倍サンに「ありがとう」と感謝したことを思い出した。安倍サンは扱いやすく、ありがたい日本の総理だったのだ。

 

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  「英紙ガーディアン」の紹介記事を読んでから、「トランプの反乱」(朝日新聞に園田耕司氏〈ワシントン特派員5回連載(7月11日~16日・1回~5回)を読み返した以下は、そのまとめと感想である。

 

 

  トランプが選挙戦で何をしたか、トランプに賛同する人々はどう動いたか、記憶しておくことは大切だと思った。選挙期間から選挙結果の確定、議事堂襲撃事件までの5回分の記事をまとめてみた。勿論、園田氏の意図とは違うまとめ方になったと思うので、関心のある人は直接「朝日新聞」の記事に当たってほしい。

 

トランプは暴力を容認した。

 

  2020年9月29日の大統領選挙討論会で、トランプは白人至上主義や武装市民グループを非難しないばかりか、「プラウド・ボーイズ、下がって待機せよ。アンティファや左翼に対してだれかがやらなければならない。」と煽った。討論会を見たプラウド・ボーイズは興奮した。団体は16年の大統領選挙戦の最中(さなか)に結成された白人至上主義的主張を持つ極右団体で、会員3万人という。以後、彼らは活動を活発化させ、20年12月には「ブラック・ライブズ・マター」(BLM)の旗を焼いたり、左翼グループと衝突したりで、ワシントン市内への立ち入りが禁止された。

 

トランプはバイデンを上回る票を見つけるように脅した――――

 

  共和党が勢力を持つジョージア州、その選挙実務担当者スターリン(共和党)に、選挙システムを提供しているマネージャーから電話が入る。集計所で働いている若い技術者が家族も含め殺害の脅迫を受けている、というのである。ネットで見ると名指しで殺害の脅迫を受けていた。ジョージア州はバイデンがわずか一万票余の差で勝った州だが、トランプ陣営はバイデン勝利を認めず票の数え直しを主張、3回目の数え直しが行われていた。更に陣営は選挙の「不正」を主張し、激戦州を中心に訴訟を乱発し、選挙結果の確定を阻むため集計作業を停止させようとした。州務長官のラフェンスパーガー(共和党)らは「数字はうそをつかない」と集計を続けたが、彼の家族を初め、州知事、副知事、州政府当局者にも脅迫が届いていた。

  記者会見を開き、スターリンはトランプに対して、脅迫行為は止めさせなければならない、扇動は止めるべきだと訴えた。実はスターリン自身も脅迫されていた。

  トランプは、州務長官のラフェンスパーガーに直接電話し、バイデンを上回る票を見つけるように指示した。拒まれると、「あなたにとって大きなリスクになる」と脅した。

 

  20年9月、バノン(元米大統領主席補佐官)は、選挙後の策を練っていた。それは、選挙は盗まれたという主張をすることだ。選挙敗北後の11月、トランプに「選挙は盗まれている、我々はそれを証明しよう。」と電話し、トランプも賛成する。

 

  11月3日、大統領選挙。同7日 バイデンが勝利を確実にした。11月14日、「不正選挙」キャンペーンを受け、トランプ支持者がワシントンで議事堂に向けて行進した。12月12日にはワシントンで大規模集会を持った。

 

  トランプは、バイゼンが競り勝った激戦の6州を中心に、立て続けに不正選挙の訴訟を起こすが、1勝61敗であった。

 

連邦議会での選挙結果確定を阻止しようとする。

 更に連邦議会議事堂襲撃事件 ――― 

 

  不正選挙の訴えで敗北すると、今度は非難を議会に向ける。トランプによる抗議集会は、選挙結果を確定する両院合同会議の日(1月6日)にぶつけられた。ネット上では陰謀論集団Qアノンや極右集団の暴力を呼びかける投稿が相次ぎ、トランプ支持者が集う掲示板には「武装せよ」などという過激な投稿が相次いだ。会議の議長役のペンス副大統領にも圧力を掛け脅威を与えようとした。議会の選挙結果確定を阻止しようとしたのである。

 

 ◆抗議集会では、デモ隊が議会に行くことを煽る。「死に物狂いで戦え」。

 

  アメリカ憲政史上最悪の米国連邦議会議事堂襲撃事件は2021年1月6日に起った。午後2時過ぎである。暴徒化した支持者はガラスを割り、ドアを破り次々と議会に乱入した。

