柳沢きみおの漫画を読む
最近発売された柳沢きみおの新刊数冊を立て続けに買って読んだ。
『特命係長只野仁ファイナル』1~3巻・『夜に蠢く』1巻(グリーンアロー出版)、『特命女子アナ並野容子』1~2巻・『市民ポリス69』全2巻(ぶんか社)という内容だ。
柳沢きみおは、1970年代にそのキャリアをスタートさせ、『月とスッポン』『すくらんぶるエッグ』といった青春コメディーともいうべき作品で人気漫画家となり、70年代後半には『翔んだカップル』で大ヒットをとばした。この作品はいわゆる少年漫画における「ラブコメ」と呼ばれるジャンルの先駆的な作品とされている。その後青年誌でも活躍し、『愛人』『男の自画像』『妻をめとらば』『形式結婚』など多くのヒット作を生み出し現在にいたっている。
柳沢きみおについてよく話題になるのは、内容よりもその作品数、仕事量の多さ、同時期の連載本数の多さだ。かつては「少年マガジン」「少年チャンピオン」「少年キング」と少年週刊誌3本同時連載や、「ビッグコミックスピリッツ」「漫画アクション」というライバル誌に同時に連載したり、近年でも「週刊現代」「週刊実話」「週刊アサヒ芸能」という中高年向け週刊誌3誌に同時連載をしている。つねに連載を3~5本抱える漫画家として有名なのだ。
ぼくは中学生の頃から彼の漫画を読み続けている。それは青年誌を中心に地味ではあるが傑作を連発していた頃だった。『俺にはオレの唄がある』『未望人』『俺にもくれ』『寝物語』『流行唄』…など、今でも大好きな作品が多い。簡単に言ってしまえば、サラリーマンの悲哀や孤独、仕事や家庭のストレスに苦しむ中年男の生態をリアルに描く作品が多いのだが、最終的には希望を見出していく内容で、ぼくは様々なことを彼の漫画から学んだ。
さて近年、彼の『特命係長只野仁』という作品がヒットしテレビドラマにもなった。ぼくもこの作品を昔(10年ぐらい前ではないか?)から読んでおり、単行本もすべて持っているが、まさかこの作品が彼の代表作の一つになるとは連載当初は予想もしていなかった。高橋克典主演のドラマの方は今年は映画にもなるようだし、人気があるのだろうが、ぼくは全く観ていないのでよくわからない。
ここ数年の彼の漫画に関しては明らかにパワーダウンしている。絵が手抜きで、漫画としてのレベルはかなり低い。それは今回買った新刊すべてに言えることだ。『只野仁』はマンネリだし、『特命女子アナ並野容子』は『只野仁』の焼き回しに過ぎない。『夜に蠢く』は「週刊実話」に連載された作品がようやく単行本化されたものだが、連載中から行き当たりばったりの展開で半分呆れながら読んでいたものだ(それでも面白かったが)。唯一『市民ポリス69』には往年の柳沢きみおらしい中年サラリーマンの悲哀が絶妙に描かれていて、若い愛人との関係など、彼のかつての作品(『スーパーレディ』など)を彷彿させるものがあったが、とにかく絵に魅力が乏しいのだ。ファンとしては残念であるが、それでもやはり他の漫画家にはない魅力がある。それは「生きる」ことを冷徹に見つめ続ける視点だと思う。只野仁はヒーローであるが、そういうキャラクターは実はかなり異色で、彼の漫画には普通の人しか出てこない。弱くて、ずるくて、情けない人間たちだ。彼らの生き様を実にクールに、飾ることなく描き続ける柳沢きみおは希有な漫画家であるし、だからこそぼくは未だに彼の漫画を愛しているのだ。
柳沢きみおは他にも長期のシリーズとなっている『大市民』という作品もあり(様々な雑誌を渡り歩き、現在は「別冊漫画ゴラク」に『大市民日記』というタイトルで連載中)、これは柳沢きみお自身を連想させる小説家の主人公の生活を描いたエッセイ風の漫画だ。キャラクターの動きはほとんどなくひたすら文字がページを埋める漫画だ。手抜きといってしまえば簡単だが、むしろ彼の表現は漫画を超越してしまっていると言っていいだろう。彼がこれからどんな漫画家になっていくのか、ぼくには目が離せないのだ。
