『PURE ピュア』映画鑑賞 | うさぎくんのお薦め映画ブログ

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『PURE ピュア』映画鑑賞。日本未公開。イギリス映画。主人公のポールは小学生。幼い弟と母と3人で暮らしている。母親はヘロイン中毒である。ポールは健気に母親の面倒を見ており、母親のために朝食の用意をするだけでなく、ヘロインをすぐに静脈注射できるように、粉末をスプーンで液体化したものを注射器に入れてあげるほどだ。もちろん、ヘロインとは知らず病気のの母に必要な薬と思ってのことである。近所には同じようなヘロイン中毒者や娼婦やその子供達がおり、そんな環境で懸命に生きる主人公。母親は主人公に母親らしいことは一切しないが、主人公は母親を愛している。そして主人公は近くの年上の美しい女性ルイーズに憧れている。

「偽成熟」という概念がある。虐待を受けた子供によく見られる現象だが、一見、子供がしっかりとした言動を見せることがある。大人の思いや要求を常に先取りして行動したり、大人の顔色をうかがいながら自分の行動を決定するといったことを特徴とし、親子関係は役割逆転を特徴としやすく(つまり、例えば子供が親の食事の準備や家事一切をすべてするなど)、そうした関係は、子どもに対して大人の欲求や感情に対する敏感さを要求する。その結果として子どもは「小さな大人(偽成熟)」として成長し、自分の「子どもらしさ」を犠牲にしてしまう。子どもが本来持っているはずの健康的な依存性や創造性は、小さな大人の状態とは相容れないため、抑圧される。こうした子ども本来の特性の抑圧が、後々様々な問題を生じさせることがある。いわゆる「小さな大人」的な存在になる子どもがいる。これが「偽成熟」と呼ばれる状態で、親の望む「良い子」になろうとして、大人の要求を常に敏感に捉えて行動する結果である。

その後、母親はヘロインをやめようと決意するのだが・・・。そして中盤以降、ルイーズの抱えている問題も関わり、主人公の人生は少しずつこれまでと変わり始める。薬物依存や母子の引き離しといったことがテーマなため、ハッピーな映画とは言えないが、全体のトーンは決して暗くない。健気な主人公の思いが切ないほど身に沁みる秀逸な映画である。