BOXのライブを見て、人生を振り返る | 人生をアートで埋める

BOXのライブを見て、人生を振り返る

1990年4月、ぼくは高校一年生だった。テレビのコマーシャルで流れるある曲が気になっていた。コンタクトレンズのコマーシャル、画面の右下に「Song by 杉真理」とあった。それが「杉真理」という名前との出会いだった。同じ時期に、杉真理が松尾清憲と組んだバンド、BOXの曲「Journey To Your Heart」をラジオ番組で偶然耳にした。とてもいい曲だと思い、きちんと聴いてみたいと思った。近所のレンタルCDショップに行き、そこで見つけた杉真理のソロアルバム『Ladies&Gentlemen』とBOXの『BOX POPS』をとりあえず借りてきて、ぼくは家で聴いた。『Ladies&Gentlemen』からは「歴史はいつ作られる」という曲、『BOX POPS』では一曲目の「Temptation Girl」という曲に衝撃を受ける。なんてかっこいい曲なんだろう、という感動だった。それはぼくにとって、本当の意味でのポップスとの出会いだったと今のぼくは振り返る。メロディーと歌詞が胸に沁みこんで、気持ちよく、この曲が永遠に続いてほしい、というような至福の時間を味わった。以来、杉真理と松尾清憲という二人のシンガーソングライターとの付き合いが始まる。

2009年8月14日、東京は表参道のライブハウスでBOXのライブがあった。ぼくは仕事で東京に来ており、そのライブを見ることができた。
実は今年の1月も渋谷で彼らのライブを見た。その時も仕事で東京にいた。名古屋ではなかなか見れない彼らのライブを1年に2回も見れるというのはとてもラッキーだった。
もともとビートルズを代表とするブリティッシュポップを自身の音楽に昇華させていた杉真理と松尾清憲という二人のソングライターが出会い、意気投合し、思いっきりビートルズっぽい音楽をやってみようというコンセプトで結成されたのが、BOXというバンドだ。1988年に『BOX POPS』を、1990年には『Journey To Your Heart』という2枚の傑作アルバムを発表した。以後、企画もののオムニバスアルバムなどへの参加はあったものの、アルバムはこの2枚しか出していない。このアルバムをぼくは何度聴いたことだろう。今でも聴いている。そして、すべての楽曲の歌詞はもちろん、すべての音を正確に頭の中で再現する自信すらある。特に『BOX POPS』は、杉真理、松尾清憲二人の数多くのソロアルバムよりも、そして彼らが影響を受けたビートルズのどのアルバムよりも、ぼくにとっては最高のアルバムなのだ。

今回のライブもとてもよかった。会場は満員。若い人も多い。1曲目から新曲を初披露するあたり、本当にたまらない。彼らは決してビートルズのパロディバンドではない。彼らのすごいところはビートルズを下敷きにし、新たにまったくのオリジナリティをもって日本語のロックとして成立させている点だ。英語と日本語が入り混じった歌詞というのは、日本のポップスの中では当たり前だが、ぼくは彼らの歌詞こそがその最高峰だと思っている。
「Temptation Girl」も当然披露された。もてないダメな男がある魅惑的な女性に恋をする。決してその恋はうまくいかない。でも最後に「だけどいつか ものにしてみせる」と歌われる。この曲はぼくにとって、あらゆる思想の基盤となっている。大袈裟に言ってるのではない。この曲はぼくが世界で一番愛している歌だ。
ライブは楽しいMCとともに進む。杉真理も松尾清憲も本当に仲がいい。このコンビは最強だ。過去の曲をやっていても未来を感じさせるライブだった。どうにか3枚目のアルバムを作ってほしいものだ。

ぼくが杉真理を知るきっかけになったコンタクトレンズのコマーシャルに使われた曲は「Rainbow in your Eyes」という曲で、これはBOXのアルバムにも入っている。ライブでもこの曲が演奏され、ぼくはいろんなことを考えた。高校一年生の頃から随分と遠くに歩いてきた。でも何も変わっていないような気もする。

まだぼくは何もやっていないじゃないか、と思った。ぼくは何も始めていない、と。ぼくはこれからも「Tenptation Girl」を聴くだろう。この素敵な3分間のポップス。このマジックにぼくはこれからも癒され、鼓舞され、支えられるだろう。何かに向けて、だけどいつかものにしてみせる、といつまでも呟くだろう。

このブログを見ている人がいたら、ぜひ、この曲を聴いてみてください。

http://www.youtube.com/watch?v=VYP0jxKWyIQ