かつて1960年代に人気のあったダイバーズウォッチの1種、スキンダイバーウォッチの人気が再燃しつつあります。日本ではあまり馴染みのないスキンダイバーウォッチですが、シンプルさに由来する軽快な装着感とスタイリッシュなデザインが評価され、往年のメーカーによる復刻版をはじめ、マイクロブランドがこぞってデザインモチーフに採用した製品が発売されています。

スキンダイバーウォッチとは、スキンダイビング、つまりシュノーケリングによる素潜りに代表されるマリンスポーツの用途に必要十分な防水性能を持つ、ダイバーズウォッチのなかでも、そのライトデューティー版を総称したサブカテゴリです。

第2次世界大戦中の1943年に発明されたスキューバダイビングは戦後に普及し、それに応えるように1953年にはブランパン、ロレックス、ゾディアックから回転ベゼルを備えたダイバーズウオッチが登場しました。但しプロの潜水作業や軍用、アクアラングでのダイビングを想定したヘビーデューティー向けの防水性能を備える本格的なダイバーズウォッチは機構も複雑化し、週末のマリンスポーツには明らかにオーバースペックで何よりも高価。より潜在需要の多い軽便なレクリエーション向けの防水性を持つ時計が求められました。

そこでゴムパッキンつきのスクリューバックと竜頭にガスケットを施し、必要な防水性能を備えた回転ベゼルつきのケースに、普及グレードの堅牢な自動巻ムーブメントを収容したスキンダイバーウォッチが比較的手頃な価格帯で提供され、ダイビングだけでなく折からのサーフィンブームも追い風となって60年代に人気を博し、数多くのメーカーから同様の製品が供給されました。

 

典型的な60年代スキンダイバーの特徴

- 普及グレードの自動巻ムーブメント
- ケースサイズ 36.7mm径
- H字型の接線デザインのケースミドル
- ラグ幅は19mm。ラグ内側の形状はストレート。
- ブラックミラーダイヤル。白いプリントと夜光のインデックス
- テンションリングで補強されたアクリル風防
- スクリューロックの無い、パッキンで防水された竜頭
- リテーナースプリング勘合の両回転ベゼル (クリックなし)

- 日付表示とセンターセカンド3針

 

当初はスイス製を中心にスキンダイバーが市場に供給されますが、上記の共通する特徴を備えた現在のスキンダイバーのイメージを形成したのはSqualeだと考えています。

もともとケースメーカーであったSqualeのように防水ケースをはじめシステムごと他ブランドに供給したり、エボーシュメーカーからムーブメントやケースやダイヤル、針などが供給されたようで、時計メーカーや宝飾店ブランドは、こうした時計パーツメーカーから好きな部品を組み合わせ、自社ロゴをダイヤルにプリントするだけで自社製品化できました。米国の大手小売チェーンSearsのプライベートブランド、Traditionなどもその例であり、アンティークウォッチ市場を探すと無数のメーカーと無数のモデルが存在するけどもケースや部品には共通性が認められるのもそのためです。