ちょうど隧道の半ば辺り、パイプ椅子がいくつか並べられ小さな舞台には数十名のコーラス隊がスポットライトを浴び演目を披露していた。
「ボーカルのいないアカペラのコーラスね。いいリズムの曲だわ」
すみれは席に座り披露する曲に酔いしれた。
「あぁ~、この曲懐かしいわぁ~。でも中途半端に古いからタイトルが思い出せないぃ」
沙織は目をつぶり必死に思い出そうとしている。
「私の方こそ全然思い出されないのよ。適切な表現をする際に良い言葉がパッと出てこないくらい気持ち悪い感覚なのよっ!」
翠は難しく分かりづらい例えを出した。
「ただ単にボキャブラリィがないだけじゃん」
沙織は一言翠に言い放って曲のコーラスに集中しタイトルを探っている。
「この曲が流れていた頃の記憶を遡って思い出してみればいいじゃない」
すみれは沙織にいいヒントを与えた。
「そういえばこれは四人でUFOを呼び出して交信をしようと儀式の最中に持ってきたラジカセがおかしくなって、雑音とともにラジオ放送が流れ込んでそこで掛かってきた曲よ!」
沙織の記憶がひとコマずつ呼び起こす様に段々と鮮明になってきた。
「そうよ、あれは此処に来る前日の夜だったわ。此処に来る旅費を抑えようとUFOを呼び出して乗せてもらおうと思っていたのよ!」
翠の記憶も徐々によみがえってきた。
「なんと姑息な考えね」
すみれは唖然となった。
「それでわたし達は輪になり真ん中にラジカセを置いて最初は順調にカセットテープの曲を流して交信していたの」
「商店街の怪しげな骨董品屋で魅力的な存在を感じて買ったのよね」
沙織の記憶と一緒に翠の記憶も合わさってきた。
「すると急にノイズが入ってどこかのラジオ番組が紛れ込んできたの。えぇ~とっ、確かあれは・・、コウライ・・チンチン・・」
「もうその名前は出さんでいいっ!」
沙織の記憶を翠が遮った。
「そして見上げるとまばゆい光に包まれて・・」
「そこから記憶が無いのよね・・」
ようやく二人の記憶が一致した。
「それはUFOに連れ拐われたのよ!そして此処に来た。それで旅費が浮いたのも確かだわ。ようやく答えが出たじゃない!」
すみれは安心したのか誇らかな顔になった。沙織と翠もホッと落ち着き和やかで睦まじいムードになった頃、既にミニコンサートは終了しており、舞台が片付けられていた。
「結局、思い出そうとしていた曲は何だったのかしら?」
沙織は“まっいいかっ”となった。
また忽然と片付けられた舞台の奥から長く伸びるレンガ造りの外装がまだ続いていた。
「まだこの隧道、先があるわよっ!」
翠は前のめりで覗き込んだ。
「最後まで行ってみたぁ~い!」
沙織もまだ奥に繋がるその先が気になってしゃぁない。
「これから先は応募して抽選に当たらなければ進めないわ」
すみれが説明モードに入った。
「どうやって応募するのよ」
翠は興味津々だ。
「Webで応募ができるわ。そして抽選に当たれば11月10日の土木の日にこれから先に進めるって事よ」
そう言いながらすみれはポケットからスマホを取り出した。
「Webって何よ!それにそれは何よっ!」
沙織は驚きが隠せない。
「Web知らないの?インターネットは?スマホは?」
すみれの方こそ驚いている。
「知らないわよ」
沙織はポカーンとなった。
「LINEは、SNSにXは、はたまたAIは?」
すみれは連呼した。
「知らなぁーい」
沙織と翠が声を合わせて言った。
「そんな言葉初めて聞くわよ」
翠がツンケンとした顔になった。
「あなた達ほんと何処から来たの?」
すみれは呆れた顔になった。・・・つづく