『特命係長只野仁ファイナル』1~3巻・『夜に蠢く』1巻(グリーンアロー出版)、『特命女子アナ並野容子』1~2巻・『市民ポリス69』全2巻(ぶんか社)という内容だ。
柳沢きみおは、1970年代にそのキャリアをスタートさせ、『月とスッポン』『すくらんぶるエッグ』といった青春コメディーともいうべき作品で人気漫画家となり、70年代後半には『翔んだカップル』で大ヒットをとばした。この作品はいわゆる少年漫画における「ラブコメ」と呼ばれるジャンルの先駆的な作品とされている。その後青年誌でも活躍し、『愛人』『男の自画像』『妻をめとらば』『形式結婚』など多くのヒット作を生み出し現在にいたっている。
柳沢きみおについてよく話題になるのは、内容よりもその作品数、仕事量の多さ、同時期の連載本数の多さだ。かつては「少年マガジン」「少年チャンピオン」「少年キング」と少年週刊誌3本同時連載や、「ビッグコミックスピリッツ」「漫画アクション」というライバル誌に同時に連載したり、近年でも「週刊現代」「週刊実話」「週刊アサヒ芸能」という中高年向け週刊誌3誌に同時連載をしている。つねに連載を3~5本抱える漫画家として有名なのだ。
ぼくは中学生の頃から彼の漫画を読み続けている。それは青年誌を中心に地味ではあるが傑作を連発していた頃だった。『俺にはオレの唄がある』『未望人』『俺にもくれ』『寝物語』『流行唄』…など、今でも大好きな作品が多い。簡単に言ってしまえば、サラリーマンの悲哀や孤独、仕事や家庭のストレスに苦しむ中年男の生態をリアルに描く作品が多いのだが、最終的には希望を見出していく内容で、ぼくは様々なことを彼の漫画から学んだ。
さて近年、彼の『特命係長只野仁』という作品がヒットしテレビドラマにもなった。ぼくもこの作品を昔(10年ぐらい前ではないか?)から読んでおり、単行本もすべて持っているが、まさかこの作品が彼の代表作の一つになるとは連載当初は予想もしていなかった。高橋克典主演のドラマの方は今年は映画にもなるようだし、人気があるのだろうが、ぼくは全く観ていないのでよくわからない。
ここ数年の彼の漫画に関しては明らかにパワーダウンしている。絵が手抜きで、漫画としてのレベルはかなり低い。それは今回買った新刊すべてに言えることだ。『只野仁』はマンネリだし、『特命女子アナ並野容子』は『只野仁』の焼き回しに過ぎない。『夜に蠢く』は「週刊実話」に連載された作品がようやく単行本化されたものだが、連載中から行き当たりばったりの展開で半分呆れながら読んでいたものだ(それでも面白かったが)。唯一『市民ポリス69』には往年の柳沢きみおらしい中年サラリーマンの悲哀が絶妙に描かれていて、若い愛人との関係など、彼のかつての作品(『スーパーレディ』など)を彷彿させるものがあったが、とにかく絵に魅力が乏しいのだ。ファンとしては残念であるが、それでもやはり他の漫画家にはない魅力がある。それは「生きる」ことを冷徹に見つめ続ける視点だと思う。只野仁はヒーローであるが、そういうキャラクターは実はかなり異色で、彼の漫画には普通の人しか出てこない。弱くて、ずるくて、情けない人間たちだ。彼らの生き様を実にクールに、飾ることなく描き続ける柳沢きみおは希有な漫画家であるし、だからこそぼくは未だに彼の漫画を愛しているのだ。
柳沢きみおは他にも長期のシリーズとなっている『大市民』という作品もあり(様々な雑誌を渡り歩き、現在は「別冊漫画ゴラク」に『大市民日記』というタイトルで連載中)、これは柳沢きみお自身を連想させる小説家の主人公の生活を描いたエッセイ風の漫画だ。キャラクターの動きはほとんどなくひたすら文字がページを埋める漫画だ。手抜きといってしまえば簡単だが、むしろ彼の表現は漫画を超越してしまっていると言っていいだろう。彼がこれからどんな漫画家になっていくのか、ぼくには目が離せないのだ。