佐野元春「月と専制君主」 | 人生をアートで埋める

佐野元春「月と専制君主」

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佐野元春のセルフカバーアルバム『月と専制君主』を聴いた。デビュー30周年を記念した制作されたアルバムだ。
セルフカバーアルバムを作る、というアナウンスがあった時にはあまり期待していなかったのだが、収録曲が公表された時には驚いた。安易なヒット曲集といったものではなく、アルバムの中でも地味だったり、ライブでもあまり取り上げられない曲が多かったからだ。実際聴いてみて、それはとても満足できる内容だった。結論を言ってしまえば、様々な音楽的趣向を凝らした、とても素晴らしいアルバムだ。
中でも個人的に良かったのは、「C'mon」という曲。アルバム『Stones and Eggs』(1999)に収録されている曲で、その時から好きな曲だったが、アレンジがガラッと変わり、ダン・ヒックスを思わせるアコースティック・スウィング調になっていてかなりクールでかっこいい。また、「君がいなければ」という曲も元々大好きな曲で、これがカバーされたこともうれしい。佐野元春のヴォーカルは、近年喉の調子の悪さが指摘されている。高音が出ない、声量がない、といったことだが、そのヴォーカルも新たな魅力を感じさせるものになったのではないか。ぼくは今の佐野元春の歌声が好きだ。
表題曲である「月と専制君主」も良かった。この曲は全然好きな曲ではなくほとんど聴き返すことがなかった。LOVE PSYCHEDELICOが参加した「彼女が自由に踊るとき」や、トム・ウェイツみたいなアレンジになった「クエスチョンズ」もそうだ。アルバム全体にアコースティックな雰囲気が漂い、アナログ的な柔らかな温かさがある。とても優しい、聴き心地のいいアルバムだ。

30周年ということでメディアに登場する機会も多くなった。雑誌でも特集が組まれたりしている。音楽雑誌「ミュージックマガジン」は10年以上ぼくが購読している雑誌だ(その姉妹誌「レコードコレクターズ」も)。佐野元春へのインタビューがよかった。
「別冊カドカワ」では、様々なミュージシャン達からのコメントが載っていて興味深い。杉真理と伊藤銀次、堂島孝平による佐野元春を巡る鼎談もあった。「佐野元春への30の質問」というページでは「佐野さんが今思うつまらない大人とは?」という質問に、「愚痴を言ったり、当人のいないところで悪口を言ったり、『しょうがないや』と諦めたり、愛すべき人をちゃんと愛さなかったり、そういう人ですね。」と回答していた。肝に銘じよう、と思う。

昨日はフジテレビ系の「ミュージックフェア」というテレビ番組に出演し、レミオロメンと共演していた。そういえば20周年の時にも同番組に出演し、その時はエルヴィス・コステロと共演していたな、と懐かしく思い出した。レミオロメンとは「約束の橋」と「ヤングブラッズ」を歌ったのだが、早く新曲が聴きたい、と痛切に思う。新曲で勝負する佐野元春が早く観たい。