 共和党の院内総務がトランプに暴徒を止めるように電話で伝えたにもかかわらず、彼はアンティファ(反ファシスト集団)が議事堂に乱入したと主張して暴力を止めなかった。

民主党議員のワイルドは死を覚悟し、息子や娘に「愛している」と電話している。母親の電話から聞こえてくる銃声や叫び声を聞き、息子は「このカオス(混沌)を鎮めてください。」とツイートしている。

国防長官代行は午後3時頃、州兵の出動を命じた。暴徒達にトランプが自宅に帰るよう呼びかけたのは午後4時17分であった。トランプのツイッターでは「偉大なる愛国者たちから神聖な選挙の圧勝が乱暴に引きはがされたことで、このような事態は起きた。この日を永久にわすれるな。」とある。トランプのこの感覚は狂っているとしか思えない。

虚言と暴力で民主主義の象徴的存在の議会が破壊されようとした事件を、世界は忘れてはならない。虚言が暴力を生む。警察官1名を含む5人が死亡し、500人が逮捕された。

 

◆トランプに搦(から)めとられている共和党?  

 

  大統領退任の2月20日、トランプはフロリダ州の邸宅に帰ったが、街頭には1500人の支持者が並んだ。トランプを迎える準備をしたのは、人工中絶に反対するプロライフ活動家ウィリー・グワディオラであった。彼は後に、週1回のペースで支持者を集め、大統領選挙の準備をしている。トランプは次回大統領に出馬の意向である。

 

  世論調査によると、共和党支持者の84%がトランプの言葉を信じている(キニピアック大 2021 5月18日~24日 全米成人1316人の世論調査。アメリカの2億5000万の有権者数を考えると、1316人はあまりに微少であるが、・・・)。そのためか、共和党議員も同調するか沈黙するしかない。共和党にも真実を語る人がいるし勇気ある人がいる。しかし、トランプ批判をすると、自身がトランプにより「追い落とされる」。自分の地位を守るため沈黙か同調する。政治家としての責任放棄により、共和党も弱体化する。

 

  共和党は選挙制度も変えようとしている。社会的に弱者となる貧困層を排除して、多様性を尊重している民主党の票を奪う動きである。

 

  環境に背を向け、人権を軽んじ、多様性を排除し、共存よりも自己中心で押し通そうととする、果たして有限な地球で人々を幸福にするのか?

 

  暴力、脅し、虚言により、人々の心の方向付けをする。そんなペテン師的な指導者にまんまとコントロールされていく人々。彼らはそれに気づいても、気づかないふりをして熱狂する。一人ひとりが自立した集団には見えない。

 

  今、共和党は二大政党の一翼を担う保守でリベラルな党ではない。トランプ支配のナチス的政党になってしまっている。

 

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 選挙が不正に行われたと、ミャンマー「国軍」も主張し、明白な嘘で武力クーデターを正当化し偽装をする。更に、反対する国民を「国軍」は弾圧し虐殺している。権力を奪い取るため、「選挙」にいいがかりを付ける。トランプの手法と同じだ。

 

◆ロシアの予測通り、アメリカは分断され混乱した

 

  トランプ支持者が大多数である限り、共和党およびアメリカの分断傾向は続く。彼らは反知性、反エリート、反既得権だという。反エリート、反既得権の二つまでは同意できる。しかし、反知性とは何を表すのか。他人を尊重することからも人権からも目を背け、民主主義と縁を切ってしまった支持者たちは、トランプを正当に評価できない。すでに宗教的信仰の域にいる。彼らは、議論や思索によって変わることはない。だからこそ恐ろしく思う。

 

 米国の人権意識の高まりの中で、彼らはいつも放置された気持ちを内包し、自らを異端と感じていたのかも知れない。それが堂々と差別を表現し、自分たちと同じ感性を持った大統領が現れた。自己の内なる闇をすくい上げてくれる救済者が現れた。集団的熱狂が、更に彼らを駆り立てる。

 

 トランプ支持者が、自己や時代と向きあわない限り、アメリカの分断や混迷は続き、まさにロシアのプーチンの思うままになるだろう。ロシアにとって「有望な」存在は、尚トランプなのだろう。

 

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 話し合う気持ちのない相手とどう話すか?次の言葉に迷うのである。(2021 07 30)

 

 

   

 (右がヤーコン。収穫は晩秋らしい)        (ヤーコンに花が咲いたと思ったら ゴーヤの蔓が延びて花をさかせていた)