2.シャロットの女心の扉を叩くのは誰

すべての終わるべく終わりに辿り着く水辺、その水辺で倒れる者が最後の力を振りしぼり、水平線を見上げたときに出現する、光輝の島AVALON。闇を引き裂き、砕け散る真夜中の太陽に照らされ、彼岸と此岸には希望の虹が架かっていた。私がこの水辺に辿り着くまでには、長い長い道のりがあった、さてどこから話そうか。・・・そう生まれ故郷の村ウルから始めよう。

その村は森の奥深くにあり、村外れの一軒家にはシャロットという美しい娘が住んでいた。肌は透き通るように白く、瞳はエメラルドグリーンの湖のように神秘的で、ガラス細工のような指で機織りをしていた。村の若者達は次々結婚を申し込んだが、誰の話も聞こうとはしなかった。村一番の金持ちの息子にも、ハンサムでスポーツ万能の青年にも、困りごとや苦情にやさしくアドバイスする、牧師の息子にも耳を貸さなかった。

シャロットには秘密があった。皆が寝静まりシーンと静まり帰った真夜中に、ドンドンと戸を叩く者がいる。その音はシャロットにしか聞こえず、来る日も来る日も続き悩ませた。その音の正体を知るまで、結婚話など聞く耳を持たなかったのだ。心に突き刺さるような音はシャロットを昼なお暗い森の奥へと誘っていた。ある夜、勇気を振り絞り、ドアを開けその音の導く方向へと歩き始めた。

村から3時間位歩いた所に「見返り橋」という丸木橋の架かった小川があり、その橋を渡った者は二度と村へ戻れないという言い伝えがあった。シャロットは振り返り家族と村の思い出に最後の別れを告げ、橋へ足を乗せた。

川を渡り昼夜も解らない暗い森を何日歩いたことだろうか。空腹で意識が朦朧とし、よろめき倒れそうになりながら前を見ると、果樹園が見え、赤いリンゴの木の向こうに城か修道院のような、石造りの建築物が見えた。噴水の奥に石段があり、そこを登った所に大きな木の扉があった。

シャロットの「心の扉」を叩き続けていた音は早鐘のように鳴り、その扉を開けると突然、夜空に太陽が現れたごとく眩しく輝き粉々に散った。その欠片の一つが額に突き刺さり、額から心臓そして全身を貫いた。「ああ~ これが村の長老の言ってた伝説の”新生born again”だな」とつぶやいた。

回廊を進めば白馬の王子が待っているはずである。・・ところが目の前に立っていたのは老婆であった。
「やあ! よく来たねえ、待っていたよ。私はもう歳で機織りを続けることができないんだ。今度はお前が織る番だよ。川を下ると海のように広い河口があり、そこにはキャメロットというお城があってねえ、そこの王子のために織っているんだよ、続きを織っておくれ。このタピストリーを織れるのはお前しかいないんだよ。」

城の外へ出ることは許されず、心の鏡に映る風景を来る日も来る日も織り続けた。

※3.シャロットの女・詩人の魂-1へ続く

すべての終わるべく終わりに辿り着く水辺、その水辺で倒れる者が最後の力を振りしぼり、水平線を見上げたときに出現する、光輝の島AVALON。闇を引き裂き、砕け散る真夜中の太陽に照らされ、彼岸と此岸には希望の虹が架かっていた。私がこの水辺に辿り着くまでには、長い長い道のりがあった、さてどこから話そうか。・・・そう生まれ故郷の村ウルから始めよう。

その村は森の奥深くにあり、村外れの一軒家にはシャロットという美しい娘が住んでいた。肌は透き通るように白く、瞳はエメラルドグリーンの湖のように神秘的で、ガラス細工のような指で機織りをしていた。村の若者達は次々結婚を申し込んだが、誰の話も聞こうとはしなかった。村一番の金持ちの息子にも、ハンサムでスポーツ万能の青年にも、困りごとや苦情にやさしくアドバイスする、牧師の息子にも耳を貸さなかった。

シャロットには秘密があった。皆が寝静まりシーンと静まり帰った真夜中に、ドンドンと戸を叩く者がいる。その音はシャロットにしか聞こえず、来る日も来る日も続き悩ませた。その音の正体を知るまで、結婚話など聞く耳を持たなかったのだ。心に突き刺さるような音はシャロットを昼なお暗い森の奥へと誘っていた。ある夜、勇気を振り絞り、ドアを開けその音の導く方向へと歩き始めた。

村から3時間位歩いた所に「見返り橋」という丸木橋の架かった小川があり、その橋を渡った者は二度と村へ戻れないという言い伝えがあった。シャロットは振り返り家族と村の思い出に最後の別れを告げ、橋へ足を乗せた。

川を渡り昼夜も解らない暗い森を何日歩いたことだろうか。空腹で意識が朦朧とし、よろめき倒れそうになりながら前を見ると、果樹園が見え、赤いリンゴの木の向こうに城か修道院のような、石造りの建築物が見えた。噴水の奥に石段があり、そこを登った所に大きな木の扉があった。

シャロットの「心の扉」を叩き続けていた音は早鐘のように鳴り、その扉を開けると突然、夜空に太陽が現れたごとく眩しく輝き粉々に散った。その欠片の一つが額に突き刺さり、額から心臓そして全身を貫いた。「ああ~ これが村の長老の言ってた伝説の”新生born again”だな」とつぶやいた。

回廊を進めば白馬の王子が待っているはずである。・・ところが目の前に立っていたのは老婆であった。
「やあ! よく来たねえ、待っていたよ。私はもう歳で機織りを続けることができないんだ。今度はお前が織る番だよ。川を下ると海のように広い河口があり、そこにはキャメロットというお城があってねえ、そこの王子のために織っているんだよ、続きを織っておくれ。このタピストリーを織れるのはお前しかいないんだよ。」

城の外へ出ることは許されず、心の鏡に映る風景を来る日も来る日も織り続けた。

※3.シャロットの女・詩人の魂-1へ続く