お義母さん、また春が来ました。
満開の桜を見ると、お義母さんが旅立った日のことを思い出します。
森中家とわずかに繋っていたご縁がほどけた、そんな感覚でした。
寂しい気持ちとは別のところで、前を向くよう後押しされるような、重苦しい生活に区切りをつけるよう言い渡されたような…、とにかく、違うレールが用意された気持ちになりました。
普段の生活は、新しく用意されたレールの上を歩いてきたつもりですが、龍一郎さんのことを思わない日はなかったというのも事実です。これからも思い続けると思います。
でも、思い出にしがみついたり、こうでなきゃ、と自分を縛りつけたりはしません。
龍一郎さんが旅立った日に身につけていたハーネスや血のついたザック、落下の衝撃で爪が方々に曲がってしまったアイゼン、もう置いておくのは止めます。桜のように潔く、とはいかないけど、龍一郎さんのいない生活にも慣れました。もう色んなものを近くに置いておくのはよします。