かつて、中国四川省でのツアーに同行してくれていた現地の仕事仲間が、今春、
お茶の本を出版した。
実は彼女とは一度も一緒に仕事をする機会がなかった。でも、たまたま同じホテルに
宿泊し、喫茶ルームでお茶して以来、かれこれ10数年来の友人。その後彼女は、大阪の
大学に留学し、博士課程を修了、現在は大阪観光大学の専任講師を務めている。
家が近くなったので、会う機会も多くなり、一時期は、会社の上司と一緒に仕事終わりに
彼女の家におしかけ、中国語の勉強と称した茶話会?を楽しんだりもした。
プライベートのお付き合いにまで発展している共通のお客様からは、その方のご親戚も
含めた食事会に、時々2人してお誘いいただいている。
彼女が生まれ育った四川省は、中国茶の一大産地。(諸説あるが)喫茶文化の起源とも
言われ、お茶には深いかかわりがある土地。最初はなぜお茶?とも思ったけれど、
そんなバックグラウンドを考えたら、大学での研究とは別にお茶を深めたくなる彼女の
行動にも納得だ。
本は字だらけの分厚いもので、しかも少々お高い…。
「現代中国茶文化考」王静著 思文閣出版 5,500円
序章.茶文化研究への視座
1. 茶葉生産と新中国の社会主義建設
2. 「茶文化」の出現と経済建設
3. 台湾茶芸の創出と中国大陸への伝播
4. 茶文化ナショナリズム
5. 茶文化産業
6. 中国茶のソフトパワー
終章.中国茶文化の可能性
という8章から構成、日本人の私が見ても小難しいサブタイトルに、よく頑張ったな~と
感心する反面、「字だらけ」にかなりの拒絶反応。でも、開いてかじり読みしてみたら、
私もお茶が好きだからなのか、興味深い内容が次々と続き、結構読み込んでしまう。
本文中に登場する「喫茶去」とは、先日山ヨガでお邪魔したお店の名前だし、堺創業の
老舗「つぼ市製茶本舗」の「谷本陽蔵」さんの名も出てくる。日本のウーロン茶ブームが
ピンクレディーの発言からスタートしたことや、彼女の口から度々きいていた「蒙頂」や
「杭州」のお茶のことなどなど、しなきゃいけないことがいっぱいあるのに、ついつい読み
ふけってしまう。まったくもって(私には)危険極まりない本(笑)!
日本への旅立ちの日にお母さんが持たせてくれた故郷のお茶を、日本の知人への
手土産として使ってしまい、しばらくお茶のない生活をすることになり、家族も親友も
いなくなってしまったかのような寂しい生活をしたことを、本のあとがきに綴っている
彼女。
お茶の文化が発展した最大の理由がそこなのだろうな。日常、当たり前にあるものの
大切さ。「ただそこにある」ことの意味をお茶が教えてくれる。
そんな思考の糸口を探るような一冊だと思う。