嵐のような一日を終え、ほんの束の間の自分だけの時間を手に入れることができたとき、テレビや音楽、スマホの画面はおろか、一杯のコーヒーを飲むための真っ白なマグカップですら目に痛い夜がある。
そんな夜にふさわしいコーヒーマグは何だろうか。
アメリカンビンテージのコーヒーマグといえば、ファイヤーキングの翡翠色のジェダイシリーズが人気であるが、個人的には朝日の燦々と差し込む朝の目覚めの一杯にはよく似合うが、疲れた夜に口にするほろ苦い一杯にはいささか不釣り合いであると感じる。
ナッシュビルのはずれにあるアンティークモールの片隅に、ぽつんと置かれていたHall Pottery社のアボカドグリーンのマグカップである。決して美しい色ではない、どちらかというとどんよりとした、鈍重なグリーンである。漆黒のコーヒーを縁まで注ぐと、まさにアボカドの皮と中身が逆転したような印象を受ける。しかし、そのビビッドではない、のらりくらりとしたグリーンが何とも心地よい。
まさに古き良き時代のアメリカの陶磁器産業を支えたHall Potteryは、20世紀初頭に創業し、21世紀を迎える前に廃業してしまった。
わずか8ドルの値札がつけられていたマグカップは、実に50年もの年月を経て、その独特の緑色を獲得したのであろう。

